サラリーマンで資産2億円、JACK氏が実践する「損して得する」IPO獲得法

JACKさんはIPO投資を主軸として資産を2億円に築いた兼業投資家。会社員でも気軽に始められるのがIPO投資の良いところだと言います。今回は投資歴30年の中で磨いてきたJACKさん流のIPO投資法に迫ります。


当選確率を上げるための手間を惜しまない

――JACKさんのIPO投資について教えてください。

ブックビルディングに申し込んで当選を待つ。当たったら初値で売る。それだけです。

今のように地合いが悪い時は別ですが、初値は基本的には公募価格より高くつく傾向にあります。その差額を取りに行くスキームなので、当選さえすればリスクが小さいトレードだと思います。逆に言うと、当選確率をどうやって高くするかが重要だということです。最近はマネー雑誌などでもIPO投資が取り上げられるほど有名になっていますので、競争率は以前より上がっていますよね。

――当選確率を上げるためにはどんな方法があるのでしょうか。

まず王道は複数の口座を持ち、申し込む数と申し込む単元数を増やすことです。ネット証券の場合は一部の証券会社を除いて基本的には抽選で決まりますので、自分の口座だけで申し込むより、妻や親といった家族にも参加してもらい申し込めば当選確率は上がりやすくなりますよね。

またSBI証券にはIPOのチャレンジポイントがあり、申し込んで外れた時に1ポイント獲得できます。これを使うことによって当選確率が上がりますので、コツコツ申し込むことが大事です。たとえば、年間100本のIPOに申し込むと、全て外れたとしても100Pたまります。過去例を見ると、値上がりが期待できる優良なIPOがだいたい400Pくらいで取れますので、4年待てば1つは取れるわけです。4年に一度というと気が遠くなるかもしれませんが、家族で4つ口座を持てば、1年ずつずらしてポイントを使うことによって毎年1つずつIPOが取れます。

――ポイントを使って取りにいく狙いどころのIPOはどんな銘柄ですか。

やはり初値が高くつきやすい優良銘柄が良いですよね。今はネット上にIPOの情報がたくさん溢れていますので、株の情報サイトなどで有料会員にならなくても、いわゆるS級やA級と呼ばれる期待値が高い銘柄が選別できます。IPOに詳しい人たちが初値予想もしていますし、これから上場しそうな大型銘柄の情報も入手できます。

実際に上場するかどうかはわかりませんが、例えば、JR貨物、USJの再上場、劇団四季などは大型で人気があることから、比較的取りやすく美味しい銘柄候補といえるのではないでしょうか。日本郵政グループが3社上場した時のように、IPO参加者みんながハッピーになれる銘柄は今後も出てくるでしょうし、そういった銘柄をしっかり取るためにも、店頭証券の口座開設やネット証券で日頃からコツコツとポイントを貯め、ブックビルディングに備えることが大事だと思います。

「損して得する」IPO獲得術

――店頭証券(総合証券)でIPO当選率を上げるにはどんな方法がありますか。

ネット証券は抽選配分ですが店頭証券は裁量配分ですので、人と話すことが好きな人であれば担当者と仲良くなるのが近道だと思います。

僕がよくやっていたのは、証券会社の担当者が売りたい投資信託などをお付き合いで買って、心情的にIPOを配分したくなるような雰囲気にもっていく方法です。簡単に言えば、恩を売ってIPOをもらうということです(笑)。

投資歴30年のJACKさん

例えば、500万円分くらいの投資信託を買うと手数料3%として15万円くらいのマイナスです。しかし、そこで心情的に恩返しのIPOがくれば、100万くらいの利益が取れることもあります。投資信託は一定期間のみ保有したり、ヘッジをして売ってしまえば良いので、差し引きではプラスになります。

――投資信託の収支はマイナスでもトータルでプラスなら良いわけですね。

はい。損して得するために戦略的に損するということです。担当者はいろいろな銘柄を抱えています。投資信託以外では、公募割れしそうなCランク、DランクのIPOとか株価が下がっている銘柄も捌きたいと思っています。そういう銘柄は投資家には不人気なので、担当者が営業の電話をかけてきますよね。その時に「困っているなら引き受けるよ」とある意味借りやら恩を売るわけです(笑)。

JDIなどがその例ですね。人気がなかったJDIを引き受けたら、返報性の法則ではありませんが、人気があったサイバーダインのIPOをもらいました。値上がりするIPOに絞るのではなく、マイナスになるものを抱き合わせにして、差し引きでプラスにするスキームはこれまでのIPO投資の中で身に付けた技術の1つです。

――差し引きでマイナスになることはないのですか。

今までの経験ではないですね。もちろん、担当者のお勧めを言われるまま買っていたらマイナスになるでしょう。その対策として、引き受ける不人気の銘柄を貸借銘柄だけに絞って、買うと同時に空売りしておくことができます。すると、値下がり分は空売りで打ち消せますので、証券会社へのお布施は空売りの手数料だけで収まります。上がった場合は担当者にありがとうと伝えればいいですし、下がったら恩が売れます。

担当者のお勧めは基本的には下がることが多いというのは皆様も経験があるのではないでしょうか。ですから、場中の営業電話でお勧めしてくるような銘柄は十中八九下がるといえます。そういう銘柄で戦略的に損することで「この損を取り返すなら、ここは当たるからわかりませんが、IPOの応募なんてしてもいいですかね?」といった話が切り出しやすくなるわけです(笑)。

付き合いが広がるほど情報も増える

――証券会社の担当者とは積極的に付き合う方ですか。

そうですね。IPO獲得を狙うにしても、まずは担当者の支店にどれくらいの株数の配分があるか、担当者がどれくらい裁量やら株数を持っているかを知ることが重要です。店舗によって優先的にIPOを出す投資家の基準や条件があるため、そこを担当者との会話で探っていくのは大事だと思います。話をしたり一緒に飲んだりしていると、自分が獲得できるチャンスがどれくらいかわかってくるものです。資産が少ない人が預け資産5億円以上の人を中心にIPOを配る店舗で待っていても、もらえる可能性は限りなくゼロに近いわけですから。

また、担当者自身が振り分ける分もありますので、そこは前述したような恩を売る方法が使えると思います。担当者も人間ですから、手持ちのIPOを誰かに配るなら、預け額が大きいお金持ちと美男美女の次くらいに、ご飯やお酒をご馳走してくれる人が思い浮かべるのではないかなと思います。飲みに付き合うお金が厳しくても、例えば、口座を開く知人を紹介したり、週末などに行う証券会社のセミナーに参加するといったことも結果的に恩を売ることにつながると思います。

――担当者との付き合いでIPOを狙う手法で失敗はありますか。

損益面での失敗はほとんどありませんが、付き合い方という点での失敗はあります。昔の話ですが、独身時代に自分のタイプな担当の女性がいて食事に誘ったことがありました。IPOを融通してもらうためというよりも、その女性がタイプだったので一緒に食事をしたいと思ったわけです。男性の担当者は同性ということもあり誘いやすいのですが女性の場合は変に怪しまれても困るので「いつもお世話になっているお礼で」とか「今後の資産運用の相談で」といった口実を作って誘い、OKをもらいました。ところが、当日に店で待っていると、その女性だけでなく上司の男性もついてきてしまったんです。楽しくデートするつもりが大量の投資信託のパンフを見せられてしまい、ひたすら勧誘の話で、あれは散々でした(笑)。

――下心が裏目に出てしまった(笑)。

いろんな期待はありますが、単純に証券会社の人と一緒に飲んだり話をするのが楽しいんです。今のように地合いが悪い時は、儲かっている人がどのような銘柄やら金額を稼いでいるかなどは聞いてみたいですし、実益という点でも、例えば証券会社で自動車関連の投資信託を作ったというような話があれば、投資信託の買いを見越して関連銘柄を先に調べておくこともできますよね。

投資家同士の付き合いも同じです。ここ(※取材場所となった新宿にある卓球バー「RED T TOKYO」)に出資したのも、株や投資が好きな人が集まれる場を作りたいという思いがありました。株は国内だけでも3000銘柄以上ありますので、自力で全て調べるのは困難です。仲間が集まって話すことで情報共有できますし、人それぞれのスタイルや勝ち方がありますので、今みたいな厳しい相場の時はとくに、投資法やパフォーマンスについて聞くことが勉強になり、刺激にもなりますよね。

(次回はコロナショックの立ち回り方に迫ります)

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