長崎くんち 奉納踊り中止 踊町、来年に繰り延べ

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、諏訪神社(長崎市上西山町)の秋の大祭「長崎くんち」(10月7~9日)について関係者らが12日協議し、今年の奉納踊りの中止を決めた。来年に繰り延べとなる。国の重要無形民俗文化財に指定されている奉納踊りの中止は、昭和天皇の容体悪化で取りやめた1988年以来。

 同神社であった協議には今年の踊町6カ町や神輿守町(みこしもりちょう)、祭事を取り仕切る年番町、池田剛康宮司ら43人が出席。踊町と神輿守町側が奉納踊りの辞退を申し入れるなどした。6月1日に稽古始めとなる「小屋入り」が迫る中、新型コロナの終息が見通せない現状では準備ができないと判断。全会一致で中止が決まった。
 お旅所は設置せず、「お下り」「お上り」なども中止する。一連の神事は参列者を減らすなどし、執り行う。「鯨の潮吹き」(万屋町)、「御朱印船」(本石灰町)など今年予定されていた6カ町の奉納踊りは来年に繰り延べし、以降は1年ずつ順延する。
 協議後、会見した池田宮司は「踊町は『3密』(密閉、密集、密接)の中で練習をしないといけない。健康と生命を大事にしたいという点から(実施は)難しい」と述べた。
 380年以上の伝統がある長崎くんちの歴史に詳しい長崎伝統芸能振興会資料保存委員の河野謙さん(65)によると、奉納踊りが1年延期されるのは、明治天皇の死去に伴う1912年を含め、今回で3回目。「戦争などによる中止や規模縮小、数カ月の延期などは20件以上ある」としている。


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