長崎県五島市は、1968年に発覚し本県など西日本一帯で被害が広がったカネミ油症の経過や被害者の証言などをまとめた「カネミ油症事件50年記念誌」(A4判、120ページ)を発行した。原因の汚染食用油が大量に流通した同市は被害者数が県内で最も多いが、発覚から半世紀以上経過し、高齢化で事件の風化も懸念される。市は「二度と繰り返されないよう、関心や理解を深めてほしい」と呼び掛けている。
市は昨年度、被害者らが参画する編さん会議を設置し、作業を進めてきた。記念誌は5章構成。1章の事件経過、2章の被害者インタビュー、3章の二つの被害者座談会は、長崎新聞社が取材と編集で協力した。
座談会は1月、本県や福岡などの被害者団体代表ら6人と、認定患者の子に当たる次世代被害者4人で、それぞれ開催。団体代表らはダイオキシン類の血中濃度を重視する診断基準の改定や、次世代被害者を無条件で認定することなどを提言。次世代被害者は幼少期から続く体調不良や、差別を受けた経験を証言した。
1章では具体的な症状、国や原因企業の責任を追及した裁判、救済法成立に向けた支援の動きなどを写真や年表付きで説明。2章では、市が2018年11月に市内で開催した油症50年記念行事の様子を紹介。4章は被害者や研究者、支援者ら15人の寄稿、5章には市や国の施策、法律などの資料を収録した。
800冊発行。市内の全小中学校と高校、図書館、医療機関などに配布する。一般向けの販売も検討している。
カネミ油症 50年記念誌発行 五島市「理解や関心深めて」
- Published
- 2020/04/16 15:00 (JST)
- Updated
- 2020/04/16 15:11 (JST)
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