ホンダの「月極定額サービス」 リースやカーシェアと何が違う?

昨今、スマホ向けを中心とした音楽配信サービスをはじめ、浸透してきたのがサブスクリプション(定額制)サービス。これをクルマに、さらに中古車で活用しようという新しい試みをホンダがスタートしました。一体どのようなメリットがあるのか調べてみました。


全く新しいクルマの使い方を模索

ホンダが2020年1月28日からスタートした新サービスは「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリー オーナー)」というものです。

これまでクルマを使うという行為に対しては大きく3つの選択肢がありました。

1) 現金、またはローン等を組みクルマを「購入する」

2) 必要な時だけレンタカー、また徐々に人気が上がってきたカーシェアリングを使い短期間のみ「借りる」

3) 基本は法人向けが中心となりますが、年単位で契約する「リース」

それぞれにメリット、デメリットがありますが、昨今のクルマ離れや使い方によっては家計の負担増になるケースも見受けられました。

ホンダとしてはもっと手軽にクルマに乗ることができるサービスを模索しており、それが今回のサービスの誕生に繋がりました。

1ヶ月単位からの利用が可能

現在の対象拠点は埼玉県にある「U-Select城北(埼玉県和光市下新倉5-27-1)」のみ

実はクルマのサブスクリプションサービス自体はここ数年ビジネスとして展開済みで、昨今ではトヨタが「KINTO」、また中古車の買い取りと販売のガリバーを展開するIDOMが行う「NOREL(ノレル)」もBMWやMINIのサブスクリプションサービスを行っています。

基本的には個人向けの「マイカーリース」を改良したものと考えることができますが、実際の中身はリースよりもっと手軽に使える点が魅力です。ホンダの新サービスは契約できる車両は「中古車」に限定、最短1ヶ月から最長11ヶ月まで利用できる点、車両所有時に月々かかる保険料や税金、さらにメンテナンス代などの負担はなく、必要なのは基本ガソリン代と駐車場代のみ、またクルマに限らずこの手のサービスでネックとなる「途中解約」に関しても解約金は発生しません。

なぜ、中古車なのか

理由としてはいくつか考えられますが、一番としては新車では月額利用料金が高くなってしまうからです。他社との比較は細かいサービスの違いもあるので一概にはできませんが、このサービスで最も月額料金が高いのはミニバンの「フリードハイブリッド」とSUVの「ヴェゼルハイブリッド」、そして追加設定されたS660、この3車種は月額で5万9,800円となります。

ホンダがサービス開始時に発表した価格。現在はS660も追加されています

中古車でこの価格ですから、同等のサービスを新車に行えば当然利用料金は高くなります。また基本的なことですが、新車と中古車は常に表裏一体、新車が売れないと中古車は発生しないわけですから、それぞれが適正な台数が売れないと市場自体がスムーズに回りません。ホンダとしてもこれらのバランスを取り中古車市場を活性化させる手立てのひとつとしてサービスを開発したと筆者は考えています。

またリースの場合は新車での契約が基本で利用期間は年単位です。さらに保険料などは自己負担ですから一度契約したら簡単に解約や返却はできません。

最も価格が安いのが旧型のN-BOXで月額2万9,800円から利用することができます

ゆえにこれらの問題をクリアにするためにもこのサービスは中古車にスポットライトを当てたわけですが、この他にも契約時に必要な契約書記入や審査自体などの手続きがスムーズな点もポイントです。理由は支払い(決済)自体をクレジットカード(のみ)で行うので、そもそもその段階で個人の信用情報がクリアになっているからです。さらに一度会員登録すればその後のクルマの乗り換え等はWEBなどで行える手軽さも大きな魅力と言えるでしょう。

どんな人に向いているのか

今回のサービスは手軽に手間がかからずクルマに乗ることができる点です。ただ、どんな人にもマッチするかというと完璧とは言えません。逆に最短1ヶ月単位という仕組みをうまく使える環境にある人にはオススメできるわけです。

例えば、自宅で介護などを行っている場合、病院までの送迎などをスライドドアで乗り降りがしやすいクルマで「一定期間のみ使いたい」場合などにもこのサービスは適しています。

現行型N-BOXの福祉車両もラインナップ。短期間の介護などの使用時は魅力的です

その辺もホンダは考えていたと思います。なぜなら今回の車両の中にN-BOXの車いす仕様車(福祉車両)を設定していることからも読み取れます。

また今後クルマを購入するのに際し、自分がどのくらいのサイズが運転しやすいのか、車庫入れのしやすさはどのクラスまでできるのか?を事前に体験する際にも短期利用のメリットはあります。また新生活や引っ越しをする際にも、そのたびにレンタカーを借りるよりは生活が落ち着くまでの期間だけクルマを積極的に使える環境にマッチします。

予約画面を見た時点で3台だった在庫がその後2台に。注目を集めていることがわかります

逆にデメリットはまだクルマのバリエーションが不足している点、対象拠点が日本にまだ一店舗しかないことです。実際、スタート時は25台だった車両も現在は45台まで拡大しましたが、現在借りられる車両は2台という人気ぶりです。

この流れを受けてIDOMも中古車のサブスクリプションサービスを開始しました。つまり潜在的なニーズは十分あるわけで今後ホンダがどのくらいの規模でビジネスを展開していくかも注目と言えるでしょう。

© 株式会社マネーフォワード