音楽がヤバい!! A24が放つ“プレイリスト・ムービー”『WAVES/ウェイブス』監督にネバヤン巽がインタビュー!

©ジュピターエンタテインメント株式会社

巽啓伍(never young beach)

ネバヤン巽が聞く! 超豪華プレイリスト・ムービーはいかにして生まれたのか?

いま注目の製作スタジオA24が放つ、音楽好き必見の映画が『WAVES/ウェイブス』だ。フランク・オーシャンやケンドリック・ラマー、カニエ・ウェスト、そしてレディオヘッドやテーム・インパラ、アニマル・コレクティヴなどなど、錚々たるアーティストたちの楽曲そのものが物語を構成するという、まさに“プレイリスト・ムービー”という謳い文句に偽りなしの、2020年最初にして最大の音楽映画である。

『WAVES/ウェイブス』©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

そんな話題作を手掛けたトレイ・エドワード・シュルツ監督に、世代を問わず大きな支持を集める4人組バンド、never young beachの巽啓伍がインタビューを敢行。こんな時勢だけにスカイプでのインタビューとなったが、豪華な音楽はもちろん美しい映像や作品に込められたメッセージまで、非常に興味深い話を聞くことができた。

巽啓伍(never young beach)

「できるだけ登場人物に寄り添うような作品を常に目指しているんだ」

―フランク・オーシャンは日本でも若者を中心にとても人気があります。彼の存在が本作の重要なキーになっていると思いますが、監督にとってフランク・オーシャンはどんな存在ですか?

一番好きなアーティストでオールタイムベストの一人だね。初めて聴いたときからハマっていて、特に「Blonde」(2016年:2ndアルバム)は前作(『イット・カムズ・アット・ナイト』[2017年])の製作中にリリースされたから、聴きながら撮影したよ。今でもこのアルバムに熱中していて、ちょうど今日も、「Blonde」を分析するポッドキャストを聴いていたところさ。魂に響くし、これぞ芸術という作品だね。私の制作活動にインスピレーションを与えてくれるし、私の人生を変えた音楽だと思うから、『WAVES』で楽曲を使用できたことはすごく嬉しいね。

『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ監督 ©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

―本作は、使用する楽曲を決めてから脚本を書いていったそうですが、どういった基準で選曲されたのでしょうか? “物語と音楽”をリンクさせる上で、配慮したことはありますか?

脚本を書き始める前からプレイリストとして曲を集めていたんだけど、いざ脚本を書きはじめてから再びプレイリストに戻って、どの曲を選ぶか考えていったんだ。そのときの基準になったのが、歌詞であり、キャラクターにとってどんな意味を持つ曲になるか、そして全体のリズムや流れ、どんなシーンに合わせるか、そういったことを基準に選曲したよ。

『WAVES/ウェイブス』©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

僕自身、10代の頃は本当に音楽が生活にとって大切な要素だったし、本作のタイラーとエミリーのように音楽を聴くことで救われたことが多々ある。だから、なんとなく“彼らのプレイリスト”をイメージしながら、作品全体のストーリーに楽曲を当てはめていった感じだね。彼らが頭の中で考えていることに少しでも近づけるよう意識したんだ。

―人物と楽曲を、それぞれリンクさせているということでしょうか? 登場人物の感情の変化に合わせて、音楽や色、画角を変化させていますよね。このような手法を取り入れた理由を教えてください。

そうだね、表現主義(感情など目に見えないものを強調する)的な、できるだけ登場人物の感情に寄り添うような作品を常に目指しているんだ。だから、カメラワークやアスペクト比、そういった音楽の使い方をしている。なるべく没入型の、主人公2人の頭の中に入り込んでいくような作品を目指したよ。重要な鍵となっているのは、“共感”や“理解”といったコミュニケーションだね。観客にも、主人公たちが何を感じているのか、同じ体験をしてもらいたい。そういうところを目指したんだ。

『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ監督 ©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

「映画は世界共通のものだし、アジアの映画からも大きな影響を受けているよ」

―本作では特に光の扱い方がきれいで、そのせいか舞台になっているフロリダの街もすごく魅力的に見えました。監督が住んでいる、もしくは過去に住んでいた街の景色が、照明や撮影方法に影響していますか?

まちがいないね。僕はテキサスで生まれ育って、フロリダには6年前ぐらいに越してきたんだけど、今はフロリダの中央部に位置するオーランドに住んでいるよ。本作を撮影したのはフロリダ南部で、マイアミから30分ほど離れたところで、僕の恋人の実家があるところなんだ。本当にフロリダが大好きで、自然は多いし、街のあらゆる部分が魅力的だから、やっぱり影響は大きかったね。彼女から聞いた地元の話や、自分がフロリダをどう感じているか、それをそのまま映画に映し出した感じかな。エキストラもできるだけ現地の人たちに出てもらったし、例えばホテルで撮影するときは実際に従業員の人たちにも出演してもらったよ。できるだけリアルに見せることを心がけたね。フロリダでの撮影は最高だったし、本当に素晴らしい州だと思うよ。引っ越すことは考えていないね(笑)。

『WAVES/ウェイブス』©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

―本作は、そんな素晴らしいところに住んでいる家族が軸になっています。監督の前2作では「家族の破綻や崩壊」を描いていましたが、本作では逆に「断ち切れない絆や愛情の再生」を描いていますよね。結果的に前2作とは映画のジャンルも変わりましたが、本作で観客に伝えたかったメッセージは何でしょうか?

まず、今の自分としての立ち位置があるね。前作『イット・カムズ・アット・ナイト』の撮影は楽しかったんだけど、公開後に色々と苦しい時期があって、落ちこんだりもしたんだ。そんなタイミングで本作の脚本を書きはじめたから、より希望を求めたというか、明るい光を求めていたんだよね。そういう意味で、その当時の自分が感じていたものが『WAVES』に反映されているんだと思う。

前2作は悲劇的な終わりかたをするけれど、それとは違う、次のステップがある、希望があると感じられるエンディングにしたかったんだ。だから、それが本作のメッセージと言えるかな。

『WAVES/ウェイブス』©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

―『WAVES』は2部構成になっていますが、ウォン・カーウァイ作品がリファレンスの一つになったと聞きしました。アジア映画は欧米の映画と、どういったところが異なって、どんなところが魅力だと思いますか? また、監督ご自身にどういった影響を与えましたか?

国は違えど、映画というものは本当にユニバーサルなもの、世界共通のものだと思っているよ。感情的にも共感できる部分があるし、ただ字幕が出ているっていうだけで、アジア/西洋に関係なく、共通のテーマを扱っているものが多いから、特に差異を感じるわけではないかな。アジアでも素晴らしい作品がたくさん生まれているし、多くの影響を受けているよ。

巽啓伍(never young beach)

インタビュー:巽啓伍(never young beach)

『WAVES/ウェイブス』は近日公開。