メキシカンリーグ開幕延期はNPBにも影響? 冬季リーグの選手派遣問題が浮上

高木勇人が所属するレオネス・デ・ユカタンの本拠地は試合が無く閑散としている【写真:福岡吉央】

メキシカンリーグ開幕も新型コロナウイルスの影響で6月以降、ウインターリーグ日程に影響か

 新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れているメキシカンリーグ。16日(日本時間17日)には、メキシコのロペスオブラドール大統領が感染拡大防止のための外出自粛を求める非常事態宣言を5月30日まで延長することを発表した。これにより、同リーグの開幕は早くとも6月以降となる見通し。メキシコでは10月からはウインターリーグも予定されており、両リーグではそれぞれの日程編成について連携を取り合っているが、玉突きの形でウインターリーグの開幕も遅れるとなると、選手派遣を検討している日本の球団にも影響が出てくることになりそうだ。

 新型コロナウイルスの影響で、夏と冬、2つのリーグが開催されているメキシコならではの日程問題が浮上した。夏の「リーガ・メヒカーナ・デ・ベイスボール」と冬の「リーガ・メヒカーナ・デル・パシフィコ」はそれぞれ別の団体。今季は夏はプレーオフが終わるのが9月9日で、ウインターリーグは例年通りなら10月10日前後の開幕が見込まれていたが、夏のリーグが延期されたことで、試合が被らないよう、日程を巡る綱引きが水面下で行われることになりそうなのだ。

 メキシコでは、メキシカンリーグの約半数の選手がウインターリーグでもプレーしており、監督、コーチ、トレーナーらスタッフも夏冬掛け持ちが多い。メキシカンリーグのオラシオ・デ・ラ・ベガ会長は「ウインターリーグ側とはコミュニケーションを図っており、お互い協力していこうと話している」と明かしているが、現時点では具体的な内容は何も発表されていない。これまで両リーグはメキシコ代表への選手派遣を巡って対立したこともあり、経営的にも試合数を減らしたくない両者がどこまで譲り合えるかが鍵となる。

 そして今年は両リーグの間の期間にU-23W杯がメキシコで開催されることも、この問題をさらに複雑にさせている。WBSCは9月30日から10月9日にかけて、ウインターリーグ開催都市でもあるロスモチスとシウダー・オブレゴンで同大会を開催予定。メキシコ野球連盟は、世界の野球界でのメキシコの地位を上げようと、WBSC主催の多くの大会を誘致しており、今年はU-15W杯(8月から延期)、女子W杯(9月から延期)、ベースボール5(5人制手打ち野球)W杯(12月)も国内で開催される。

 U-23はコロンビアで行われた18年の前回大会では決勝で日本を破って優勝しており、連覇が目標。試合はウインターリーグと同じ球場を使う予定で、集客面や盛り上がりを考えてもウインターリーグとは開催時期をずらす形がとられるだろう。連盟としては、できれば夏のリーグとも日程を被せたくないだろう。

 夏のリーグは今季、レギュラーシーズンが各球団102試合、プレーオフには南北各地区8チーム中上位4チームが進み、準決勝、決勝、メキシカンシリーズと、約1か月かけてリーグ王者を決める予定だった。一方、ウインターリーグは詳細はまだ発表されていないが、例年通りなら10月中旬から12月末までレギュラーシーズンを行い、10チーム中上位8チームが1月に行われるプレーオフに進出。優勝チームは2月上旬に行われるカリビアンシリーズに出場する流れだ。来年の同シリーズはメキシコで開催予定で、ウインターリーグ側としては、日程を後ろにずらすことはできないため、開幕が遅れると、試合数を減らすしか選択肢はなくなる。

昨季はDeNA関根、濱矢がウインターリーグに参戦していた

 そうなると影響が出てくるのが、選手の派遣を検討している日本の球団だ。同リーグには昨季、DeNAが関根大気外野手と濱矢廣大投手を派遣。17、18年には乙坂智外野手もプレーした。また楽天も16年に森雄大投手、17年にオコエ瑠偉外野手、ルシアノ・フェルナンド外野手を派遣している。メキシコのウインターリーグはメジャーリーガーも多く参加するドミニカ共和国よりは少しレベルは落ちるが、プエルトリコよりもレベルが高く、翌年1軍での活躍を目指す選手にとっては格好の修行場所と言われている。だが、日本の場合、球団側が選手に対して拘束力を持てるのは11月末までで、12月以降は選手が希望する形でなければ試合に出場させることはできない。また、仮にリーグの開幕が例年よりも遅れるとなると、出場できる試合数も限られてしまうため、派遣自体を中止したり、選手の派遣先を他国に変更する可能性も出てくるのだ。

 メキシコでは、まだまだ新型コロナウイルスの感染は落ち着きそうにない。ロペスオブラドール大統領は3月30日、非常事態宣言を出し、国民に対して4月30日までの外出自粛や50人以上が集まらないよう要請した。だが、感染者数は増える一方で、この日、5月30日までの延長が発表された。スーパーや薬局など、生活に必要な店以外は閉店を余儀なくされており、首都メキシコシティでは地下鉄に乗る際のマスクを義務化。また一部の州では家庭内DV防止のために酒の販売が禁止されている。

 一方、メキシカンリーグは3月14日に、4月6日に予定されていた開幕を5月11日に延期することと、オープン戦全試合の中止と発表。だが、その後の感染状況が改善されないことから、5月11日の開幕も断念し、無期限延期とすることを4月10日に発表した。現在、全16球団ともチームを解散している状態。日本からは元巨人、西武の高木勇人投手がレオネス・デ・ユカタン、元ルートインBCリーグ武蔵の安河内駿介投手がヘネラレス・デ・ドゥランゴのキャンプに参加していたが、高木は本拠地メリダで、安河内は日本に帰国し、それぞれ個人で練習を続けている。

 夏のリーグ開幕は再びキャンプを再開し、オープン戦、あるいは練習試合を経てという流れを想定すると、最短でも6月中旬以降となりそう。メキシコでは16日現在、新型コロナウイルス感染者数は6297人、死者は486人と、数字は増える一方で、政府は国内での収束時期を6月25日と予想している。そのため、リーグ関係者からは「この状況だと、開幕できるのは早くても7月以降になるのではないか」という声も出始めている。

 まだ夏のリーグさえ開幕時期が不透明な状況にあるメキシコ。世界的にも珍しい、夏冬2リーグ開催国ならではの問題だが、選手派遣を検討している日本の球団にとっては、今後の状況によって臨機応変な対応が求められることになりそうだ。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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