こんな時代にあなたは「どうする?」太陽のような男、田原俊彦からの問いかけ 1987年 12月5日 田原俊彦の12インチシングル「どうする?」がリリースされた日

田原俊彦が歌う、ドラマ「ラジオびんびん物語」のエンディングテーマ

貴方は覚えているでしょうか、徳川龍之介というとてつもなくスケールがデカくて明るくて、ちょっとしたトラブルなどものともせずに豪快な笑い声と共に前を向いて突っ走るあの男を。

今回取り上げさせていただきますのは『ラジオびんびん物語』というドラマのエンディングを飾った「どうする?」と、その12インチバージョンであるところの「どうする?(Remix Version)」についてお話させていただければと思います。

『びんびんシリーズ』で徳川龍之介を演じたトシちゃんこと田原俊彦さんは日の当たる正統派アイドル路線をひた走り、明るく元気なみんなのアニキというキャラクターが定着しておりました。

プロデューサー・ジャニー喜多川が放った次なる一手

当時20代も後半にさしかかってからというもの、「It’s Bad」では新進気鋭の作曲家にして後に R&B の第一人者として名をはせる久保田利伸を起用して、歌謡曲アイドルとしては初のラップに挑戦するなど、その変容に注目が集まっていた頃でもありました。

「どうする?」は筒美京平の手による曲を船山基紀が編曲、そして作詞には「ブルーライトヨコハマ」を手掛けた橋本淳という数々の名曲を生み出した巨匠たちを新境地の開拓にあえて起用するという、ジャニー喜多川プロデューサーが放った “次なる手” としての意図を感じる作品であると思います。

オトナになったトシちゃん、洋楽に引けを取らないメロウなバラード

かくしてそのサウンドは、シンセサイザーを中心としたいわゆる打ち込みを軸としたアーバンでメロウなバラードに仕上がっており、オトナになったトシちゃんを強力にアピールする仕上がりとなりました。

それに加えて、そのヴォーカルは初期の頃のハツラツさとは打って変わって艶やかに情感を込めて歌い上げており、シンガー田原俊彦としての成長が強く感じられ、存在感が格段に向上しております。

そのテイストは、当時の洋楽と比しても全く引けを取らないものであったのではないかと思うのです。当時はいわゆる AOR やブラックコンテンポラリー等が隆盛を極めており、例えばペブルスの「ガールフレンド」やロビー・ネビルの「セラヴィ」などが同様な手触りを持った曲であるように思います。

大人の夜を愉しむロングバージョン、12インチシングルを聴いてみて

そしてこの「どうする?」なのですが、当時のディスコブームに影響されたのか、12インチシングルというフォーマットで「どうする?(Remix Version)」というバージョンが存在します。

7インチシングルバージョンではキレのいいイントロ、そしてトシちゃんの華麗なる決め台詞「どうする?」で終わるという構成なのですが、12インチバージョンでは雨音がしずしずと流れ、それからムーディーなシンセサイザーが乗ってくるイントロから始まります。

途中、いわゆるリミックスバージョンに使われがちなサンプリング的なギミックが多少入るものの、全体の仕上がりの中では邪魔になるほどでもなく、当時のリミックスでは得てしてありがちな冗長さもありません。原曲の曲調からしてもダンスフロアで盛り上がる類の曲ではなく、どちらかといえば大人の夜をゆっくり愉しむためのロングバージョンと言えます。

太陽のような男、田原俊彦からの問いかけ「どうする?」

全体としては、とてもスマートな作りだなあと思うのですが、それもそのはず、その編曲は原曲同様、船山基紀の手によるものです。原曲を生かし切ったその味付けは流石というしかありません。

かくして『びんびんシリーズ』からは「抱きしめてTonight」や「ごめんね涙」というスマッシュヒットが生まれるわけですが、その突端を築いたのは本作「どうする?」であると言えるでしょう。

人は誰でも悲しい時、寂しい時、そして思い通りにならない時があると思います。そして世の中にも、時折暗い闇が訪れて出口の見えないトンネルの中にいるような気持ちになることもあるでしょう。そんな時こそ破天荒な男である徳川龍之介や、太陽のように明るいオーラを放ちながらいつも大きな声ですべてを笑い飛ばしてしまう男、田原俊彦のことを是非思い出していただき元気になってもらえればと願うばかりです。そして彼はこう問いかけるでしょう。

「どうする?」

カタリベ: KZM-X

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