新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令を受け、一部の商業施設や飲食店などで自主休業する動きが出ている。一方で、その判断は事業者個々に委ねてきたため温度差が生じていた。神奈川県は10日、11日午前0時からの休業要請を求めており、夜の繁華街は岐路に立たされている。
9日夜。飲食店やバー、ナイトクラブなどがひしめく川崎市川崎区の仲見世通りは平時とはかけ離れ、人影はまばら。シャッターを下ろす店舗が点在しているため、通常通りに営業している店へ呼び込む従業員らの姿がさらに目立った。
「暇すぎです。助けてください」。声を掛けてきたナイトクラブの従業員は、感染予防を意識するように付け加えた。「ちゃんと店をきれいにしているし、(スタッフ)は検温もしているので大丈夫ですよ」
横浜市中区福富町の繁華街も、おおむね同じような状況だ。人の往来こそ激減したが、呼び込みの男性は「店は普通にやっている。怖さもあるけど、気をつけている」と話した。
県はキャバレー、ナイトクラブなどの遊興施設、繁華街での接待を伴う飲食店などの利用を控えるよう示している。「密閉」「密集」「密接」の条件がそろいやすい環境で感染拡大の原因となる恐れがあり、政府もかねて指摘してきた。
仲見世通りでは、新型ウイルスがまん延しだした2月以降から客足は遠のくばかりという。「店のスタッフも(客からの感染が)怖がって働きたがらない」とは外国人パブの経営者。客入りが極端に減ったのに従業員の人件費は変わらず、営業を続けるほど赤字がかさむため「もう閉めたい」と嘆く。一方で新規オープンしたばかりの飲食店員の「閉められない」との言葉には苦しさがにじんだ。
黒岩祐治知事は10日、東京都に合わせる形で特定事業者への休業要請を出した。ネオン街は営業判断を迫られている。