上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 （4月16日現在）

　4月16日、政府は東京都など7都府県に加え、新たに全国40道府県を対象とする「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」（以下、緊急事態宣言）を発令した。感染者数の増加で、ＧＷ明けの5月6日までを対象期間としており、外出やイベントなどの自粛要請で封じ込めを目指す。
　新型コロナの感染拡大は市民生活だけでなく、企業にも大きな影響を及ぼしている。4月16日までに、新型コロナ関連による影響や対応などを情報開示した上場企業は1,389社に達した。これは全上場企業3,778社の36.7％と3割以上を占めた。
　業績の下方修正で、当初予想から売上高1兆8,013億円、最終利益1兆4,802億円が消失した。
　「緊急事態宣言」の発令を契機に、小売、外食産業を中心に「臨時休業」に踏み切ったり休業拡大、延長を公表した上場企業は112社に達する。また、3月期の決算発表が迫るなか、決算作業の遅延などを理由に決算発表の延期を公表した企業は、開示分だけでも54社にのぼった。

　（正午時点）

従来業績予想を取り下げ、「未定」に変更は16社

　情報開示した1,389社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスによる業績の下振れ影響に言及したのは361社だった。このうち、240社が、売上高や利益の減少などの業績予想、従来予想と実績との差異、次期見通しなどで下方修正した。
業績の下方修正分のマイナスは合算すると、売上高が1兆8,013億円、最終利益が1兆4,802億円に達した。一方、「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響確定は困難で織り込んでいない」などの開示は510社で、業績を下方修正した企業数の2倍以上が影響額を明らかにできていない。
　前回発表の4月10日以降、今期の業績予想を下方修正したのは、パチスロ機器大手の（株）ユニバーサルエンターテインメント（TSR企業コード:291710522）がフィリピンで展開しているカジノ事業が、新型コロナウイルスで営業を停止したことから、今期売上高を150億円（減少率7.9％）引き下げた。
　また、新型コロナウイルスの影響を受け、従来の業績予想を一旦取り下げ、「未定」としたケースが4月に入って相次ぎ、16社にのぼった。ホテル運営の藤田観光（株）（TSR企業コード:291046878）はインバウンドや利用客の減少、イベント自粛の影響などから「先行きが見通せない」として2月14日に公表した業績予想を取り下げ、「未定」とした。

業績下振れ影響は製造業、個人消費関連の小売業、サービス業の3業種で7割超を占める

　業績の下方修正を公表した240社のうち、業種別では製造業が最も多く95社（構成比39.5％）と4割を占めた。サプライチェーンの乱れや、国内外の市場の減退を懸念して業績を下方修正するケースが多い。次いで、サービス業44社（同18.3％）、小売業40社（同16.6％）と、個人消費関連が圧倒的に多く、上位3業種で7割（同74.5％）以上を占めた。

「緊急事態宣言」を受けて112社が臨時休業を公表　決算発表の延期は54社

　店舗・拠点の休業、サービス停止を開示した企業は176社だった。このうち、4月7日の緊急事態宣言を契機に店舗などの休業や、従来の休業範囲の拡大や延長を公表したのは判明分で112社（構成比63.6％）にのぼった。
　4月16日、「緊急事態宣言」の対象範囲が全国に拡大された。店舗などの休業はあくまで要請にとどまり、休業は企業の自主的な判断による。だが、対象範囲が全国に広がり、全国規模で展開している企業では、休業や営業時間の短縮で業績悪化も危惧される。特に、一般消費者を対象にした販売比率の高い店舗型の小売業、サービス業は、業績を直撃する可能性もある。
　決算発表の延期を公表した企業が増加し、新型コロナウイルスの影響による決算発表の延期は54社にのぼった。海外に連結子会社などを抱える上場企業は、新型コロナウイルスによる混乱で海外での決算作業や監査業務が進まないケースが多発している。また、国内でもテレワークの導入で在宅勤務が増え、決算業務に遅延が生じている。
　金融庁は、3月期決算企業の有価証券報告書などの法定提出期限を「個別の申請を行わなくとも、一律に本年9月末まで延長」とする方針を示した。だが、新型コロナは終息の見通しが立たない。上場企業の決算作業は遅延が生じており、今後も決算発表を延期する企業は増加していくとみられる。

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