北朝鮮の女囚と「濃厚接触」した刑務官が見た快楽と悪夢

当局は「新型コロナウイルスの感染者はゼロ」と言い続けているが、実際は感染者が出ているのではないかという疑念が抱かれている北朝鮮。1月末から非常に強力な防疫体制を取っているが、教化所(刑務所)も例外ではない。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の教化所では面会が禁止されている。

ただでさえ環境が劣悪な教化所で、新型コロナウイルスが広まったら大惨事となるのは火を見るよりも明らかだ。受刑者の多くは、家族の食べ物の差し入れで延命しているのが実情。教化所から出される貧弱な食事だけでは、コロナに感染する前に栄養失調で死んでしまう。

そんな緊張を強いられている状況の中で、价川(ケチョン)教化所の刑務官が、女性受刑者と「濃厚接触」していたことが明らかになった。

問題の刑務官は10年以上前から价川教化所で勤務していたが、昨年下半期から30代の女性受刑者と関係を持つようになった。この女性は、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)で密輸を行っていて、摘発された。

顔立ちもきれいで、前述のように家族から差し入れてもらったものを食べて健康を保っていた。また、この刑務官ににワイロを渡して強制労働を免除してもらうなど、特別待遇を受けてきた。

特別なのはそれだけではなかった。この刑務官は、勤務時間に女性受刑者を保安室に呼び出して関係を持っていたのだ。刑務官をバックに付けた女性受刑者は、他の受刑者に暴言を吐き、横暴を振い、あれこれ指図するなど、傍若無人に振る舞った。

当然恨みを買い、教化所当局には信訴(不正行為の内部告発)が何度も届いた。しかし証拠がない上に、2人が容疑を否認し続けたこともあり、摘発ができずにいた。だが、その後も信訴が届き続け、もはや座視できないと当局が腰を上げた。

調査の結果、二人が関係を持っていたことが確認され、他の刑務官が保安室を急襲した。ちょうど女性受刑者は派手な下着を付け、刑務官の膝の上に座っていたところだった。

教化所当局は、新型コロナウイルスの感染予防のために非常事態となっている中での不祥事として、深刻に受け止めている。当局は、取り調べで容疑を認めた刑務官を、「受刑者と不当な関係を結び、防疫体系と教化所の秩序を見出した」として更迭した。しかし、いかなる刑事処罰を受けたのか、また女性受刑者が処罰されたのかどうかについて、情報筋は触れていない。

防疫の徹底は金正恩党委員長の命令で、違反すれば政治犯扱いされる。見せしめとして処刑される人もいることを考えると、二人も決して無事では済まないだろう。

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