株歴30年の元証券ディーラーが語る、今から株を始める人がするべきこと

元証券ディーラーのたけぞうさんは、個人投資家向けのセミナーなどに登壇し、ディーラー時代の経験や株の魅力などを伝えています。30年を超える株歴の中で実感している株の魅力と、これから株を始める人へのアドバイスを聞きました。


個人になっても株漬けの毎日

――たけぞうさんは2018年に証券会社をやめて個人投資家になりました。日々の暮らしも大きく変わったのではないですか。

実はそうでもありません。平日は朝4時に起き、メルマガを書きます。新聞の注目記事等をピックアップし、自分なりの見解などを書くメルマガです。そのうちにNY市場が閉まりますので、終値などをみてNY関連の記事をもう1つ書きます。証券会社のディーラーだったときと比べると、起床時間は1時間早くなりましたが、新聞を読んだりNYの終値を見たりするのは同じです。

9時からは場が開きますので良さそうな銘柄があればトレードします。ザラ場中に出かけることもありますが、外出先でもスマホで相場が見られますので、15時まで相場を見ているのも会社員だった時と同じです。場が閉まった後は適時開示情報などを見て、業種別で上がったところ、下がったところなどを確認します。これも以前と同じですね。個人になっても平日は株漬けです。30年くらい続けている生活パターンですので簡単には変わらないですね(笑)。

――証券ディーラーから個人になり、株の難しさを感じるポイントなどは変わりましたか。

そこもあまり変わらず、常に損切りが難しく感じます。証券ディーラーだったころは損額によってロスカットしなければならないところが決まっていました。ディーラーは塩漬けにできないので、切らざるを得ない価格に達したら決済するルールになっているのです。ディーラーになりたてのころはロスカットまで引っ張ってしまうことが多く、よく部長に叱られました(苦笑)。上がるだろうと信じ込んでいるから、下がっていてもなかなか売れないのです。個人になってからも上がると信じてしまい、切り遅れることはあります。「この銘柄は上がる」「この価格なら勝てる」といった信じ込みや思い込みとどう向き合うかが一番難しいところです。

――個人になってからはセミナーなどを通じて個人投資家と接する機会が増えています。どのような印象を受けましたか。

勉強している人が多いと感じています。個別銘柄やファンダメンタルズなどについても私より詳しい人がざらにいて、教えてもらうことも多いですね。一方で、今のような暴落が起きると、リーマンショックの時はどうだったか、ITバブルはどうだったかといった質問を受ける機会が増えます。そこは私の経験で答えられる部分だと思うので、自分が知っていることや感じたことを伝えるようにしています。メルマガもそうですし、セミナーでの講演なども、もしかしたら私の経験値で話せることが役に立つかもしれないと考え、なるべく引き受けるようにしています。

全体と個別を見る2つの視点が大事

――たけぞうさんのメルマガ読者やセミナー参加者にはこれから投資を始めようと思っている人も多いと思います。ビギナーはどんな銘柄を買うと良いと思いますか。

自分が好きなことや興味ある分野の銘柄から選ぶのが良いと思います。例えば、女性なら化粧品に興味があるかもしれません。料理好きな人やスポーツ好きの人もいます。最近は情報が溢れているため、ツイッターで見かけたバイオ銘柄に飛びつく人もいるのですが、自分がわかっている業種かどうかは大事なポイントだと思います。

――買うタイミングについてはどう考えていますか。

まず押さえておきたいのは、株に絶対はなく、100%儲かることもないということです。ですから、自分の中で勝てると思う確率が70%くらいあるなら、買ってみたら良いと思います。70%勝てると思う自信を持つためにも、自分の趣味や興味のある分野の方が良いですよね。

――相場の方向性を見るためにはどんな情報を見ると良いと思いますか。

私は日々の情報源として、日経、日刊工業、日経産業、株式新聞などを読んでいます。ただ、これは証券会社に勤めていた時に読めと言われたから読んでいるところもありますね(笑)。

それ以外の情報としては、日本株はNY市場の影響を受けますので、米国市場の株価は見た方が良いと思います。あとは、米国債、原油価格、為替などでしょうか。自分が興味ある分野で個別銘柄を見つつ、世界の動きも見るという2つの視点があると良いと思います。

株仲間が増えていくのが楽しい

――たけぞうさんは証券会社時代から含めて30年以上株と携わっています。面白いと感じるポイントはどこですか。

株の難しさの裏返しになりますが、正解がないところに面白さを感じています。値動きにはパターンがありますが、上がる、下がるという絶対的な答えはありません。しかし、勉強していくと答えに徐々に近づいていく実感があります。それがあるからずっと株をやっているのだと思います。

もう1つ魅力を感じるのは株を通じて人とのつながりが広がっていくことですね。私の場合、ディーラー時代からずっと付き合っている友人がいますし、今もSNSやセミナーなどを通じて株好きの仲間が増えています。そういう人たちと株の話をするのが楽しいんです。

――人のつながりが広がると、その分だけ自分の世界も広がっていきそうですね。

そう思います。トレードしている時は基本的には1人の世界に入り込んでいますが、株そのものの楽しさを共有できる人は世の中にたくさんいます。私自身の過去を振り返っても、ディーラーだった時は大きなお金を動かすプレッシャーを感じていましたし、ライバル会社のディーラーとばちばちもありました。負けて落ち込んだり、メンタルが弱ったりした時もあります。しかし、そういう状態からどうやって復活してきたかというと、ライバルである彼らと話したり、飲んだりする機会があったからなのです。そういう意味で、刺激と癒しをもらえる株仲間が増えていくのは良いことですよね。

――より多くの人が株に興味を持ってくれると良いですね。

そうですね。株はリスク商品ですが、魅力があります。私はずっと株の世界で生きているので、その魅力を多くの人に知ってほしいと思っています。株は勝ち負けも大事なのですが、経済ニュースを見ることなどによって知識が増えたり見識が広がることにもつながります。私が30年以上にわたって飽きずに株を続けているのも、トレードが楽しいだけでなく、株仲間でいろいろと話すことを楽しく感じているからなのだと思います。

たけぞう
1988年、中堅証券会社に入社、4年間の“場立ち"を経て、20年間以上、証券ディーラーとして活躍。多いときには約10億円の資金運用を託され、重圧と戦いながら約50億円の収益を上げる。2018年まで約30年間勤務したのち、独立して個人投資家に。著書に「50億稼いだおっさんが教える 月5万稼ぐ株投資」(ぱる出版)がある。2020年3月26日オープンの「みんなの投資サロン by MONEY PLUS」にレギュラー投資家として参加。個人投資家に向けて日々の情報発信を続けている。

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<写真・木村哲夫>

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