コロナ禍のアフリカに希望つなぐ、 元外交官の女性 工芸品輸入しネット販売、利益10%を生産者に還元

ガーナのバッグメーカー代表の女性(左)と原ゆかりさん=2018年、ガーナ

 アフリカ諸国では3月以降、新型コロナウイルスを封じ込めるための都市封鎖(ロックダウン)が続き、生産現場は休業を余儀なくされている。ガーナやケニアで製造したバッグなどの輸入販売を手掛ける元外交官の原ゆかりさん(33)は4月、自身が運営するアフリカ産品のオンラインショップで生じた利益の10%を取引先に還元する取り組みを始めた。国際協力に携わった経験から「寄付ではなくビジネスを通じた関わりが自立を促す」と信じているが、取引先の窮状を前に救済を優先した。(共同通信=浜谷栄彦)

 ガーナ政府は3月12日に最初の国内感染者を確認した。3月末までに、休校、ロックダウン、国境閉鎖、医療従事者の手当増額といった対策を取った。「ガーナは医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な分、危機意識が強く対応も早かった」という。

 原さんの取引先が拠点を置く南アフリカ、ガーナ、ケニア、エスワティニ(旧スワジランド)はいずれもロックダウンを実施している。人やモノの移動は厳しく制限され、製造各社はリモートワークや休業を強いられている。

南アフリカの工房。ロックダウンを受け一時休業している

 「運転資金が足りない」「無給で休業にした従業員にお金を支払いたい」。取引先の苦境を知った原さんは、2019年12月に公開したオンラインショップ「Proudly from Africa(プラウドリー・フロム・アフリカ)」で生じた利益の還元を決意した。現在、4カ国12ブランドの商品を扱っている。コロナウイルスの影響がなければ、この春にセネガルやルワンダのブランドも加わる予定だった。

 原さんは外務省の職員として13年から15年まで在ガーナ日本大使館で働いた。現地の実情に触れ、先進国による援助一辺倒では住民に意識変革を促すのは難しいと感じた。同時に、アフリカには優れた工芸品とセンスのある作り手がいることを知る。

 「ビジネスを通じた互いの成長が持続可能な開発につながる」と考え、15年に退職。総合商社のヨハネスブルグ支店を経て、18年にアフリカ産のバッグやアクセサリーを輸入販売する「SKYAH(スカイヤー)」を設立した。

原さんが取り扱うバッグ

 アフリカ諸国で作った製品は「粗悪品」という偏見から買いたたかれることもある。現在東京に住む原さんはアフリカに足しげく通い、品質が高く、日本の人々も思わず手を伸ばしたくなるような商品を選んで輸入している。

 「商品の価値を幅広く知ってもらうことがアフリカの雇用拡大につながる」。原さんはガーナで住民の経済的自立を支えるNGOの共同代表も務める。小さな村で女性たちの縫製技術向上に取り組み、収入を増やしてきた。「プラウドリー・フロム・アフリカ」に参加する生産者は、援助に頼らず生きたい人々の憧れでもある。育ちつつある成長の芽をつぶすわけにはいかない。各国の状況が上向くまで利益の還元を続ける。

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原ゆかりさん

 原(はら)ゆかり 1986年生まれ。東京外国語大を卒業後、2009年に外務省入省。米コロンビア大学大学院に留学中、インターンでガーナ北部ボナイリ村に滞在した。出身地の愛媛県今治市をたびたび訪れ、子どもたちに自身の経験を伝えている。

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