イジー・ストラドリン、ガンズ・アンド・ローゼズの曲作りの中心にいた男 1987年 8月21日 ガンズ・アンド・ローゼズのデビューアルバム「アペタイト・フォー・ディストラクション」がリリースされた日

ガンズの元ギタリスト、イジー・ストラドリンの生き方とは?

イジー・ストラドリンの生き方が好きだ。巨大な成功やそれらを構築するシステムを嫌い、キャリアの早い時期に名声を手放し、身の丈に合った人生を楽しむ姿からは、アウトローの自由さと、心の安らぎを得た者だけが持つ余裕が伝わってくる。

おそらく、イジーは自分が何者なのかを理解しているのだろう。だから、歳を重ねるほどに、イジーが奏でる音楽は大らかになっていく。ルーツに根差したシンプルなロックンロールを、リラックスしたギターとヴォーカルで聴かせてくれるのだ。

曲作りにおける中心的存在、ソングライターとしての稀有な才能

ガンズ・アンド・ローゼズが、ハードロックバンドという枠組みを超えて、今も多くのリスナーに愛されているのは、イジーのソングライターとしての稀有な才能によるところも大きい。

当時のバンドは各メンバーがアイディアを出し合って曲を仕上げていたので、イジーだけの貢献だったと言うつもりはないが、デビューアルバムにして名作『アペタイト・フォー・ディストラクション』に収録された全12曲のうち10曲のソングライティングにイジーが深く関わっていたのは、多くのファンの間で認識されていることだ。

『GN'Rライズ』に収められたフォーキーな楽曲はイジーの世界観が色濃く表れたものだし、『ユーズ・ユア・イリュージョン Ⅰ』と『ユーズ・ユア・イリュージョン Ⅱ』にも多くの曲を提供している(その中にはデビュー前から演奏されていた曲も含まれていた)。「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」、「ペイシェンス」、「ユー・クッド・ビー・マイン」などの例を挙げるまでもなく、イジーがカンズの代表曲の多くで中心的な役割を果たしたのは、間違いのない事実だ。

だから、イジーの脱退後、バンドがカヴァーアルバム『ザ・スパゲッティ・インシデント?』をリリースした後に空中分解したのは、様々な事情があったにせよ象徴的な出来事だった。元ドラマーのマット・ソーラムは、かつてのインタビューでイジーの存在の大きさについて語っている。マットはガンズの曲がメンバー間の共同作業であったとしつつも、その中心はイジーだとし、彼を失ったことで「曲作りにおけるお互いの絆みたいなものも失われてしまった」と話している。

5人組のロックンロールバンドにこだわってガンズを脱退

そんなイジー・ストラドリンも、ガンズ時代は絵に描いたようなロックンロールライフを送っていた。バンド周辺のドラッグディーラー的な役割も果たしていたみたいだし、破天荒なエピソードは枚挙に暇ない。それでもバンドが巨大な成功をコントロールできなくなった時、違和感を拭えなかったという。「個人的には5人組のただのロックンロールバンドの方が好きなんだ」という言葉に、イジーの人柄が滲む。

1991年11月28日、イジー・ストラドリンはカンズ・アンド・ローゼズを正式に脱退。ワールドツアーのセカンドレグがスタートする直前のことだった。そして、この後のツアーはホーンセクションを伴った、これまでになく大規模なものとなっていく。イジーはバンドを去る際、朋友のアクセル・ローズに「ソングライティングや演奏で困ることがあったら、いつでも声をかけてくれ」と言い残したという。

イジーが教えてくれた、過去に捕らわれず生きることの大切さ

脱退してからも、イジーはカンズのメンバーとは一定の距離を置きながらも交流を続けている。それでも、彼がガンズ・アンド・ローゼズの再結成に参加することはない。きっと今の自分の人生を愛しているのだろう。そのあたりの佇まいが、実にイジー・ストラドリンなのだ。あんなモンスターバンドの元メンバーであっても、静かな人生を送れることを証明してみせた。

イジーが奏でるリラックスしたギターとヴォーカルが僕らに語りかけてくるのは、過去に捕らわれないことの大切さなのかもしれない。

カタリベ: 宮井章裕

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