「人は残虐な行為に及ぶもろさをはらんでいる」写真と言葉で刻む生

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「次世代に『命』をつなぐため、自分の全てをぶつけたかった」と新著を手に語る国森康弘さん=大津市

 元神戸新聞記者でフォトジャーナリストの国森康弘さん(45)=大津市=が新著「写真と言葉で刻む 生老病死 そして生」を出版した。戦争、災害、介護、看取り-。約20年にわたる取材で撮りためた全ての写真を見返し、詩やエッセーを添えた。一つ一つのかけがえのない命の記録が「今、壁や困難に直面している人の生きる支えになれば」と願う。(田中真治)

 国森さんは神戸市垂水区出身。長田高、京大大学院を経て、神戸新聞記者に。2003年にフリーとなり、イラクやスーダンなどの紛争地で、満足な治療も受けられず死んでいく子どもたちを目の当たりにした。

 国内では、沖縄戦の元日本兵ら約100人の戦争体験者から聞き取りをした。命令に従って捕虜を銃剣で突き刺し、家族に集団自決を強いた重苦しい記憶に、「人は、誰もが残虐な行為に及ぶもろさをはらんでいる」と、非戦を訴え続ける必要を胸に刻んだ。

 東日本大震災では、発生翌日に現地入りした。シャッターを押すよりも、1人でも多くの命を救いたいと被災地を歩いたが、あまりの数の亡きがらに無力さを覚えた。

 理不尽な「冷たい死」だけでなく、「あたたかい死」を伝えたい-。地元の滋賀県をはじめとする在宅医療の現場や、各地に広がりつつあるホームホスピスなどを訪ねて回るようになった。

 寝たきりの女性がひ孫の誕生に笑顔を取り戻す姿に、生命の力を感じた。24時間介護の必要な難病患者が、ボランティアの学生たちの「人生の師」として旅立つ場面に、胸を打たれた。

 「限りある命だからこそ、バトンリレーのように、つながれていく」。誰もが居場所があり、寿命をまっとうできる共生社会の実現へ強い思いを込めながら、1年がかりで写真を選び、言葉をじっくり紡いでいった。

 「グローバリズムが進むにつれ、人間が、命そのものが大事にされなくなっている。地域の持つ助け合いやケアの力といった別の物差しで、社会の在り方を問い直したい」と国森さんは話す。

 農山漁村文化協会刊。162ページ。2750円。