世界を視野に楽しむ 陸上女子七種競技 山崎有紀

2020に懸ける長崎県勢 File.14

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「周りの人たちに恵まれて今がある」と語る山崎=北九州市、九州共立大陸上競技場

 1984年から五輪に採用された陸上女子七種競技。日本のオリンピアンは過去に1人しかいない。この日本女子混成界を引っ張るのが、歴代3位の5836点を持つ山崎有紀。現在は本番までの国内2大会で五輪参加標準の6420点超えに照準を合わせている。「国内のレベルも上がってきた。厳しいかもしれないけれど、記録を出すなら、今だと思う」。自己ベストを127点上回れば日本記録。6000点を超えれば、日本勢初の快挙となる。

■もったいない

 桜馬場中時代に全国中学大会400メートルリレーで銀メダルに輝いたのをはじめ、四種競技や砲丸投げも全国入賞。長崎南高1年時には400メートルリレーのインターハイ7位メンバーになった。「ずっと興味があった」七種競技に挑戦したのは2年の秋から。全国レベルには届かなかったが、14位で高校最後のインターハイを終えることができた。
 当時は「陸上は高校まで」と決めていた。中学、高校とその時々で、自分としては「一生懸命」やってきた。ある程度満足して陸上から卒業しようとしていたころ、古里英治監督らコーチ陣が「もったいない」と九州共立大の疋田晃久監督に会わせてくれた。
 「全国14位でも見ていてくれた人がいたんだ」。うれしくなって競技継続を選択。だが、大学最初のシーズンを終えた冬、疋田監督にこう尋ねられた。「一生懸命やれているのか」。ハッとして、これまでの自分を振り返ってみた。
 高校時代同様、練習はこなしている。でも、一つ一つを全力でやれているかと問われると…。「一日一日を満足して終えていなかったかもしれない」。その日から、スイッチが入ったように取り組み方が変わった。
 意識の向上に伴い、才能も開花した。3年で当時の学生新、日本歴代2位の記録を出して、全国トップレベルに名乗りを上げた。陸上でこれまで知らなかった景色が広がり、本当の楽しさに気がついた。

■今がチャンス

 さらに視野を広げたのが、2018年ジャカルタ・アジア大会。社会人1年目で初めて日の丸をつけて、銅メダルを手にした。以降、海外大会への出場機会も増加。16年リオデジャネイロ五輪の金メダリストとも戦った。目の前で男子十種競技の世界新記録が出るのも見た。
 日本の女子混成選手の中では、国際経験を積んでいる方。だから「この大きな財産を生かしたい」と強く思う。その舞台こそ、実業団に入るころからターゲットにしてきた東京五輪。待ち遠しかった2020年が「もう来てしまった」。
 得意とするスプリント、投てき系はもちろん、課題の走り幅跳び、100メートル障害など、総合的に伸ばせるポイントはまだある。「今まで以上に一日一日を大切にしていきたい」
 五輪出場へ残されたチャンスは2大会。ただ、本番は記録にとらわれず、自らのパフォーマンスを出し切ることに集中しようと決めている。「楽しんで競技するのが自分のスタイルだから」。そのために、諦めず、しっかりと準備を続ける。

 【略歴】やまさき・ゆき バレーボールをしていた上長崎小時代から、陸上の県大会に出て走り高跳びなどで上位入賞。陸上部に入った桜馬場中、長崎南高でリレーを中心に全国入賞した。七種競技を主戦場としたのは高校2年の秋から。九州共立大で全国的に台頭し、4年で学生王者に輝いた。スズキ浜松ACに進んだ2018年から、日本選手権2連覇中。ディズニーランドが好きで、クマのぬいぐるみをモチーフにした「ダッフィー」押し。165センチ、58キロ。24歳。長崎市出身。