DeNA今永が“意識高い系”と呼ばれるワケ「この1年間をどう過ごすのか」

DeNA・今永昇太【写真:荒川祐史】

DeNA今永はオンライン会見で「今はブルペンに入らない」深い理由を明かした

 DeNAのエース・今永昇太投手は“意識高い系”と呼ばれている。11日、オンライン会議システム『Zoom』を利用して開いた記者会見の内容も、面目躍如だった。

 2015年ドラフト1位で名門・駒大から入団した当初から、そうだった。1年目のオープン戦で雨中の投球となっても、「雨のせいで制球が定まらない、というしぐさを見せていると、チームはいい方向にいかない。淡々と投げる姿を見せようと思いました」、「いずれはチームの軸といわれる投手になっていきたいので」といった言葉を吐いていた。立ち居振る舞いの1つ1つ、練習1つ1つに、根拠や計画性がある。こんな新人はなかなかいないが、巨人・菅野のルーキーイヤーにも似たようなところがあって、長く活躍するにはこういう思考回路が必須なのかと感じさせられた。

 そして、この日のオンライン会見。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、チームは選手ごとに隔日&時差を設けての自主練習となっており、今永は横浜スタジアムでウエート、キャッチボール、遠投を行っているが、ブルペンでの投球練習は控えている。「開幕日が決まってからでも遅くはない」のも理由の1つだが、それだけではない。

「今年はシーズンが長引くことによって、オフが短くなる可能性がある。今は長い目で見ながら、フィジカルな部分を丁寧に見直すことが大事だと思う。ブルペンに入ることより、ランニングで足の回転数を上げること、体のバランスを見直したり、重い物を持ち上げてみることの方が、優先順位が高い」と説明した。現状では今シーズンの全面中止を含めて、あらゆる可能性が考えられるが、シーズンが後ろ倒しされ、結果的にオフが短縮されるケースを想定して、肩の消耗を控えて体力アップを図っているというわけだ。

シーズンオフ短縮を想定、東京五輪も見据えて準備「いろんなこと対応、順応できることを求められている」

 自宅では海外ドラマを視聴する時間を増やした。これも単なる娯楽ではない。「豪州(2018年オフに志願して参加したオーストラリアン・ベースボールリーグ)で、どうやったら英語が上達するのかと現地の日本人に尋ねたら、『ドラマを音声日本語・字幕英語にしたり、逆に音声英語・字幕日本語にしながら見ると上達しやすい』と聞いた」からだ。昨季オフには米シアトルに渡り、メジャーリーガーも利用するトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」などで約2週間自主トレを行い、視野を広げた経緯もある。

 最近ハマっている自炊にも、「昨日はカオマンガイ(タイ料理で蒸し鶏を添えたご飯もの)を作りました。体組成を計ったら、自主練習になってから筋肉量が落ちていたので、体脂肪率は落とし、筋肉量を増やすために、低脂質・高たんぱくのものを取るようにしています」と説明が付く。

 侍ジャパンでも、昨年3月のメキシコとの強化試合、11月のプレミア12に登板しており、不可欠な存在になりつつある。「いろんなことに対応、順応できることを求められていると思う。東京五輪は1年延期されましたが、この1年間をどう過ごすのかを(侍ジャパン首脳陣から)見られていると思う」と自覚十分。実際、通常のプロ野球のベンチ入り選手数は25人だが、五輪では24人。登録できるスタッフの数も限られており、コーチが打撃投手役を務めるなどはよくあること。メダルなしに終わった2008年北京五輪では、“多国籍”の審判の判定、ナイターもあれば午前10時半開始の試合もある日程などに、選手たちは戸惑った。東京五輪には自国開催というメリットがあるとはいえ、国際試合ではやはり対応力・順応力が大事になるのだ。

 前例のない、誰にとっても不安なシーズンをもレベルアップのチャンスに変えようとしている今永。いつまで続くとも知れないインターバルを越えて、公式戦のマウンドに上がる日が楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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