河北春秋(4/19):妙な展開になりはしないか。東京電力福島第…

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 妙な展開になりはしないか。東京電力福島第1原発敷地にたまった処理水の処分方法を巡る議論。政府は先日、福島県浜通りの首長らの意見を聴いた。考えさせられたのは原発立地町の吉田淳大熊、伊沢史朗双葉両町長の発言だ▼「一番の被害者は避難を強いられた双葉地方の住民」と伊沢町長。海洋か大気への放出が現実的とした政府小委員会の提言に対し、県内では漁業者を中心に海洋放出に反対する意見が多い。それを強く意識しての表現だ▼海洋か大気か、どちらか選びなさい。タンクが満杯になるのは2022年。逆算すると今夏に決めないと間に合わない-。政府が被災地にこう迫っているようなやり方に違和感を抱く。二者択一は対立を生む。対立はやがて利害関係者間の分断を招く▼原発はこれまでも住民を分断してきた。立地町こそ、その痛みを知る。原発事故後の中間貯蔵施設建設受け入れは両町にとって、再生する古里に帰還できる町民と、帰るべき古里を失う町民とのあつれきを生じさせたという関係者もいる▼吉田町長は「敷地内の保管には限界がある」とした上で「どちらかを選べと言われても、簡単に申し上げることはできない」とくぎを刺した。新型コロナウイルス感染拡大も絡み、全国民的な議論の在り方が見通せない。(2020.4.19)