失敗は進んでいる証拠 タナカハルナさんデビュー10周年

「ありがとうの気持ちを大切にし、言葉で伝えていきたい」と語るタナカハルナさん=長崎新聞社

 透明(とうめい)感のある歌声で多くのファンを魅了(みりょう)してきた大村市のシンガーソングライター、タナカハルナさん(31)。デビュー10周年を迎(むか)えた昨年はアルバム「ten」を発表し、記念コンサートを開きました。これまでの歩みや仕事への思いを聞きました。

 子どもの頃(ころ)から天真らんまんなタイプでした。小学4年の時に、大村少年合唱団に入り、ステージで歌う楽しさを知り、歌手になりたいという思いが強くなりました。
 中学生の頃、家族に内緒(ないしょ)で受けた女優発掘(じょゆうはっくつ)オーディションの一次審査(しんさ)の合格(ごうかく)通知が家に届(とど)き、バレてしまいました。父親から「安定した仕事を選びなさい」と言われ、歌手や女優になる夢(ゆめ)はあきらめました。でも歌うことが好きだったので、高校ではコーラス部に所属(しょぞく)し、合唱団も高校卒業まで続けました。
 転機は短大時代。友達と思い出づくりに、新人発掘オーディションを受けたところグランプリに輝(かがや)きました。今度は、家族も「認(みと)めてくれる人がいるのなら」と背中(せなか)を押してくれて、音楽活動をスタート。日本語の言葉の意味や歌詞(かし)の物語を大切に、人に寄(よ)り添(そ)う歌にこだわってきました。
 もっと高みを目指そうと22歳(さい)の頃から3年間、活動の拠点(きょてん)を東京に移(うつ)しました。アルバイトをしながらレッスンを受けましたが、歌の仕事はほとんどありません。友達は近くにいないし、両親にも相談できず、苦しい経験(けいけん)をしました。
 でも24歳の時、メジャーデビューのチャンスが訪(おとず)れました。故郷(こきょう)を離(はな)れて暮(く)らす人をそっと励(はげ)ます自作の詞に、長崎市出身の作曲家、大島(おおしま)ミチルさんに大らかな曲を付けてもらいました。そんな「あかね雲」は今でも、とても大事なメモリアルソングです。
 その後は県内のイベントで歌ったり、長崎がんばらんば国体・大会(2014年)の公認応援(こうにんおうえん)リーダーを務(つと)めたり、テレビCMに出演(しゅつえん)したりしてきました。
 アルバム「ten」は、ジェットコースターのように上がったり下がったりする人生の中で、あの時の自分にかけたい言葉を紡(つむ)ぎました。新曲「もう一回」は「どんなにくじけそうでも、出口は必ずどこかにある」という自分の経験を歌詞にしました。
 現在(げんざい)、テレビ、ラジオ番組に出演するなど活動の幅(はば)を広げていますが、そんな歌以外の仕事は自分の視野(しや)を広げる冒険(ぼうけん)のようなもの。感じたままに伝えようと自然体を大切にしています。今後の目標は、もっとシンプルに音楽の良さを伝えること、そして、県民なら誰(だれ)でも知っているような曲を作ることです。
 大人になっても怖(こわ)いことはあるけど、自分の力を信じて、苦手なことにも挑戦(ちょうせん)した方がいい。失敗は進んでいる証拠(しょうこ)だし、工夫につながるし、助けてくれる新たな仲間ができる。誰(だれ)かの力を借りなければ、できないことがあります。関わってくれる人、応援(おうえん)してくれる人、歌を聞いてくれる人へのありがとうの気持ちを大切にし、言葉で伝えていきたいと思います。

 【プロフィル】1989年2月20日、大村市生まれ。同市立中央小-西大村中-県立大村高-長崎外国語短大卒。2009年、県産品のイメージキャラクターに選ばれる。これまでにアルバム7枚をリリース。現在、長崎ケーブルメディアの「なんでんカフェ」、NBCラジオ「カウントダウンミュージック」などに出演している。

 


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