「飛躍と雪辱」胸に努力 柔道長崎明誠 高屋歌鈴 信じて前へ  高校のエースたち・5

「日本一」を心に誓い、練習に打ち込む高屋=長崎市、長崎明誠高武道場

 「飛躍と雪辱」。二つの誓いを胸に、心技体を磨いてきた。春の全日本高校柔道選手権女子の団体(3人制)、個人52キロ級の2冠を目指して努力を重ねた日々。大会は無念の中止となったが、長崎明誠高の高屋歌鈴は「まだ先がある」と心を奮い立たせている。
 団体の日本一はチームの悲願だ。2016年の中国インターハイで準優勝したものの、あと一歩届いていない。今回、県大会を勝ち上がった団体戦メンバーは、2、3年生部員計17人から選ばれた精鋭ぞろい。先鋒(52キロ以下)の高屋はポイントゲッターとして存在感を示していた。「必ず取ってくれる」と高屋を信頼する大将(無差別)の川口鈴王、中堅(63キロ以下)の大内聖琉の陣容は、小森講平監督が「今年は狙える」と言うほど充実していた。
 もう一つ、闘志を燃やす材料があった。昨年の春の選手権。個人52キロ級3回戦で、同学年の川田歩実(東京・修徳高)と顔を合わせた。「来るのは分かっていた」はずなのに、背負い投げで一本負け。「彼女に勝たないと日本一になれない」。それからは、8月の南部九州インターハイ、9月の全日本ジュニア体重別選手権を制したライバルへの雪辱を期してきた。
 得意としているのは寝技。ともえ投げから抑え込みに持ち込むパターンが多く、関節技も効果的に交える。それを支えているのが「やめろと言うまでやめない」(小森監督)と感心するほどの豊富な練習量。加えて、体の力も強い。腕を伸ばして床からバーベルを引き上げる「デッドリフト」は130~140キロを記録。昨年11月、九州高校新人大会の個人52キロ級は全4試合オール一本勝ちで相手を圧倒した。
 父の影響で、幼稚園の年長から始めた柔道。諫早市の多良見少年教室に通っていた12年、ロンドン五輪女子57キロ級で金メダルを取った松本薫の野性味あふれる姿に憧れた。当時、喜々津小4年生。「私もあの舞台に立ちたい」。喜々津中から長崎明誠高に進み、小森監督と初めて会った時、五輪の夢を口にした。笑われる覚悟だったが、返ってきた言葉は「世界を目指そう」だった。
 そのためにも「今は一日一日を無駄にせず、こつこつ積み重ねていく」。高い目標を持ち、仲間とともに練習に打ち込む。道は険しくとも、あくなき闘争心と日本一の努力で切り開いていく。

 


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