『WAVES/ウェイブス』 2020年にぴったりの最新音楽映画

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 アカデミー賞を席巻した映画『ムーンライト』や、若手ホラー作家アリ・アスター監督のデビュー作『ヘレディタリー/継承』などハイセンスな作品を世に送り出し、今もっとも注目されている新進気鋭の制作会社A24が手がける最新作。主人公は、日本男児のように厳格でマッチョ思考な父親に育てられた兄と妹。成績優秀、レスリング部でもエリート選手として期待を背負い、美しい恋人もいる兄のタイラー。厳しいながらも仲の良い妹・エミリーとともに裕福な家庭に育った彼の人生は、一つの歯車が狂ったことをきっかけにどん底へと落ちていきます。このタイラーの物語がカセットテープのA面とすれば、後半のB面は1年後のエミリーの姿。兄の転落に心痛める彼女がどのように自分の傷を癒していくのかを描きます。

 このストーリーだけなら、ティピカルな青春ドラマに聞こえるかもしれません。でも現代を生きる若者の気持ちや言葉をそのまま表現した巧みな脚本、<映像の魔術師>と呼ばれるテレンス・マリックの元で映像を学んだというキャリアを持つ弱冠31歳のトレイ・エドワード・シュルツ監督が撮る「うわあ、かっこいい」と思わず声が出るクールな映像の数々はさすがの一言です。

 物語を紡いでいく31曲、そしてオリジナル音楽を手がけるのはマリリン・マンソンの生みの親と知られるナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー。何もかもがスタイリッシュな本作はまさに2020年にぴったりのおニューな音楽映画です。★★★★☆(森田真帆)

監督:トレイ・エドワード・シュルツ

出演:ケルビン・ハリソン・ジュニア、テイラー・ラッセル

近日公開予定

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