社説(4/19):米のWHO拠出金停止/今は争っている時ではない

©株式会社河北新報社

 今は世界が協調して新型コロナウイルスと闘わなければならない時だ。司令塔となる国際機関と対立している場合ではない。

 トランプ米大統領が世界保健機関(WHO)が中国寄りの立場を取り新型コロナの対応に失敗したとして、WHOへの拠出金停止を指示した。米国は最大の拠出国。予算不足になれば、ワクチン開発や治療法の確立などの国際協力に悪影響を及ぼしかねない。

 トランプ氏は記者会見で、新型コロナへの初動対応で中国に情報隠蔽(いんぺい)の疑いがあったのに、WHOは中国側の説明をうのみにした、などと非難した。

 WHOに中国寄りとみられる姿勢が目立ったのは確かだ。感染拡大が始まった当初、最初に患者が急増した中国からの報告を基に「人から人への感染は確認されていない」と誤った情報を出した。

 最高レベルの警戒を世界へ呼び掛ける「緊急事態」を宣言した1月30日には、テドロス事務局長が「感染の封じ込めに向けて非凡な手段を取った中国政府は称賛されてしかるべきだ」と中国への賛辞を繰り返した。当時、まだ中国の感染者は連日千人単位で増えていた。

 テドロス氏は宣言の直前に訪中している。各国が中国から自国民を退避させていることについて「WHOとして賛同できない。過剰反応の必要はない」とまで述べている。

 テドロス氏は中国が経済支援をてこに関係を深めるエチオピア出身だったため、中国に配慮したのでは、と指摘されている。WHOの信用が揺らぐ原因になった。

 トランプ氏は米情報機関から警告を受けていたにもかかわらず、当初「じきに終息する」と楽観視して、感染症対策に消極的な姿勢を取ってきた。今や米国は感染者60万人、死者は3万人を超え、ともに世界最多となってしまった。

 トランプ氏は「われわれの積極的な対策で多くの命が救われている。最終的な死者も、予測より大幅に少なくなりそうだ」と自賛し続けている。しかし対応の遅れは隠しようもなく、政権の不満が国内で高まっている。

 11月には自身が再選を目指す大統領選が控える。拠出金停止の表明は、被害の責任をWHOに転嫁する狙いが透けて見える。自らの選挙を有利に運ぼうとする行動だとすれば、世界のリーダーの一人として、あまりにも身勝手と言わなければならない。

 国連のグテレス事務総長は「今はWHOへの資金を削減する時ではない」と懸念を表明した。各国の批判が集まるのは必至だ。

 WHOは感染症の情報を集めて評価し各国に政策の選択肢を示す。新型コロナで役割を十分に果たしたかどうかは厳しく問われよう。だが、それは終息が見通せるようになってからのこと。今ではない。