壱岐市の針路 白川市政4期目の課題・上 【コロナ禍】 収束まで 経済どう維持

壱岐市を代表する観光名所、猿岩。展望台がある駐車場には車が1台も止まっていなかった=郷ノ浦町

 任期満了に伴う壱岐市長選は現職の白川博一氏が4選を果たした。新型コロナウイルス感染症による産業への打撃など、待ったなしの難題が山積する白川市政4期目の課題を追った。
 市内最大の繁華街、郷ノ浦。飲食店が軒を連ねる通りは、営業自粛を伝える張り紙が目立つ。郷ノ浦町で居酒屋を営む出口秀平さん(47)は先月、営業形態をテークアウトのみに切り替えた。「客が少なくて店を開けても赤字になるだけ。できることをやって、何とかしのぐしかない」
 市内ではこれまで、県内最多となる計6人の感染を確認。連日、防災無線で検査結果や対策について放送される。外出自粛を促す全国的な要請に加え、市内で立て続けに起きた感染は市民の警戒感を強めた。こうした流れは島の経済に深刻な影響を及ぼしている。
 観光産業への打撃は大きい。市観光連盟によると、修学旅行で同市を訪れる予定の団体は3月時点で17校2549人だったが、全てキャンセル。旅館や民宿では5月の大型連休の予約がゼロに等しいという。
 同市と航路で直結する福岡県が政府の緊急事態宣言の対象になったことも影響した。「福岡県壱岐市」とやゆされるほど結び付きが強い同市。九州や関西などから市内に入るには福岡市を経る場合が多い。同連盟の職員は「福岡の安全宣言はわれわれの安全宣言。福岡が落ち着かないことには…」と表情を曇らせる。
 打撃は1次産業にも及んだ。島が誇るブランド「壱岐牛」の子牛の競り市が今月あり、1頭当たりの平均価格は前回(2月)より10万円以上低い約65万円だった。
 国内外で経済活動が低迷し、食肉の需要が落ちたためとみられる。農協の担当者は「ここまで下がるとは」とうなだれ、「この状況が続くと廃業も出てくるのでは」と嘆く。郷ノ浦町在住、畜産家の70代男性は「コロナで牛肉の輸出もならん。乗り切るしかないが…」と困り顔だ。
 当選早々、白川氏は祝勝会で「経済対策特別事業を行う」と宣言。飲食店や交通事業者などについて、内需で島内経済を支えるための対策を想定し、市議会を招集する考えを示した。
 旅館や飲食店が閉業すれば、事態収束後に外需を取り込めない。白川氏の施策について、同連盟職員は「施設を維持する支援になれば」と期待する。
 市の動きに先んじ、商工会青年部は宿泊業者や飲食店を活用する取り組みを始めた。初日の14日は郷ノ浦町の旅館で会食。換気や消毒、検温などの対策を講じ、青年部の約10人が食事した。代表者は「落とせるお金は落とし、島内で助け合わないと」と話す。
 ただ、同市への旅行者は年間約25万人で、人口約2万6千人の内需だけで維持するのは難しい。さらに、島内経済を活性化させるにつれ、感染リスクが高まっては元も子もない。職員は頭を抱える。「感染防止こそが将来の誘客につながる。だが、人と接しないと経済は回らない…」


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