丹沢「山の交番」開所も常駐せず 秦野署「三つの密」配慮

9日には丹沢臨時警備派出所の開所式のみが行われ、及川課長がピッケルを受け取った=秦野市戸川

 神奈川県警秦野署は9日、山岳救助の拠点となる丹沢臨時警備派出所(秦野市戸川)を開所した。ただ新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が解除されるまで、山岳遭難救助隊員は置かない。宣言下で登山客が減ると見込まれることや、隊員らが詰めることで密閉、密集、密接の「三つの密」につながることを考慮した。

 「山の交番」とも呼ばれる派出所は標高約570メートルの地点にあり、塔ノ岳や鍋割山などを管轄。毎年4~12月の第2、4土曜日の午前中、隊員らが派出所で勤務し、登山道をパトロールするなど登山客の安全を見守っている。本格的な登山シーズンの到来に合わせ、例年4月上旬に開所してきた。

 今回の措置を決めた理由について、救助隊隊長でもある同署の及川朋樹地域課長は「緊急事態宣言で外出自粛が強く要請され、今年は登山客が少ないと見込まれる」と説明。「派出所に詰めることで密室になってしまい、隊員の感染にも懸念がある」ことも挙げた。

 救助のための装備品は署内に置かれ、これまでも同署から遭難事故などの現場に出動するケースが多かったという。ただ同署から派出所までは車で40分弱。及川課長は「あまりに山岳事故が続くようなら、隊員を常駐させなければならない」と指摘。登山客らに「各自治体の外出自粛要請に従って行動し、登山する際は登山届の提出、複数人での行動、早めの出発を心掛けてほしい」と呼び掛けている。

 9日に行われた派出所の開所式で、井原義春署長は「緊急事態宣言を受け、登山の状況に変化はあるかと思うが、登山者の安全を守る目的は変わらない」と隊員らに訓示した。

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