【角田裕毅インタビュー】課題の見えた公式テストは好感触。ドライビングの変化も「ポジティブに捉えている」

 昨年はFIA-F3に参戦し、今年はFIA-F2への昇格を決めてカーリンからシリーズ参戦が決まっていた角田裕毅。今シーズンはスーパーライセンス獲得に向けても、非常に重要な1年になりそうだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、開幕戦からレースの延期や中止が続いている。

 2020年シーズン開幕の見通しは立っていないが、現在イギリスにいるという角田は、この状況をどのように過ごしているのだろうか。イギリスでの現状や、3月上旬に行われた公式テスト、今季から導入された18インチタイヤなどについて話を聞いた。

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──今はイギリスにいるのですか? 

角田裕毅(以下、角田):ずっとイギリスにいます。

──新型コロナウイルスの影響はイギリスの方が深刻ですが、日本に戻るという選択肢はありましたか?

角田:ありました。ですが空港で(ウイルスを)もらってしまうリスクが高く、スペインやイタリアから帰ってきた日本人が空港で(新型コロナウイルス感染症に)かかっているというのをニュースで見ました。かからないことが一番ですが、もしかかってしまった場合はもっと悪い状況が考えられるので、リスクを負わないことを選びました。

 ミルトンキーンズはまだ大丈夫な方だと思います。外出禁止ではありますが、トレーナーともビデオ通話をして、ジムでのトレーニングを家でやっています。そういった意味でも、日本には帰らないという決断に至りました。

──外出禁止でも外に出られますか?

角田:トレーニングなど健康上の理由であれば。スーパーなど、生活に最低限必要なことはできます。

──もちろんファクトリーはダメですよね?

角田:行けないです。ファクトリーは閉まっていると思います。

──こういう状況になってしまうということは2月下旬〜3月上旬の頃に考えていましたか?

角田:正直あまり考えていなかったですね。事態がどんどん悪化してく中で気づいていって、今それが現実になったという感じです。残念ではあるけれど、仕方ないと思います。

──角田選手の肌感覚として、事態が動いたというのはいつですか?

角田:バーレーンでの公式テストの時に、空港に着いた際に身体チェックがあって、結構大きなことなんだなと感じたのが最初でした。綿棒のようなものを鼻に突っ込まれて検査されました。

──開幕が延期になることも頭をよぎった?

角田:はい。

──バーレーン延期後、開幕戦として予定されていたバクーも延期となりました。メンタル面への影響はありますか?

角田:今は特に大丈夫です。世界中で問題になっているし、何もできることがないので、レースが始まってもいいように準備しているだけです。テストが良かっただけに悔しいというか残念なところはありますが、その感覚を忘れないようにトレーニングをして準備しています。

──公式テストについてお伺いします。率直に、手応えはありましたか?

角田:すごくありました。バーレーンのテストだけでいうと、3日間の総合リザルトでは後ろの方だったのですが、本当だったら3日間で総合トップタイムでした。2日目の最後のセッションでソフトタイヤを履いたのですが、僕のタイムが抹消されてしまったんです。それは自分の責任でもありました。

 ソフトタイヤは1周しかタイムを出せないので、みんな最後のギリギリのところでコースに出て行き、僕らも出て行きました。最初のアタックでトラフィックに引っかかってしまったので、僕はまだもう1周あると思ってすぐにアタックをやめて次の周にかけて走りました。

 結局その周がベストタイムで、3日間の総合トップタイムよりコンマ3秒くらい速かったんです。でもその前の周にチェッカーフラッグが振られていたのですが、バーレーンはチェッカーフラッグが見えづらいし、夜だったのもあって見えませんでした。

 ですがチームの状態もよかったので、自分もバーレーンテストに関していえばよかったです。

角田裕毅(カーリン)

──以前autosport本誌(No.1527)のインタビューで、予選一発のタイムを出すにはスタートマップ(アクセルを50%当てると、スロットルの開度が100%になる)の方がいいかもしれないという話がありましたが、いかがでしたか?

角田:やってみたけどダメでした。ホイールスピンが多すぎて……。

──スタートマップの方がいいかもしれない、という見方は変わりましたか?

角田:はい。

──またボトムスピードを落としすぎないようにドライビングを変えなければいけないという話でしたが、それについてはバーレーンで試しましたか?

角田:はい。チームが情報をたくさん提供してくれて、どういう走り方がいいのかというのを探してくれたおかげで、走り方は大きく変わった部分もあります。チームのおかげですぐに対応することもできましたし、ドライビングについても自分のなかで合っているという感触も得たので、そこはポジティブに捉えることができています。

──大きく変わった部分というのは具体的にいうと?

角田:できるだけボトムスピードを落とさないというか、進入重視という感じです。

──課題は見つかりましたか?

角田:一番はレースペースです。先ほども言った通り一応3日間の総合トップは取れたのでバーレーンでは良かったけれど、レースペースが課題です。チームメイト(ユアン・ダルバラ)と比べるとレースペースは劣っている感じがして、チームメイトからも吸収できるものは吸収できたので良かったですか、まだ課題として残っています。

──ダルバラと比較して、どんなところに違いがありましたか?

角田:たとえば『レースペースで◯周走る』と決められた際に、1周ごとのタイムを合計してどちらが速かったかというのを比較すると、ほぼ遅れをとっているという感じでした。1、2回上回ったこともありましたが、速く走らせつつタイヤを保たせるという技術がまだダメだったのかなと感じています。

──18インチタイヤはどうでしたか?

角田:特に大きく変わらないです。タイヤが重くなった分、ブレーキのパワーが落ちたようにも感じるけれど、ハイスピードでの動きがシャープになったような気がします。

──ホイールが大きくなる一方でブレーキディスクは変わらないので、足で対応する必要になるという話がありましたが、サスペンションなどのセッティングを変える必要はありましたか?

角田:たぶん変えていたと思いますが、どう変えていたのかはわかりません。3日間のなかで本当にいろいろなテストをしたので、チームに良い情報を提供できたかなと思います。

──チームとのコミュニケーションは?

角田:すごく良かったし、テストの時も深めることができました。

──2020年の目標は?

角田:チャンピオンが目標です。スーパーライセンスを取得するためにも、最低限ランキング4位に入賞したいなと思っています。

カーリンのピットの様子。7号車が角田裕毅、8号車がユアン・ダルバラ
角田裕毅(カーリン)
角田裕毅(カーリン)

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