20年余りなんとなく釣りを続けていた新人編集者の私がついに編集部にドヤされ、心を入れ替えてイチからマジメに取り組み始めるドキュメンタリー。釣具店に行きタックルを自腹で揃え、そのまま釣りに直行。今回はシーズン真っ只中、食べて美味しく、入門としても間口が広いとされるライトゲームの王様「メバル」をメインターゲットにします。今回はタックル購入編。前回に引き続き右も左もわからないので、釣具のポイント・横須賀大津店の石山さんから色々と教えて頂きました。
前回のエピソードはこちら。
前回に引き続き石山さんにお世話になっています。
前回はポイント横浜大津店、店長代行の石山さんにメバリングのなんたるかを伺いました。
今回は僕のポケットマネーである50,000円以内でメバリングのタックルを組んでもらいます。
どうにでもなれ…。
【Profile】
石山俊介(いしやま・しゅんすけ)
釣具のポイント・横須賀大津店の店長代行を務める。厳しい社内試験を合格したスタッフのみが名乗ることのできる「フィッシングマイスター」の資格を持つ。メバルには詳しくない、と謙遜するも取材中は編集部員たちを圧倒する知識量を見せた。笑顔がとてもステキ。愛称はイッシー。
(いちおう)3ランクの値段別にフルセット、考えてもらいました…!
まずはロッドから。大物から選んでいくみたいです。
大木「(石山さんに)一番高いやつ買うから大丈夫だよ」
この人はポイントの回し者なのでは…? (大木先輩は元店員です)
予算別:ロッド編
【ロークラス】ライトステップ2 アジ&メバル76T(TAKAMIYAプライベートブランド品)
石山「ランクがいろいろあるんですけれど、このアジ・メバルの竿は比較的柔らかくて、お値段も手頃なんでエントリーしやすいモデルです」
あれっ? 3,980円?? めっちゃ安くないですか? 腹をくくって50,000円も下ろしてきたのに1本目はまさかのサンキュッパ。
石山「どの釣具屋さんでもショップオリジナルの釣具(=プライベートブランド)を取り扱っていると思うんですよ。『とりあえず釣りを始めてみたい!』という方や小中学生がお小遣いやお年玉で買う、みたいなイメージのロッドですね」
(今まで自分が使ってた5,000円くらいの竿はほんとにビギナー向けのものなんですね…)
【ミドルクラス】ソアレBB S76UL-T (シマノ)
石山「高校生でアルバイトして釣りを始める、みたいな方はこちら。メーカーのエントリーモデルです。だいたい10,000円前後出すと国産のいいガイド使っているので糸の絡みがすごく減ってきます。比較的ストレスなく釣りができます」
なるほど、ところで次の月下美人ですが…
【ハイクラス】月下美人MX68LS-S (ダイワ)
(高級だ…!)さ、さっきのミドルコストなソアレとどういうところが違ってくるんでしょうか…?
石山「このクラスの竿になると、例えばジグヘッド専用、例えばプラグ専用といったふうに、ある種類の釣り方に特化していきます。代わりに汎用性はなくなります。今回はジグヘッド専門ですか?」
大木「いや、どっちもやってもらおうかなと思ってる」
石山「それならこの竿が面白いかもしれませんね!⇩⇩」
さきほどのソアレと同じミドルクラスな1万円前後の価格帯です。この竿の特徴は?
石山「この竿はよく曲がります!引きを楽しめるので釣りをしていて楽しいです。メバリングの主となるルアーのジグヘッドから小さいプラグまでストレスフリーに扱えますよ!」
そうなると、今回はこれが適任そうですが…。大木さん的にはもっと高級なほうが…? ダメ?
大木「いや別に俺はぜんぜん気にしてないから…(大嘘)」
石山「ミドルクラスではありますが、DAIWAさんのライトゲーム専門ブランドのロッドなので性能はもちろん、コスメも高級感があって所有欲も満たしてくれるロッドだと思います」
よし、ロッドは「月下美人70ULS」
名前も風雅で美しいし、きみにきめたぜ。
予算別:リール編
石山「まず、メバリングには細い糸を使うので、小さいリールを使うのがいいです。番手でいうと1000~2000番クラス。持ったときのバランス的に、竿が軽いのでリールも軽いほうが使いやすいですね」
【ロークラス】クレスト2004 2000サイズ (ダイワ)
石山「とりあえずメバリングを始めてみたい、という人におすすめです。これといって特徴的なところはないんですが、『ちゃんとしたメーカーのちゃんとしたリール!』 すてきなマークもついてます」
クレストで4,000円ほど。先ほどのローコストなライトステップ2と合わせれば、コミコミ10,000円ほどで釣りを始められるということになります。先輩の目がおそろしい私は、残念ながらそういうわけには行きませんが…。
次なんですが、これはなんて読むんですか? なすち?
一同「ナスキー」
【ミドルクラス】ナスキー2000S(シマノ)
石山「中級機種、というよりは正直言ってエントリーモデルです。でもこのあたりのランクからは防水性もしっかりしていて、塩噛みもしにくいです。メンテナンスの手間もかかりにくいです。」
ナスキーは9,000円ほど。この価格帯から防水性能が高くなるそうです。メンテナンスの手間が省ける、とは言うものの、石山さん的には釣行後は簡単な水洗いで良いのでメンテナンスをして欲しいとのことです。やろう!メンテナンス!
【ハイクラス】月下美人 MX LT2000S (ダイワ)
またもあらわる月下美人。
このランクになるとハンドルの形式が違う!ハンドルが分離されており、リール本体にねじ込むタイプになっています。
石山「ねじ込み式のハンドルだと遊びが少なくなるのでガタツキにくいんです」
工芸品的な美しさもあり、その名に違わぬ美人さんですね。
石山「このくらいのランクになってくると、非常に軽いです。ほら、クレストを持ってから月下美人に持ち替えると全然違うでしょう?」
ついに販売員としての本性を現した石山さんが軽妙なセールストークを開始。確かに持ってみた感じがぜんぜん違います。気持ちは傾きつつあるが、ウム…。
石山「リールとロッドで合わせて月下美人で揃えてみる、っていうのもアリですよ!」
グイグイくる石山さん。個人的にも惹かれるし、ここは月下美人で統一してみますか!
ここで決まるんですか。いつのまにか重大な岐路に立たされていたっぽい。自転車の部品はほとんどシマノ製なのに…。(趣味:サイクリング)
大木「編集部内の好みのパワーバランスとかもあるからね。シマノ派、ダイワ派、中庸派…」
例えばさっきの「ナスキー」と「レガリス(ダイワの同価格帯リール)」って、どうやって選んだらいいんですか?
石山「う~ん…」
いけない、また石山さんが苦しんでいる。
石山「巻き心地とか軽さとか色々あるんですけれども、結局は好みです、見た目だったり、フィーリングだったり…とにかく自分が使っていて飽きないものがいいですね」
なるほど、それなら今回はなおさら月下美人を選ぶのがよさそうです。
しかし本当の初心者にはリールの区別がつかなくたって仕方がない。そんなときは何でもいいから取っ掛かりを見つけてみるのがいいかもしれませんね。 例えば自転車に縁があったり、関西出身であればシマノ(大阪府・堺に本社がある)にしてみるとか。
使っていくうちに愛着が湧いてきて、派閥に所属するようになり、お互いに熾烈な戦いを繰り広げて、それがきっと楽しくなるのだと思います。釣りの楽しみ方のひとつの側面ですね。
ライン編
石山「トラブルが少ない順にナイロン>フロロ>PEです。PEは何本かの糸をより合わせた糸で、引っ張りには強いんですが擦れに弱いです。その代わりに細くても十分な強度を出せます。風に強く、よく飛びます!」
石山「引っ張られたときに糸がまったく伸びないので、その分感度もよく正確にアタリがとれます」
PEライン本線にプラスしてショックリーダーを付けなくちゃいけないのが面倒くさそうで敬遠してたけど、そろそろ観念すべきときか…
石山「PEにもトラブルの多いのと少ないのとがありますが、それは店員さんに訊いてください!この『シグロン(サンライン)』は私大好きでよく使ってます」
大木「イッシーは『8本撚り』が好きなのなの?」
石山「私は柔らかいのが好きなので断然8本撚り。コスパ的には4本撚りのもののほうが安いのですが、硬いのがあんまり好きじゃなくて…」
大木「俺はラインは硬めのものが好みだから4本撚りを選んでる。なにより安いしね」
おっと話に置いてきぼりを食らっています。パッケージにも記載されている「4」とか「8」とかってなんのことですか?
石山「PEラインはポリエチレン素材の原糸を複数本撚り合わせてで1本のラインになっているのです。この数字は撚り合わせた糸の本数ですね。4と記載されているものであれば4本の糸を組み合わせたものになります。もちろん本数が多く編み込まれていればその分強度は高くなりますが、高価にもなってくるのです」
ルアー編
石山「堤防で使うのであれば1~2gくらいのジグヘッドになります。このジグヘッドが一番スタンダードで使いやすいんじゃないでしょうか?」
四本しか入ってませんが、根がかりとかはあんまり考えなくてもいい感じですか?
石山「いえ、よくあります!そのときは大木さんに…」
大木「えっ俺メバリングはプラグオンリーだからジグヘッド持ってきてないよ」
石山「…それならもう一種類、ダート系のジグヘッドも揃えておきましょう」
ジグヘッドは以上の2種類を購入。ワームもたくさんありますが、どうやって選べばいいんでしょう。多すぎる…。
石山「基本はクリア系、濁っているときなんかは輪郭のはっきりしたワームがいいですね。あとはテールが付いたアピール力の高いもの。」
石山「でも一番は、自分が釣れそうだと思うものを選ぶことです! モチベーションに関わってきますからね」
確かに、実際に釣れるルアーでも自分の印象が悪ければ集中力が持たないかもです。逆に釣れないルアーでも自分がいいと思っていれば長い時間釣りができるし、結果的にそのほうが釣れる確率が上がりそうですね。
そして初心者の私が一番釣れそうだと思えるルアーとはもちろん…
石山さんおすすめのものです(笑)。
それにしても、今までのところ総計で30,000円ほど。想定予算を20,000円も下回っています。いや~良かった良かった。
大木「何言ってんの。安全を考慮して『救命胴衣』は必須だよ」
え?
石山「大丈夫です!売りつくしの安いのがあります(小声)」
え?
ライフジャケット編
石山「ライフジャケットは釣りをするうえで必ず着用していただきたいものです。足場の良い場所悪い場所に関わらず、万が一落水してしまった場合、着用してるとしてないでは救命率も大幅に違いますから! 」
な、なるほど!ロッドやリール以上に持ってなければいけないものなのですね!
最近ではベストタイプのものではなく、「自動膨張式」と呼ばれるコンパクトなモデルが数多くリリースされています。その中でも様々な規格のものがあり規格ごとに着用ルールが異なったりもします。例えば遊漁船に乗る際には、国土交通省認定の桜マーク「A」タイプのものでなければ乗船出来なかったりなど…。
そのようなルールも含め、購入するのであれば先述した「A」タイプを選んでおけば間違いないです。他にもウエストタイプとサスペンダータイプがあるのですが、個人的には後者のほうがおすすめです。 目立つので付けてるってわかりやすいですから」
大木「俺個人はウエストタイプが好みかな。楽だし、サスペンダーだとショルダーバッグが背負いにくいから」
石山「確かに着用も楽だし釣りをしていても気にならなくてスタイリッシュですよね、でも自分は『フィッシングマイスター』でもありますので、しっかりと着用して救命胴衣着用の啓蒙をしていかなければならないのでサスペンダータイプを着用してます!」
フィッシングマイスターとは?⇩⇩
石山さんには申し訳ないと思いつつもここはウエストタイプをセレクト。なにせワタクシ汗っかきなので…。
ところで自動膨張式とありますが、これを着用して落水した場合どうなるんですか?
石山「爆発します!(笑)ではなくて、落水したと同時にライフジャケット内にあるカートリッジが水圧を感知してガスボンベからガスが放出されインフレータブル(浮き輪)が膨らみ水面に浮き上がります!
なるほど浮き輪代わりになるんですね!!
通常の雨程度であれば膨張することはありませんが、梅雨などの湿度が高い時期にはボンベやカートリッジの部分に湿気が溜まり膨らんでしまいます。なので雨天釣行後や梅雨時期はなるべく湿気のない場所で保管して下さいね」
以上を持ちまして、お買い物終了!!
大木「おっ、まだ1,000円ちょっと残ってるじゃん。アジバサミ買っとく?」
いえ、今度でいいです。
次回、ついに実釣編へ!
自腹を切って購入したタックルでようやく釣り場に赴く一同。編集部には弁舌巧みにひた隠しにしていた筆者の実力がとうとう白日のもとに晒される。一投目を投げないうちから「ちょっと待った!」の声が掛かる醜態、満足にキャストもできないことが判明し俄然不透明になる先行き。50,000円も出して釣れませんでしたってオチは嫌すぎる。そこに新たなる助っ人が現れて…? 請うご期待…!
"5万円"で購入したタックルでついにメバルゲットなるか…!? 新米釣り編集部員の奮闘日記#3 - ルアマガ+(プラス)|内外出版社
余談
「釣具のポイント」にはお得な会員サービスがあります。100円につき1ポイント。5のつく日は「Let’s Go ポイントの日」で、ブロンズ会員でも4ポイントもらえます。どうして大木さんはポイントの日に連れて行ってくれなかったのか…。
石山「必要事項を記入お願いします!」
石山「あれっ同い年じゃないですか。戌年。」
ええ…。
かたや下っ端の新米、かたや店舗中に名を轟かすフィッシングマイスター。どこで生き方を間違えたのか…。