齋藤飛鳥が「私と一緒だ」と共感した、浅草氏の考え方──「映像研には手を出すな!」齋藤飛鳥×山下美月×梅澤美波インタビュー

齋藤飛鳥が「私と一緒だ」と共感した、浅草氏の考え方──「映像研には手を出すな!」齋藤飛鳥×山下美月×梅澤美波インタビュー

4月からスタートした連続ドラマ「映像研には手を出すな!」(MBS/TBSドラマイズム)。大童澄瞳さんによる同名の漫画を原作とする本作は、“最強の世界”を夢見てアニメーション制作を志す3人の女子高生の姿を、独特な世界観とともに描き出す作品です。

2020年、伊藤沙莉さんが声優として主人公・浅草みどりを演じたアニメ版が話題となったことも記憶に新しい「映像研」。このたび実写版で浅草役を務める齋藤飛鳥さん、水崎ツバメ役を務める山下美月さん、金森さやか役を務める梅澤美波さんの3人にインタビュー。放送中のドラマ版、そしてさらに壮大なスケールで描かれる映画版の撮影を終えた3人に、「映像研」の世界についてお聞きしました。

■天才肌の浅草と水崎を“開放”できる、金森のすごさ

── 作品設定のアイデアを湯水のように生み出す、極度の人見知りの浅草、超お嬢さまでカリスマ読者モデルながら、アニメーターを目指している天真らんまんな水崎、アニメに興味はないものの、金儲けの嗅覚と持ち前のビジネスセンスでプロデューサー的立ち位置の金森。それぞれ役を演じる上で心掛けたことや、難しかったことはありますか?

梅澤「金森は、2人とはちょっと違った目線にいなきゃな、と意識していました。自分が金森役だからというのもあると思うんですけど、原作を読んだ時に、視聴者の方と近い目線でいた方が物語が分かりやすく進むのかなって感じたんです。2人は頭の中で描いているものはすごいし、アイデアもポンポン出てくる天才肌なんですけど、それを自分では生かしきれない。でも、金森と出会うことによってそれを開放できるんですよね。『2人を開放できる金森のすごさを、どういうふうに作ったらいいんだろう。難しいな』と思いながらも、視聴者の方が金森と同じ目線で見ることで面白くなるように心掛けて、撮影に挑んでいました」

山下「ツバメちゃんは、普通の人が言ったら嫌みに聞こえてしまうセリフも、ツバメちゃんなら許せてしまうような素直さがあるんです。傷つくようなことをズバッと言っても許せてしまうその真っすぐさを、お芝居として作り出すのがすごく難しかったです。私は、人をあんまり疑うことなく、仲間を信じて、いろんなことに真っすぐに取り組めるのがツバメちゃんのいいところだと思っていて。ズバッとものを言い切る時に、そのよさをどうすれば生かしていけるか、監督と話し合って頑張りました」

齋藤「浅草のキャラクターは明らかに自分の中にはないものなので、とにかく何か参考になる人がいないか探しました。当時はまだアニメも始まっていなかったので、子どもの動画を検索したり、街中を歩いている元気な小学生を観察したりして。浅草の子どもっぽい部分は、それが生きているような気がします。浅草のあの声の出し方も、最初は違和感しかなくて『これでいいのかな?』って思ってたんですけど、演じていくうちになじんじゃって。浅草の独特な言葉遣いも、普段から時々言っちゃうようになりました(笑)」

■「浅草もちゃんと現実を見るタイプなんだな、私と一緒だ」

── ご自身が演じたキャラクター、またはほかのキャラクターのセリフや考え方で、響いたものはありますか?

梅澤「ドラマと映画では言ってないんですけど、原作にある『仕事に責任を持つために金を受け取るんだ!』という金森のセリフがかっこいいなと思います。お金がすごく好きだけどそれだけじゃなくて、ちゃんとお金を生み出すことの意味や、そういう作業が好きなんだろうなっていうのが要所要所から見えてくるんです。だからきっと、人を動かすことも好きなんだろうな…って。金森は頭の回転が速いからただのお金好きなイメージが持たれやすいけど、現代を生きる私たちに響くセリフがたくさんあるなと感じました。『Twitterは遊びじゃねえんだよ!』とか、バシッと言うセリフで好きなものがたくさんあるんです。2人を決して見放さないし、人間が好きなんだなって思いました」

齋藤「私は今回の撮影でも言ったんですけど、中学生の浅草が、金森に勝手についていくシーンで『わしはついていくけど、きみは少し楽になるから、共生関係だ』って言うセリフです。この撮影をするにあたって、この3人の関係性ってすごく大事じゃないですか。でも、私は頼もしい相棒とか、自分の中で熱いものを持っていて何かを共有できる相手をうまく作ることができなかったように思うんです。だからどういう空気感を作ればいいのか分からなかったんですけど、この『共生関係だ』っていうセリフを聞いて『そういうことか!』って腑に落ちました。浅草が自分の口から『共生関係だ』って言ったことで、浅草もちゃんと現実を見るタイプなんだな、私と一緒だ、って共感したし、そういう考えでいいんだな、って。自然とそのセリフが入ってきたし、すごく好きなセリフです」

山下「『映像研』を撮影する中でめちゃめちゃ言っていて気持ち良かったセリフがあって、それは『結局ロボットアニメを作ってる人が一番信頼してるのは人間でしょ』です。これはロボットが完成して、そのロボットを立ち上げる時に言ったセリフなんですけど、すごく『映像研』らしさも、ツバメちゃんらしさも含まれてるなって思うんです。私は水崎ツバメの一番特化した力って“観察力”だなと思っていて。人見知りの浅草と、人に対して圧の強い金森という3人の中で、周りの人をめちゃめちゃ観察しているツバメちゃんの存在が大事なバランサーになっているなと。最初は対立しているロボ研がだんだん気持ちを開いていく瞬間が描かれるんですけど、ロボ研をめちゃくちゃ観察しているツバメちゃんがその熱さを受け取った時、『ひずみが中和したな』っていうのをお芝居する中で感じたんです。やっぱりツバメちゃんってすごい力を持ってるなって思ったし、ロボットが出来上がった時に言ったこのセリフに、ツバメちゃんのよさが表れてるなって感じたので、すごく好きなセリフです」

■「実写化するのは無理だ!」という声に対する決意

── ドラマ版の第1話から早速水に飛び込むシーンがあったりと、体当たりな演技も見どころかと思います。演じてみて、いかがでしたか?

山下「水に飛び込むシーンは、元々原作ではイチゴミルクをかけられるシーンなんです。実写化に対して『実写化したらどうなるの?』『こんな壮大な作品をリアルで再現するのは無理なんじゃないか』っていう声もたくさんあると思うんですけど、私は『原作と向き合いつつ、いい意味で裏切る』という気持ちもすごく大事だなと思っていて。第1話から水に飛び込むというのは、そんな声に対するチャレンジだなって思うんです。自分としても水に飛び込むことへの恐怖はあったし、気持ちの作り方が難しかったりしたんですけど、『こんな原作を実写化するのは無理だ!』っていう声に対してチャレンジしていく気持ちをそのシーンにぶつけることができたので、そのシーンが第1話にあるっていうのは大きいことだなって思っています」

齋藤「私たちは飛び込んでないもんね…(笑)。何言おうかな?」

梅澤「そうですね(笑)。私は、結構精神的なダメージがありました。というのも『初めまして』状態で人をたたかないといけなくて、お芝居と分かっていながらも『本当にすみません…』みたいな気持ちもあって。『すみません、たたきます。ごめんなさい』みたいなやりとりをしながら撮影したんですけど、だんだんできるようになっていったので、最終的に度胸はついたのかなって思います」

齋藤「浅草としては、そんなに体当たりなことは…(笑)。よく飛んだなーって(笑)。ワイヤーで空を飛んだんですけど、自分たちのライブで一度飛んだことがあったので、そんないつらいとか大変と思うこともなく(笑)。むしろ楽しんでいたので、そんなに『キツかったー!』ってことはないですね。うれしかったのは、ドラマ版の序盤で、つるされて高いところに上がってグラグラするシーンがあったんですけど、たぶんそんなに激しくグラグラしなくても、きっと撮る方がうまく撮ってくださると思うんです。撮影ではアクションの方が実際に手で揺らしてくださるんですけど、私が結構身を委ねていたので『飛鳥ちゃんが身を委ねてくれるから、楽しくなっちゃったよ~』ってすごく思い切り揺らしてくれて(笑)。その方が結構厳しくアクションを指導する方だったので、そう言っていただけたことがすごくうれしかったです。『どんどん揺らしてください』ってお願いしました(笑)」

■「映像研」によって見つけた、それぞれの新しい一面

── 最後に、普段は乃木坂46として共に過ごす時間も長いかと思いますが、「映像研」によって見つけた新しい一面があれば教えてください。

山下「私は、2人の白目を初めて見ました(笑)。普段は乃木坂46の中ではクールめな2人で、そんなに表情を崩さないんですけど、『映像研』の中では躊躇なく白目になっていて。こんな一面もあるんだな、普段も見たいなって思いました(笑)」

梅澤「私は、2人ともすごくノリがいいなって思いました。飛鳥さんとは、この撮影からより話すようになったんです。お互いすごく人見知りだし、これまであまり話したことがなくて」

齋藤「(ないない、と首を振る)」

梅澤「話してみると、『映像研』のテンションだからかめちゃくちゃふざけるし、すごくかわいいことをしてくれるムービーを撮っていたり。それはファンの方にお見せできないんですけど(笑)。やま(山下)もすごくノリがいいので3人でよくふざけたり、わちゃわちゃした現場でした。この3人が集まってそういう雰囲気になるとは思わなかったので、そこが意外だったなって思います」

齋藤「私は、うーん…。やまは…(じっと顔を見つめて)。結構そのまんまっていうか」

山下「本当ですか!? えー?(笑)」

齋藤「カリスマモデルの役だし」

山下「いやいや…」

齋藤「本人もカリスマなので…」

山下「バカにしてます?(笑)」

齋藤「カリスマだなぁ…と。お嬢さまだし(笑)」

山下「も~(笑)」

齋藤「ふふふ(笑)。やま本人が真面目だし、お嬢さまの役だから、もっとお嬢さまっぽい振る舞いをするのかなって思ってたら、やまが考える水崎ツバメちゃんをちゃんと作ってきていて。そのツバメちゃんは結構がに股だったりして、『あ、ツバメちゃんってがに股タイプだったんだ(笑)』っていう発見もありました(笑)。細かいところもちゃんと作ってきてるなって。うめ(梅澤)は…(梅澤さんの肩に触れて、しばらく考えて)。私にとっては意外じゃなかったんですけど、結構ボケてるなって(笑)。世間的には真面目なイメージがあると思うので、そういう部分をどんどん出してほしいなって思います」

【プロフィール】


齋藤飛鳥(さいとう あすか)
1998年8月10日生まれ。東京都出身。しし座。O型。乃木坂46の1期生オーデイションに合格し、2012年に「ぐるぐるカーテン」でCDデビュー。主な出演作は、映画「あの頃、君を追いかけた」、ドラマ「初森ベマーズ」(テレビ東京ほか)、「ザンビ」(日本テレビほか)、舞台「あさひなぐ」など。雑誌「sweet」(宝島社)のレギュラーモデルとしても活躍中。

山下美月(やました みづき)
1999年7月26日生まれ。東京都出身。しし座。O型。乃木坂46の3期生オーデイションに合格し、2018年に「シンクロニシティ」で初の選抜入りを果たす。主な出演作は、映画「日日是好日」、ドラマ「神酒クリニックで乾杯を」(BSテレ東)、「ザンビ」(日本テレビほか)、「電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-」(テレビ東京ほか)、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」など。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルとしても活躍中。

梅澤美波(うめざわ みなみ)
1999年1月6日生まれ。神奈川県出身。やぎ座。A型。乃木坂46の3期生オーデイションに合格し、2018年に「ジコチューで行こう!」で初の選抜入りを果たす。主な出演作は、ドラマ「ザンビ」(日本テレビほか)、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」、舞台「七つの大罪 The STAGE」など。雑誌「with」(講談社)の専属モデルとしても活躍中。

【作品情報】


ドラマ「映像研には手を出すな!」
MBS 日曜 深夜0:50~1:20
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
※放送時間は変更の場合あり。

映画「映像研には手を出すな!」
近日公開予定

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当)

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