コロナ影響、婚活市場も異変 「オンラインお見合い」流行

コロナで急増するオンラインお見合い。気になる成果は?(写真はイメージ=PIXTA)

 新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が叫ばれる中、婚活市場でも「異変」が起きている。感染の危険性があるお見合いや婚活パーティーを強行する業者が避けられる一方、自宅でできる「オンラインお見合い」(オンお見)に人気が集まっている。結婚相談所の経営者で『となりの婚活女子は、今日も迷走中』の著書もある大西明美氏によれば、リアルお見合いよりも男女の距離が縮まりやすい意外な傾向が出ているほか、今だからこそモテやすいタイプがあるという。20年間で4万3000件以上の婚活&恋愛アドバイスを実施してきた婚活アドバイザーが、コロナ禍における婚活の最前線をレポートする。

■「三密」の中で行われてきたお見合い

 ホテルのラウンジの客席を埋めるたくさんの男女の姿。ここで何が行われているか、皆さんは注意して見たことがありますか?

 実は男女の大多数がお見合い中ということが珍しくありません。7都府県に緊急事態宣言が発令されるまでの毎週末、都内のホテルでは恒例の光景でした。押し寄せる婚活中の男女によってラウンジが2時間待ちということもあったほどです。

 なぜホテルのラウンジがこれほどまでお見合いに選ばれるのか。それには3つの理由がありました。

・プライバシーが守られやすい=密閉空間

・ターミナル駅に近く迷いにくいため定番になる=多数が密集

・1時間前後会話をし続けるのに向いている=密接

 ここでは、通常のお見合いをわかりやすいように「三密お見合い」と呼ばせてもらいます。

■危険な「三密お見合い」を強行する業者

 私がこの記事を書こうと思ったのは、新型コロナの感染拡大が続くこの状況で危険な三密お見合いがまだ平然と行われているからです。

 国が不要不急の外出自粛を要請しているにもかかわらず、「個人の価値観は人それぞれ」「お見合いは必要だ、不要ではない、だから不要不急にあたらない」と言ってはばからない仲人(結婚相談所)が少なくありません。

 「仲人に逆らってはいけない」と我慢をして三密お見合いをしている会員も多く、婚活者がクラスター(感染集団)になってもおかしくない状況が続いています。目を疑うようなことが今、現実として起こっているのです。

■オンライン非対応の業者は淘汰か

 だからといって、お見合いを全部なくすわけにはいきません。そこで急きょ台頭してきたのが、最近話題の「オンライン飲み会」ならぬ「オンラインお見合い」(オンお見)です。

 オンラインお見合いとは、ZOOM、LINE、Skypeなどのアプリを使ったビデオ会議によるお見合いのことです。自宅にいながらお見合いが可能になります。オンラインお見合いに切り替えるだけで、婚活者がクラスターとなるリスクをゼロにできるのです。

 話を元に戻しますが、「むりやりホテルでお見合いを強要する」仲人のもとから、三密お見合いを絶対にさせない私の結婚相談所への登録も増えています。

 「人の価値観はそれぞれだから、時には我慢しなければいけない(三密お見合いをしたいということを価値観と言っていいのかは疑問ですが)」と、三密お見合いを強要する結婚相談所は今後淘汰されていくのではないでしょうか。

■オンラインお見合いのメリット・デメリット5つ

オンラインはリアルお見合いよりも男女の距離が縮まりやすい?(写真はイメージ=PAKUTASO)

 オンラインお見合いをここ1カ月ぐらい続けてみてメリットとデメリットの両方がわかってきました。

 まずメリットについて述べます。

➀自宅でできる

  感染リスクをおかさなくてもお見合いが成立することが何よりのメリットです。

➁移動時間がかからない

  三密お見合いの場合、だいたい1〜2時間かけてホテルのラウンジに行きます。オンラインお見合いなら移動時間と交通費を省くことができます。

③男性の場合は節約効果も

 多くの結婚相談所の場合、ホテルのラウンジでの飲み物代は原則男性の負担になります。都内だと1人1500円〜2000円前後ぐらいです。これがゼロになるので、1回のお見合いにつき3000円〜4000円前後のお金を男性は節約できるようになります。

④上半身以外はパジャマでもOK

 上半身しかカメラに映らないため、例えば下はパジャマやジャージ姿でも相手にはわかりません。上半身はちゃんとした身なりが求められますが、三密お見合いよりは楽な格好でお見合いができます。

⑤ナチュラルな姿が見えやすい

 多くの人がオンラインお見合いにまだ慣れていないため、構えていない素の部分がどうしても出てしまいます。しかし、その姿がかえってお互いを和ませ、距離を縮めやすくする効果も出ています。今のところプラスに働いているようです。

 では、オンラインお見合いのデメリットはどのようなものでしょうか。

➀部屋が散らかっていると悪印象

 整理整頓が苦手な人にとっては、お見合いをする場所の確保が辛くなります。小さな机を買ってきて、部屋の壁を背景にしましょう。

➁カメラ映りが誤解を招くことも

 スマホを使ってお見合いをする場合、カメラをスタンドなどで固定しないとブレブレになります。暗い照明だと、暗い人の印象にもなりやすいです。

③ネットに不慣れな人には向かない

 新しいことを覚えることにストレスを感じる人は、オンラインお見合いに適応しにくいです。インターネットに苦手意識を持つ人は意外と少なくありません。

④電波状況が悪いのはNG

 電波状況が悪いと映像や音声がぶつぶつと切れ、お見合いが円滑にできません。

⑤家族バレのリスク

 実家暮らしで家族に隠れて婚活をしている人にとっては、家族にバレるリスクがあまりにも高すぎるのでおすすめしません。

■婚活市場全体は縮小傾向か?

 このようにオンラインお見合いの現状をお伝えしましたが、そもそもコロナ禍の今、婚活市場全体の影響はどうなのでしょうか。婚活者の数が減少していないか気になる人も多いだろうと思います。

 婚活市場全体としてみると、縮小傾向だと言えます。緊急事態宣言が出ても婚活パーティーを強行している業者もまだたくさんいますが、多くが定員割れで中止を余儀なくされています。お見合いよりも人数が多い分、三密の度合いが強くなり、感染リスクはさらに高まるので、当然ですね。

 アプリ婚活も私が聞くところによると、活動している人は激減しています。結婚相談所と異なり、簡単にフェイドアウトができます。もともとアプリ婚活には既婚者や遊び目的の人が混ざっています。「オンラインデートしましょう」と相手から誘われても、相手がちゃんとしているのか確認しないまま個人情報を教えたくないと多くの女性が警戒します。

※オンラインデート:ビデオチャットを使って会話を楽しむデートのこと。

 結婚相談所はどうでしょうか。三密お見合いしか対応できない仲人が多いため、お見合いは減少傾向であるものの、会員自体は減っておりません。ひどい理由になりますが、三密お見合いしかできない仲人は、お見合いを無期限延期にする対応をとります。結果、無期限にわたって月会費を会員が払い続けることになります。

 お見合いを中止にするとペナルティの支払い(1件につき1万円〜2万円)がかかるからです。結婚相談所自体は、月会費制なら収入に直撃はありません。会員にアンフェアな環境を与えていることになります。

■震災時のように婚活熱が高まる?

 東日本大震災の直後の3月と4月、私の結婚相談所では自粛モードでまったくお見合いができませんでした。お見合いが不謹慎という雰囲気だったからです。

 ところが5月になって、20人ほど新しい入会があり、以降その年はいまだかつてない数の会員が入会しました。お見合いも活発化しました。婚活市場全体も成長期に突入しました。

 では、今回のコロナショックでは東日本大震災の時と同じことが起こるのでしょうか。実はまったく異なる様相を呈しています。

 お見合いが人命に関わるリスクとなる点が東日本大震災とまったく違います。逆に不謹慎という雰囲気はありません。

 つまり、お見合いそのものが自粛ムードではないので、三密お見合いをやめて、オンラインお見合いにすれば、お見合いの機会は失わずに済むということです。

 結婚相談所業界の視点で話すと、率先してオンラインお見合いに対応できる結婚相談所は生き残り続けますし、緊急事態宣言が出ているのに三密お見合いを強要する結婚相談所は淘汰されていくことになるでしょう。

 また、いたずらに月会費を払わせ続け、会員にだけリスクを負わせる結婚相談所も同じように力を失っていくでしょう。

■コロナ禍の今だからこそできることも

 オンラインお見合い以外にもやるべきことはあります。緊急事態宣言が出されている今こそ、パートナーの条件を見直す時間に使いましょう。

 婚活は通常、年齢、年収、身長、学歴など表面的なスペックを意識しないと相手を選べない仕組みになっています。活動を続けていくうちに、男性も女性もスペックにしか目が行かなくなる傾向があります。一度ここで、どういう人と一緒にいたら幸せを感じるのかを考えてみましょう。

 オンラインお見合い以外と書きましたが、インターネットを通して出会う機会が今後増えていきます。そのときのために、カメラ映りが良くなるテクニック(メイクや照明など)を考えることも必要になってきます。通販でグッズは売っていますので、ぜひそろえてみてはいかがでしょうか。

■コロナ不況で相手に求める条件が変わる?

不況になると女性が相手に求める条件が変わる(写真は急落する株価チャート=PAKUTASO)

 コロナ禍で突然訪れた不況。理想の結婚相手の条件に変化はあるのでしょうか?

 東日本大震災の時もそうですが、リストラされにくい公務員に人気が集まります。都心から離れた場所での公務員のお見合い成立率が今ですら通常の2〜3倍ほどになっています。

 もう一つ変わることが予想されるのは、女性の高年収志向がなくなっていくことです。

 不景気になれば、高年収の男性が少なくなります。さらにリストラが加速すれば、無収入の男性は結婚相談所で活動ができなくなるので(定年退職のぞく)、男性が減ります。

 女性は「ひとりだと今後の生活が不安」ということで入会が増え、男女比において女性が圧倒的に大きくなってしまいます。

 競争相手が増えてターゲットが減るので、高年収の男性だけを狙っていた女性にとって厳しい婚活状況になります。そのため、希望年収は低くなることが予想されます。

■「恐竜に学べ」婚活者に贈りたい言葉

 恐竜はなぜ氷河期時代に滅んだのか。それは氷河期前と同じやり方を変えなかったからです。どんなときもうまくいく人は大きくて強いものではなくて、状況に対応できる人です。

 三密お見合いができないから、お見合いは無理ですと言っている人は絶滅した恐竜とまるで同じではないでしょうか。オンラインお見合いを積極的に取り入れていきましょう。(婚活アドバイザー 大西明美)

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