<ブレーク盤> 内田雄馬『Over』 声優人気やイケメンだけの人ではなかった!

内田雄馬『Over』

 92年東京生まれの男性声優による5thシングル。ここ数年、人気のアニメやゲーム、さらにはBL系を含むドラマCDなどで次々と主役級に抜擢されているので、歌手作品は声優人気やそのイケメンぶりの副産物かと思っていたが、聴いてみればかなりの努力家だと思い直した。特に、本作ではそんな先入観を打破しようという意志を強く感じる。

 アニメ『あひるの空』エンディングテーマとなっている表題曲は、「君といれば強くなるんだ」と、何度も試練を乗り越えようと誓うギターロック系のアッパーチューン。熱く張り上げる歌声と優しく問いかけるような歌声のメリハリで、ドラマティックに聴かせるのは声優ならではの強みだろう。

 カップリングの『Loser』はハードロック系の楽曲で、「勝者なら1人でいい」「お前がLOSER」と挑発するのが決まっているし、もう1曲の『Buzzer Beater』では、キレの良いラップや冴えわたる高音ボーカルなど上手さが際立っている。どれも、専業歌手にも決して劣らぬ説得力があるのだ。

全体として、尾崎豊のエモーショナルな骨幹に、河村隆一の甘いシャウトが加わったような声質なので、20世紀J-POPファンにも受け入れられる素質は十分。今後、自ら作詞を手がけたり、バンド形式で歌ったりすると、また伝わり方が変わるのかもしれない。本作を聴けば、多忙なくらい頑張ってる時ほど、実は色んなことが上手くいくのだと実感するはず。

(キング・通常盤 1300円+税)=臼井孝

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