コロナ禍で深刻化する医療従事者への偏見…暴言受けた女性看護師のSNS投稿から僧侶が説いた

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コロナウイルスの治療には多くの医療従事者がかかわっている(Mongkolchon/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大によって7都府県で緊急事態宣言が出された。危機的状況での「恐れ」や「不安」「ストレス」のはけ口として、感染者や医療従事者に偏見の目が向けられるケースが出ており、女性看護師の子どもが虐められるといった事象も報じられている。SNS投稿され、大きな反響のあったエピソードについて、21万人以上の登録者がいるYouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」を発信する僧侶の大愚元勝氏に聞いた。著書「苦しみの手放し方」(ダイヤモンド社)を世に出した同氏は、そのキーワードとして「縁起」と「身口意(しんくい)の三業」を説いた。

コロナ禍における医療従事者への偏見を受け、「身口意の三業」などを説いた僧侶の大愚元勝氏

ある訪問看護師の女性が3月末にツイートした内容が数万件もリツイートされている。女性は訪問先の家を出た際、車に記された社名を見て職業を知った男性から「なぜ看護師が外を歩いてる」「お前のせいで感染がうつるだろう」と問い詰められた。訪問介護について説明しても「そんなことは知らない。看護師が外を歩くなんて言語道断だ」「お前の患者にもコロナはいるだろう。そいつの家を教えろ」と絡まれ、「とにかく迷惑だから外を歩くな」と言われたという。

大愚氏は「昨年12月に中国・武漢で発生が確認されてから、コロナウイルスは地球の一部から裏側にまで広がり、世界は密接につながっているのだと認識させられた。すべての事物事象はつながりを持ち、関係しながら存在している。これは2600年前にお釈迦様が説いた『縁起』です」と背景を踏まえた上で、「この男性は自身がコロナに感染して病院にお世話になるかもしれないという想像ができない。自分とは違う立場の人たちと影響し合い、支え合っているという『縁起』に全く理解が及んでいない。ニューヨークでアジア人を『コロナ』と罵って殴る人と同様で、自分と他者に全くつながりがなく、自分は自分、他人は他人と思っているからそういう行動に出るわけです」と心理を分析した。

言いやすい相手を選んで憎悪をぶつけ、理不尽な言動をとる。決して他人事ではない。誰もが無意識にそうしてしまう可能性をはらんでいる。「正義」だと思い込んだ人が、実は加害者になっている。今回のコロナ禍を通して「縁を生きる」ことを強調した大愚氏は「身口意(しんくい)の三業」について「『身』は行為、『口』は言葉、『『意』は思い。この3つの業(ごう)で他の人を苦しめることもあり、それは自分にも帰って来る』と説明した。

コロナ禍からは離れるが、共通する事象として、2月にはツイッターにこんなケースが投稿されていた。トラック運転手の男性が作業着でコンビニに入ったところ、子どもが「あの人汚い」と指を指し、その母親も「ばっちいねぇ、恥ずかしいねぇ」と言葉を重ねた。男性は子どもに「ちゃんとしつけできないお母さんで君恥ずかしいねぇ」と言い返したという。

大愚氏は「私も肉体労働に従事したことがあるので分かりますが、『俺らは大変なことをしているんだ』と、きれいなオフィスで働いている人に対して思うことがある。一方でお母さんが聞こえよがしに『ばっちいね』と言ったのだとしたら、『大変な仕事をしている』という思いやりに欠けた発言になる」と踏まえた上で、「ただ、『お母さん、恥ずかしいね」と言ったところで、この子が『はっ』とすることはないし、お母さんも『私、恥ずかしいことを言ってしまった』とは思わないでしょう。自分がその立場だったら、どうしていけばいいのか、自分の振る舞いや発言に気を付けるようにしたいと思います」と指摘した。

縁でつながった他者への思いやり。「そのことを今、家にいながら考える機会です」。大愚氏はそう呼びかけた。

■YouTube「大愚和尚の一問一答」
https://www.youtube.com/channel/UC4arQnli3ffEuCSrSgAD_Ug

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)