最上級生の自覚胸に 走り続ける ソフトボール大村工 宮嵜尚哉 信じて前へ 高校のエースたち・4

「当たり前だったことが、当たり前じゃない」と胸に刻んで白球を追う宮嵜=大村市、大村工高グラウンド

 新入生を迎える4月。大村工高男子ソフトボール部の山口義男監督は、新2、3年生に語り掛けた。「もし、おまえたちが1年生だとしたら、今の自分は1年生にどう映るか」。自らも先輩に引っ張られて力をつけてきた宮嵜尚哉は最上級生になった今、その言葉の意味をかみしめている。
 佐世保市の宮小ジュニアで1年から競技を始めた。宮中時代は長崎KSCで全国制覇も経験。大村工高でも1年の秋から出場するなど、早い段階から頭角を現した。
 身長166センチ、体重68キロと小柄ながら、左打席から広角に飛ばせる勝負強い打撃が持ち味。1年時の全国選抜大会県予選決勝では、1点ビハインドの最終回に劇的な2点サヨナラ打を放ち、チームはそのまま日本一へと駆け上がった。
 一見、順風な競技人生に見えるが、そこは強く否定する。「今まではすべて先輩たちのおかげ。自分たちの代で結果を出せるかどうかが勝負」
 迎えた今季。チームは昨年11月に1年生主体で4年連続の全国選抜大会出場権を獲得した。その後は、自分たちの代である新3年生が意地を見せるのか、それとも後輩たちが勢いを増していくのか。いずれにせよ強くなるためには、経験値が高い自らの役割が大きい。そう自覚して、厳しい冬の練習を重ねてきた。
 そして今年3月、先輩たちに続く日本一という「結果」を求めた春。新型コロナウイルスの影響で大会が中止になった。約3週間、部活動自体もストップ。悔しかった。「でも、できなかったことばかりを意識していたら今後に響く」
 だから、その部活動ができなかった期間は“ブランク”ではない。チームの成長に必要だったと考えるようにしている。「当たり前だったことが、当たり前じゃないと分かった。プレー以外にも足りない点を話し合い、意見を共有して、すごくいいこともあった」
 「結果」を失った分、これまで以上に「過程」を大切にしながら、夏のインターハイ、秋の国体での再挑戦を誓う。誰も経験したことがない事態だからこそ、自分たちの行動次第でチームの今後が左右される。「先輩のおかげ」。いつか、後輩たちにそう感じてもらえるように、今はただ、前を見て走り続ける。

 


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