社説(4/11):河井夫妻/釈明できないのなら辞職を

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 自民党の河井案里参院議員(広島選挙区)の公設秘書らが公選法違反(買収)の罪で起訴され、連座制に基づく案里氏の失職が現実味を帯びてきた。

 夫の克行前法相が陣営の実質的トップだったとの証言もあるが、夫妻とも事実関係の説明を避け続けている。国民に対する責任を果たせなければ、議員である資格はあるまい。特に案里氏は司法の裁きが下る前に辞職するべきだ。

 公設秘書らは案里氏が初当選した昨年7月の参院選で、車上運動員に法の上限を上回る報酬を支払ったとして広島地検に起訴された。

 地検は公設秘書を連座制が適用される組織的選挙運動管理者に当たると判断し、迅速に審理する「百日裁判」を申し立てた。禁錮以上の刑が確定し、広島高検が起こす行政訴訟で適用対象と認定されれば、案里氏の当選は無効となる。同一選挙区からの立候補も5年間禁止される。

 連座制はかつて選挙運動の指揮命令系統トップの総括主宰者らを対象としたが、法改正で組織的選挙運動管理者が新たに加わった。岩井奉信日本大教授(政治学)によると、組織的選挙運動管理者の概念は幅広く、末端の責任者まで想定しているという。

 関係者によると、案里氏の公設秘書は選挙事務所に連日詰め、車上運動員が乗る選挙カーの運行スケジュールなどを作成。人員のやりくりも決めていた。連座の対象となる可能性が高い。

 案里氏の陣営は克行氏が実質的に取り仕切っていた、と複数の関係者が証言している。案里氏の公設秘書の車上運動員の業務にも細かく口出ししていた。

 見過ごせないのは、克行氏が参院選の約3カ月前、広島県内の首長や県議、市議らに現金入りの封筒を手渡していたことが次々明らかになっていることだ。現金は1人当たり数十万単位になる。中には克行氏と深い付き合いがなかった人もいる。克行氏が手広く現金を配り、票の取りまとめを依頼した疑いがある。

 案里氏の陣営には自民党本部から1億5000万円もの選挙資金が送られた。落選したもう1人の自民党候補の陣営の10倍に当たる。配った現金の資金源となった可能性もある。

 現金20万円入りの封筒を受け取った町長は「道義的責任を取る」として辞職した。票の買収という重大な疑惑に、前法相の克行氏はどう釈明するのか。

 案里氏は先月末、体調を崩して病院に緊急搬送され、国会にしばらく登院できないという。秘書が逮捕、起訴されても、克行氏と共に自民党にとどまったままだ。

 党総裁である安倍晋三首相の責任は重い。もはや2人に身の処し方を任せるのではなく、自ら政治家のけじめをつけるよう諭すのがトップの役目だ。