【田澤雄基コラム】オンライン診療を始めての実感

先週から新型コロナ対策として始まった電話/オンライン初診を当院も開始し、1週間で十数件、熱や咳が続く方のご相談でお薬の郵送など行いました。

直接お会いしたことのない患者さんの診療も含まれ、できることに限界はありますが、感染拡大下の今は、患者さんと医療者双方にとって、あるいは社会全体にとって、有用性が高いと実感しています。

 

普段の診療の意義だけではなく、

通院外出することによる感染リスクからご本人を守ること

感染疑いの患者さんが来院される感染リスクから、自院スタッフとかかりつけ患者さんを守ること

感染不安により電話や過剰受診で忙殺される保健所や救急現場の負担を緩和すること

ができます。

ビデオ通話では、聴診はもちろん咽頭も見れないし、リンパ節腫脹も分かりませんが、いつもよりマメに再診予約を入れることにより、経過を細かく見ることで、診療の質は最低限補えるように思っています。

ネットで繋がっているので、経過が急に悪化した時もチャットでご連絡を頂くことができます。

感染不安を持っている方にとっては、医師が顔を見せて細かく話を聞き、その上で今後の経過予測や、何かあったらできることなどを真摯に伝えることで、一定の安心感を与えることができ、自宅待機を継続して頂いています。
安心感という意味では、解熱剤などのお薬が使えることも一役買います。
実際、オンライン開始以前も、焦って来院してしまった方の多くは、同居家族に高齢者や小さな子供、妊娠中の奥様がいらっしゃるような方で、
そのような方には本人の診療はもちろんですが、オンラインで家庭内感染対策を伝えることで、落ち着いて自宅待機できるようになる方が多いようです。

職場へのコミュニケーションも重要で、症状があるけどそれだけであまり長く仕事を休めないという方が多く、医師が職場に行かないように言ったと伝えてくれということで、自宅待機を延長できます。

保険診療は不合理なことも中々変わらないことの方が多い中で、今回のオンライン初診解禁は、むしろ不合理なほど急に変えすぎかとも感じます。

国内の99%以上の医師が経験したことのないオンライン初診を解禁したからやれと言われても、診療はもちろん、その前後の調整やシステム構築の壁もあり、できる医療機関は相当限られます。

政府は感染対策のために急ぎで活用促進したいのであれば、もっと細かい部分まで規制調整するか、ガイドラインやベストプラクティスなどの情報発信を急ぐべきかと思います。

このようなときこそ、自分たちのような若手で構成され、ITに強く、機動性の高いクリニックの出番かと思い、できる限りのことを進めています。

田澤 雄基

東京都医師会 医療情報検討委員会 委員 2014年慶應義塾大学医学部卒。 医学部生時代に医療IT系企業を起業し、売却。 研修医を経て慶應義塾大学医学部精神・神経科に入局。 大学院生として、人工知能やIoTを活用した精神疾患の診断研究に従事。 また同時に同医学部の産学連携プロジェクトを担当し、健康医療ベンチャー大賞を設立、実行委員長を務める。 独自の取り組みとして夜18-22時に診療する予防専門のMIZENクリニック豊洲を開業し、働く人のための夜間診療を行っている。

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