【teams】草野球が繋ぐ親子の絆 元名門・社会人野球選手と息子と目指す夢

日立KGクラブの監督、選手として草野球をプレーする吉田弘さん(左)と大樹さん【写真提供:teams】

茨城県で活動する草野球チーム「日立KGクラブ」の吉田監督は日立製作所でプレー

 プレー人口が増えている草野球。町の野球場では毎週末野球をプレーする大人たちを見ることができる。たかが草野球、されど草野球。そんな選手たちを応援するためにマネジメントツール「teams」とFull-Countは、草野球に情熱を捧げる大人たちに注目し、野球への思い、チーム結成の裏側などを取り上げていく。今回は茨城県「日立KGクラブ」の監督と選手。親子で全国大会に出場という夢を叶えたチームに迫ります。

 2014年の夏、吉田弘さんは息子の高校野球最後の試合を見届けた。

 その夜、家に帰ってきた息子から「草野球チームの監督をやってくれないか?」と頼まれた。息子の最後の野球姿を見届けたつもりだった弘さんは驚きながらも、意気に感じたという。

 父の弘さんは日立製作所の野球部として都市対抗野球にも出場した実力者。大学時代は神奈川大学の中心選手として活躍し、プロ野球団からドラフト外選手としての誘いもあった。「プロに進まなかったのは覚悟がなかったから」と本人は言うが、強豪・日立製作所でプレーし、引退後も草野球を続け、野球への情熱は冷めていない。

 息子の大樹さんも父親の影響から野球をはじめ、茨城県の科学技術学園日立に進学し、野球部に所属。甲子園を目指してプレーしていた。科学技術学園日立の規則上、卒業後は日立製作所への就職が義務付けられているため、進学し、野球を続けることはできない。

 2014年に最後の夏を迎えた大樹さんはチームメートと話をし、皆で草野球チームとして野球を続けていくことを決断し、父にチームの監督を打診したのだ。こうして「日立KGクラブ」が誕生した。

 なぜ監督が父なのか――。草野球チームは監督がいないチームもあれば、選手が監督の役割を担うケースも少なくはない。もっとも息子と父が同じチームで野球をすることに恥ずかしさがあってもおかしくはない。それでも父にお願いしたのは、チームメートと父の関係性にあった。

 高校時代によく全体練習が終わるとチームメートと実家で練習をしていた。その時コーチとして教えてくれていたのが弘さんなのだ。メンバーからの信頼も厚く、草野球をしていてももっとうまくなりたいと思う志から、父が監督になるのがいいと考えた。

 弘さんもこの打診を快く承諾。息子と一緒に野球をするというひそかに心に秘めていた夢が叶った。

 チームの約束事は一つ。周囲から見られてかっこいいチームになろう。これが全員の共通認識だ。その象徴が試合前のアップにある。通常、草野球チームの多くはアップを各自で行うことが多く、おろそかになることもしばしばだが、日立KGクラブは違う。アップが始まるとチーム全員で大きな声を出し、試合に臨む。周囲から見ても圧巻で、他チームからこのアップを見て声をかけられるなど、注目を集めることもあるという。練習もグラウンドが確保できた時には短い時間だがみっちりと行う。特に守備練習に多くの時間を割き、ノックと試合形式を中心に組み立てる。

 練習終わりにもグラウンド整備や挨拶は欠かさない。とにかく周りから常に見られている意識を持って練習や試合に取り組んでいる。その成果もあり、第63回高松宮賜杯では茨城県大会で優勝し、全国大会ベスト8に進出を果たした。

 息子と一緒に全国大会に出場した弘さんはとてもうれしそうにこの話をしてくれた。そんな弘さんに次の目標を伺うと「全国大会に連続で出場すること」と答えてくれた。弘さんは「草野球は人の入れ替わりが非常に多い。助っ人を呼ぶことなども他チームはあると聞くが、それでは本当のチームの実力とは言い切れない。常にチームとして活動してくれる選手を大切にし、連続で全国大会に出場できる強いチームを目指したい」

 今年51歳になる監督が平均年齢24歳の選手達とコミュニケーションをとることは難しいこともあるという。だが勝ちたい気持ちは皆同じ。チームの輪を大切に、息子と共に今年も全国大会出場を狙う。(Full-Count編集部)

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