【金属バットは“お風呂”好き!?強くて長持ちの秘密】

高校球児たちの相棒「金属バット」はどのように作られるのか?日本にたった2社しかない硬式用金属バットの工場に潜入。強くて長持ちの秘密は“5大風呂”にあった!

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■国内にたった2社しかない「金属バット」工場

甲子園球場に響く打球音、湧き上がる歓声、ユニホームを真っ黒にしてプレーする“ひたむきさ”にしびれてしまう。そんな高校野球に欠かせない道具といえば、球児たちの相棒「金属バット」。強くて長持ちする金属バットはどのように作られるのか?

硬式用の金属バットを作る工場は今や全国にたった2社。その1つが、岐阜県恵那市にある。木曽川沿いに立つ「UACJ金属加工」だ。

■くびれた美ボディに!シェイプアップの虎の穴

バットの材料はアルミのパイプ。でも見た目はちょっと寸胴で、手で握る部分がまだ随分と太い。

これを細くするというマシンが、けたたましい音を立てて待ち構えていた。真ん中の穴にパイプを差し込む。

すると回転する金型がパイプを叩きながら伸ばしていくのだ。シェイプアップに試練が必要なのは人間と同じ。耐え抜いたパイプは先っぽから手元にかけて見事な“くびれ”ができていた。

細くなった部分の根元に取り付けるのが「グリップエンド」と呼ばれる部品。

肉厚の“シイタケ”のような形に加工すると、熟練職人が波模様を描くように溶接していく。

グリップエンドは重さによってバットの重心を変える役割がある。飾りじゃないのだ。

■ボディを鍛える“砂風呂&水風呂”

ボールが金属バットに当たる時の衝撃はおよそ1トンといわれる。数えきれないほどの衝撃を受けるのになぜ丈夫なのか?秘密は“お風呂”にある。

グリップエンドの溶接を終えた金属バットが黄色い檻の中へ。すると猛獣ならぬアームロボットが金属バットを吊り上げ“なぞの穴”へと押し込んでいく。

中は荒れ狂う砂嵐のよう。これはアルミの細かい粒で、しかもあっつ熱。この粒がバットに熱を加えていく。まるで「砂風呂」だ。しばらく入浴すると今度は「水風呂」へと移される。熱した後、急速に冷やすことで金属バットは鍛えられ強度が増すのだ。これを「焼き入れ」といい、刀の作り方と同じである。

急速に冷やすと真っ直ぐだったボディは歪む。それを職人が圧力を加えながら直していくのだ。さらに一晩、大窯で熱を加えると安定した硬さになるという。「焼き戻し」と呼ばれる作業で、このひと手間が長持ちの秘密でもある。

■“高温風呂”で体を拭く手間いらず!

研磨ベルトでバットをピカピカに磨き上げると、3回目の入浴タイム。今度は「高温風呂」にドボン。

削りくずを洗い流すだけかと思いきや、この入浴に工場の知恵が隠されていた。風呂上がりの金属バットの表面を見ると、みるみるうちに乾いていく!

アルミは熱伝導に優れているため、お湯に浸かっただけで熱を持つ。この熱が水分を素早く飛ばすのだ。これなら濡れたボディを拭き取る手間いらず。作業効率が格段に上がる。

 ■弁当箱の技術を受け継ぐ“電気風呂”

「砂風呂」「水風呂」「高温風呂」に続く入浴タイムはなんと「電気風呂」。浴槽の壁に電極が付いている。

電気が金属バットに流れると特殊な溶液が化学変化し、表面に“薄い膜”を張る。これを「表面処理」といい、バットに傷がつきにくくなる。元々はアルミ製の“弁当箱”から生まれた技術だという。

かつてアルミ製の弁当箱は酸に弱く、日の丸弁当の“梅干し”でふたが溶けることもあったという。この“梅干し”事件が表面処理の技術を生み出し、金属バットに受け継がれているのだ。

■色が落ちない!?魔法の“薬草風呂”

金属バットには、素材のアルミを生かしたシルバーの他にいろんな色がある。織物ではない金属のアルミをどうやって染めるのか?

5回目の入浴タイムは染料が入った「薬草風呂」。じっくり浸かった金属バットを吊り上げると、なんとグリップエンドから先っぽまで全身真っ黒に!しかも色は半永久的に落ちないという。

「表面処理でできた膜はデコボコになっていてそこに染料が入り込みます。すると膜がふた代わりになり染料を閉じ込めるんですよ。」(UACJ金属加工)

 こうして生まれる恵那産の金属バットは年間およそ3万本。

スーパー銭湯のような多彩な“お風呂”を持つ工場が、甲子園の感動シーンに一役買っているのだ。

2020年7月4日(土) 15:59までGyao!にて動画配信中

                        【工場fan編集局】