慰霊祭「一人でも続ける」 諫干閉め切り23年、福岡の男性

諫早湾が閉め切られた午前11時半に合わせ、死滅した生物などを悼み、手を合わせる沖牟田さん=諫早市、干潟跡

 「たった一人でも続ける」-。国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りから23年を迎えた14日、閉め切りで死滅した生物を悼む慰霊祭が諫早市白浜町の干潟跡であった。長年、県内外の市民が集まっていたが、昨年に続き、福岡県大牟田市の男性だけが訪れ、開門による干潟再生を訴えた。
 慰霊祭は、同市の環境団体「諫早干潟を憂える大牟田の仲間」が1998年から開催。5年前に一度、途絶えたが、2016年から同市の沖牟田龍雄さん(74)を中心に再開。しかし、参加者の死去や高齢化で姿を見せる人は減り、同会の本昭弘代表も昨年、死去したという。
 同会が干潟跡に立てた看板ややぐらなどは、既に撤去され、干潟再生運動の拠点は消えた。沖牟田さんは、唯一残る突堤に焼香台や過去の慰霊祭の写真パネルを設置。湾が閉め切られた午前11時半、死滅した生物と同事業の影響で命を絶ったという漁業者らを思い、鐘を約30回、打ち鳴らした。
 沖牟田さんは「人間のわがままで豊かな海を壊し、生き物を滅ぼした。早く開門して生物が生きる環境に戻してほしい。(慰霊祭は)一人でも続ける」と静かに手を合わせた。

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