上場企業「新型コロナウイルス影響」調査(4月9日時点)

 4月7日、政府は東京都など7都府県を対象とする「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」(以下、緊急事態宣言)を発令した。連日、感染者数が最多を更新し、感染拡大の先行きが見通せないなか、新型コロナに対する対応や影響を開示する上場企業が相次いでいる。
 4月9日までに、新型コロナ関連で影響や対応などを情報開示した上場企業は1,102社に達した。これは全上場企業3,778社の29.1%と3割を占めた。
 緊急事態宣言の発令された4月7日以降、外食産業や小売業などを中心に店舗の「臨時休業」に踏み切る企業が相次ぎ、62社が店舗休業を公表した。法的強制力はないとはいえ、緊急事態宣言が企業に及ぼしたインパクトの大きさを物語っている。

    • ※本調査は、2020年1月23日から、全上場企業の適時開示、HP上の「お知らせ」等を基に集計。前回発表は4月3日

 (正午時点)

  • ※「影響はない」、「影響は軽微」は除外し、「新型コロナウイルス」の記載はあっても、直接的な影響を受けないケースは除外した。

ファーストリテイリング2,500億円、ビックカメラ1,000億円の売上下方修正

情報開示した1,102社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスによる下振れ影響に言及したのは263社だった。このうち、178社が、売上高や利益の減少などの業績予想、従来予想と実績との差異、次期見通しなどで下方修正した。業績の下方修正分のマイナスは合算すると、売上高が1兆7200億円、最終利益が1兆3,955億円に達した。
一方、「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響確定は困難で織り込んでいない」などの開示は391社で、業績を下方修正した企業数の2倍以上が影響額を明らかにできていない。
 前回発表後の4月3日以降、今期の業績予想を下方修正した企業では、「ユニクロ」を展開する(株)ファーストリテイリング(TSR企業コード:770051693)が、現時点で海外展開する400店以上を休業し、今期売上高を2,500億円引き下げた。これは前期売上高(2019年8月期、2兆2,905億円)の約1割に相当し、売上の下方修正額ではJXTGホールディングス(株)(TSR企業コード:298259230)に次ぐ、2番目の規模となった。また、家電販売大手の(株)ビックカメラ(TSR企業コード:291643779)も営業時間の短縮や休館、インバウンドの激減で「下期において大きな回復は見込めないと想定」し、今期売上高を1,000億円引き下げた。
 原油価格の下落などで大幅な減損損失が相次ぐ総合商社では、住友商事(株)(TSR企業コード:570098629)が、感染拡大に端を発する事業環境の悪化を理由に、減損損失等の一過性損失を中心に1,000億円程度の利益減少の可能性を公表した。

コロナ上場企業影響0409

62社が「緊急事態宣言」を受けて臨時休業を公表

 店舗・拠点の休業やサービス停止を開示した企業は130社だった。このうち、4月7日の緊急事態宣言を機に店舗などの休業を公表したのは62社(構成比47.6%)にのぼった。
 小池百合子都知事は、4月10日に緊急事態宣言に基づき、対象業種や店舗休業を正式要請する見込みだ。現状はあくまで企業の自主的な休業措置だが、正式要請でさらに多くの企業で休業や営業時間の短縮も見込まれる。対象業種の詳細次第では、サービス業や小売業などで広範囲にわたって影響を受ける可能性も出てくる。
 国内の感染者数が増加の一途をたどり、従業員などに感染者が出たことを公表した企業は159社。また、感染防止のために在宅勤務やテレワーク、時差出勤の実施、従業員の働き方の変更を公表した企業が98社だった。緊急事態宣言の対象7都府県を中心に、従業員の働き方を見直し、通勤や会議などでの密集空間を避ける動きがさらに強まっている。

業績下振れ影響は製造業、個人消費関連の小売業、サービス業の3業種で8割を占める

 業績への下振れ影響を公表した263社のうち、業種別では製造業が最も多く99社(構成比37.6%)を占めた。部品調達難などのサプライチェーンの乱れや、海外市場の販売縮小を懸念して業績を下方修正するケースが多い。完成車メーカーの減産が相次ぎ、下請メーカーなどすそ野が広い自動車産業への影響が懸念されている。
 次いで、小売業73社(同27.7%)、サービス業39社(同14.8%)と、個人消費に絡む業種が圧倒的に多く、上位3業種で8割(同80.2%)を占めた。

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