【インタビュー】さだまさしさん 自分だけの問題ではない

さだまさしさん(株式会社まさし提供)

 新型コロナウイルスの感染増加に対応する緊急事態宣言対象地域が全国に拡大されてから一夜明けた17日、長崎市出身のシンガー・ソングライターで、「緊急事態宣言の夜に」と題した歌を作ったさだまさしさんが長崎新聞社の電話インタビューに応じた。

 電話インタビューに応じたさだまさしさんとの一問一答は次の通り。

 -「緊急事態宣言の夜に」を作った思いは。
 緊急事態宣言が出る直前の東京の若い人を見ていると、まるで実感がない。おそらく長崎でもまだ数が少ないから実感していない人もたくさんいると思う。(先に発令された)7都府県以外でも緊張感がないので「命に関わる怖い病気なのだ」ということを伝えたかった。

 -本県と東京との危機感の温度差は。
 長崎の場合、病床数も少ないし、いったん(感染が)爆発したら、誰も助けられなくなる。ニューヨークの事態は人ごとじゃない。「感染してもちょっとひどい風邪みたいなもの」と良い方をみんな信じる。でもそれによって、年老いた自分の母親、父親、あるいは自分がかかることによって友達にうつして、その友達のおやじ、おふくろを死なせてしまうことがある。これは現実に起きている。東京でも、海外でも。自分だけの問題ではないんだと真剣に考えてほしい。

 -東京での生活は。
 僕しか入らない事務所の部屋で仕事をし、それ以外は外出しない。(生活、仕事のストレスは)いくらでもたまるけど、でも僕はこれは有事だと思う。個人的なストレス、わがままを言っている場合ではない。自分の命を守ることが、ひいては隣の人の命を守ることにつながる。ぐずぐずしていたら(終息まで)1年以上かかるのではないか。

 -長崎は今年、被爆75年の節目でもある。
 (1987年から平和コンサートの)「夏 長崎から」を20年やって、音楽をやれる、聞いてもらえるというのは平和の象徴で、世の中が不幸になった時、音楽の自由は最初に奪われるんですよ、と毎年長崎で伝えてきた。それが現実になった。音楽は平和の上に成り立つ。そのことを(コロナショックで)ミュージシャンはかみしめている。音楽の自由や表現の自由などを守るには、国民自らが自制し、(これ以上の)パンデミック(世界的大流行)を引き起こさないことで強制力のある法律の成立を防ぐ、そんな闘いだと思った方がいい。
 僕がうろうろすることが迷惑なうちは何もできない。もしも僕が動くことができる状況になれば当然、原爆のことや平和について、アピールできるところについては僕なりにやっていこうと思う。

 


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