全国初、国公立に警察官入学 長崎県立大大学院で情報セキュリティー学ぶ サイバー犯罪対策課・中本雄一さん「高度組織づくりを」

「社会に還元できる研究を深めていきたい」と語る中本雄一警部補=県警本部

 専門的に情報セキュリティーを学び、サイバー犯罪の捜査力を向上させようと、県警は今年4月、県立大大学院(シーボルト校)の「情報工学専攻情報セキュリティコース」に警察官1人を派遣した。サイバー分野で国公立大学院に警察官が入学するのは、全国初のケース。県警は「最先端の情報と技術を持つ学術機関で警察官を学ばせ、さらに高度なサイバー犯罪捜査に対処できる組織づくりをしたい」としている。
 派遣されたのはサイバー犯罪対策課の中本雄一警部補(36)。東大中退後、県内でコンピューター関連企業での勤務などを経て、2014年に拝命。以後、サイバー事件捜査一筋で歩んできた。情報処理推進機構(IPA)の「情報処理技術者試験テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)」の資格を持つ。2月に社会人枠で試験を受験し、合格。4月以降は月1回県警本部で講習を実施し、県警との情報共有を図る。
 派遣期間は2年で、22年3月に修士課程を修了予定。全国では埼玉、神奈川両県警が私立大学院に警察官を派遣して情報セキュリティーを研究させているが、国公立大学院への派遣は全国初めてとなる。
 同課によると、県内で昨年1年間に県警が摘発した不正アクセス禁止法違反などのサイバー犯罪は109件(前年同期比14件増)。全体の刑法犯認知件数が減少傾向にある中、サイバー犯罪は10年の40件から10年間で2倍以上に増加している。
 中本警部補は「企業側のセキュリティーと利用者のリテラシーをいかに高めるかについて学び、犯罪被害抑止や捜査力向上など、社会に還元できる研究を深めていきたい」。県立大の加藤雅彦学長補佐(情報セキュリティ学科教授)は「サイバー犯罪は技術的に高度化しており、2年間専門的な研究をしてスキルアップを図ることが、ひいては県民の安全安心につながる。セキュリティーについて幅広く学んで広い視野を持ち、警察の仕事に役立つ研究をしてほしい」と期待を寄せる。

 


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