『新型コロナ完全対策済みドラマ』 特にテレ東さん、お願い!

テレビ東京が入っている社屋

▼テレビ東京の小孫茂社長が、3月下旬の定例会見で言った。「ずーっとコロナの番組を見てるわけにもいかない。疲れてしまう。ホッとしたい時にテレ東で、これぞテレ東という番組がやっていると、チャンネルを変えずにとどまってくれる傾向が出てきている。これがテレビ東京の役割ではないかと思っている」

▼そうこなくちゃテレ東さん!と膝を打つ。日曜夜、筆者のこの上ない癒やし『モヤモヤさまぁ~ず2』も勿論ストップしてしまったが、テレ東さんなら『新型コロナ完全対策済みドラマ』を、作ってくれるんじゃなかろうか。お願いベースで謹書します。

▼『家がカンブリア宮殿』『おっさんず宅』『在宅ラブストーリー』・・・何でもいいのですけど、脚本を俳優さんたちにメールしていただきまして、キャストの皆さん自宅にて単独で演じて自撮り。その動画を集めて編集、放送していただけませんか。台本のト書きに<雑然としたオフィスでひそひそ話をするカンジとルカ>とあれば、男優、女優それぞれの自宅で、できる範囲で家具などを自身のイメージでオフィスらしく配置。同じオフィスに居る設定なのだが、2人が全然異なる背景で演じているカットが切り替わる、左右2画面で並ぶ。「おい、ルカの方だけ自前照明、やったら明るいな」「このアングルで撮るか? 撮られたいんだな」「もう目しか映ってない。漫画か!」となろうが、2人の演技トーンが全然噛み合わなくてもOK。それが楽しい。

▼スター俳優は無理でも、小劇場で活躍し、テレビドラマや映画を脇で支えている「アナタ、引き出ししかないな」ぐらいの技術や魅力ある役者さんたちが出てくれたなら。最近では玉田企画の舞台『今が、オールタイムベスト』に出ていた神谷圭介さん(コントユニット『テニスコート』)が、素晴らしかった。ウェディングプランナーながら、好きな女性がいてアタックできないでいることを隠せず、自身が担当する新郎から説教されちゃう男。笑わされて腹筋ちぎれました。

▼在宅ドラマが放送されれば、輝ける場が急に全部とんでしまった役者さんたちへの救済にもなる。撮影や録音などスタッフさんたちを救うすべが思いつかないですが、どなたか、何かアイディアないものでしょうか。

▼『在宅刑事(デカ)』も見ます。いわゆる安楽椅子探偵ものは数あれど、名刑事、名探偵が似合う役者さんたちが、代わる代わる家から一歩も出ず推理。「答え合わせはコロナ禍明けに」でも構いません。

▼こう書いていますと、先月の当欄で紹介した、岩井秀人さん発案の演劇新形態『いきなり本読み!』が頭をよぎります。ということは、多くの人が知っている既存作品の脚本でやっても面白いし、ドラマ本編放送前に、まず脚本を公開してから、本編を楽しんでもらう、というのもいいですね。1度放送してから、演出家や脚本家がダメ出しをして2度目をやったらどうなるか。性別も自由に配役を入れ替えてやったらどうなるか、も面白い。確か岩井さんは、テレ東の佐久間宣行プロデューサーと親しいはず。いかがでしょうか。

▼在宅即興劇も楽しめますんで、『鶴瓶のスジナシat home』の制作予定はございませんかCBCテレビさんTBSさん。振り返りはいつもの中井美穂さんと共に。在宅を逆手に取った企画、もちろんNHK、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビの皆さまでも構いません、期待しております。

▼テレ東の小孫社長は、こうもおっしゃった。

「こういう時に、新しいコトが出てくる。こういう時こそテレ東の何かが刺激されて、ロケしなくてもいいけどロケみたいな番組が出てこないかと期待している。追い込まれたらなんか出てくるのがテレ東。追い込んでいただけると面白いかもしれない」

 小孫社長、もう作り始めていたら、行き違いですみません、何卒ご容赦を。

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第134回=共同通信記者)

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