マスク2枚では足りない春に。アーティストがつくるマスクを紹介

新型コロナウイルス感染症の影響で、世界各地で慢性的な品薄状態が続いているマスク。そんななか、国内外のアーティストがオリジナルマスクの制作に取り組んでいる。生活生活の中での感染対策として、ときに政権批判として、3Dプリンターや布を使用したマスクを手がけるアーティストたちを紹介する。

「途中でやめる」のInstagramより

◎「途中でやめる」
山下陽光によるリメイクブランド「途中でやめる」は、4月1日に政府が発表した「布製マスクを一住所あたり2枚ずつ配布する」という施策を受け、布製のマスク制作をスタート。Instagramではモデルが中指を立てた着用写真がアップされている。

これらのマスクは「途中でやめる」の商品をネットショップで購入した際のおまけとして無料で同封されるという。ネットショップ内では、「マスクを2枚配ります?、ふざけるなよ、冗談じゃないですよ。何の?どんなマスクなんすか?だったらこっちで作ります」として、マスク制作に至った経緯のひとつでもある政府の施策への批判が示されている。

マスクがそれぞれ全部違う! pic.twitter.com/xSVNhpoOrJ

— 山下陽光 (@ccttaa) April 2, 2020

◎バグース・パンデガ
ジャカルタを拠点とするアーティストのバグース・パンデガは、高校時代の同級生で医師である友人が新型コロナウイルス感染症で亡くなったことをきっかけに、医療用フェイスシールドを制作開始。オープンソースの3Dデータを用いたフェイスシールドは、3Dプリンターで制作されたもの。

パンデガのパートナーであるアーティストの今津景は、自身のInstagramで「プリントを協力して下さる方、情報をシェアして下さる方、材料費をサポートして下さる方なども現れてチームのように一丸となって動き始めました」と明かしている。

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◎yang02(ヤンツー)
いっぽう、日本でもメディア・アーティストのyang02(ヤンツー)が3Dプリンターでマクスを制作。中に仕込むガーゼ、隙間防止などのコツもツイートで明かしている。

このマスクの設計データを提供する株式会社イグアスは、新型コロナウイルスの感染拡大による深刻なマスク不足を受け、自社で販売する3Dプリンターを活用し、繰り返し利用可能な独自の3Dマスクを開発。3月下旬よりフィードバックの反映を重ね、マスクの設計データ(STLデータ)を無償で公開、3Dマスクの普及を働きかけている。データや制作方法はウェブサイトで見ることができる。

ちょうどマスク2枚できたところhttps://t.co/dErvNlk39Ppic.twitter.com/TLjuFLi3st

— やんツー(yang02) (@yn02) April 1, 2020

◎弓指寛治
2019年、「あいちトリエンナーレ2019」「TOKYO 2021」など、話題となった様々な展覧会に参加した画家の弓指寛治もマスクを制作している。弓指は4月7日、「2日くらい前からマスク作りにハマっとる。いま6号を制作中」とTwitterに投稿。

5枚のうち1枚には、コロナウイルスを思わせる花弁状の突起が描かれているという印象的なマスクだ。

2日くらい前からマスク作りにハマっとる。いま6号を制作中 pic.twitter.com/mcJ5ys4Nx5

— 弓指寛治 (@KanjiYumisashi) April 7, 2020

◎SOMARTA(ソマルタ)
2017年、コンピュータプログラミングを用いた無縫製ニットのスキンシリーズがニューヨーク近代美術館に収蔵された、廣川玉枝率いるファッションブランド「SOMARTA(ソマルタ)」。この「SOMARTA」からも、再利用可能な布製マスクが登場。顔の形にあわせ、上下どちらでも着用可能という仕様だ。

SOMARTA "SKIN" MASK

お洗濯で再使用可能です。
デザインも顔の形状に合わせ、上下どちらでも着用可能です。#somarta#skin#mask#ソマルタ#マスク#スキンシリーズpic.twitter.com/WzaFy1tD3j

— SOMARTA (@SOMARTA_JP) April 6, 2020

◎川崎市岡本太郎美術館
また番外編として、美術館の取り組みを紹介。川崎市岡本太郎美術館はキッチンペーパーでの簡易マスク制作方法を公開中。「マスクをお持ちでない方は美術館入口で制作できます」として、マスク着用を積極的に呼びかけている。

【3分制作!】
手作りキッチンペーパー簡易マスクの作り方を大公開!
作り方はとっても簡単✨
マスクをお持ちでない方は美術館入口で制作できます。
咳エチケットの補助としてマスク装着のご協力をお願いします😷#岡本太郎美術館pic.twitter.com/XCe3ERN5qU

— 川崎市岡本太郎美術館 (@taromuseum) April 5, 2020

新型コロナウイルスによって広まった「アーティストがマスクを制作する」というムーブメント。2020年の春を象徴する出来事のひとつとして、ここに記録する。

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