Withコロナ時代だからこそ創造的に学べ 足りないのは自ら学びたいと思える環境

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で学校の休校が続く中、さまざまな企業や団体が自社の教材を無償で提供していますが、本当に必要なのは、子どもが「自ら学びたい」と思えるような環境ではないでしょうか。

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足りないのは「自ら学びたい」と思えるような環境

世界全体で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その影響は凄まじく、私たちの生活を一変させてしまいました。首都圏では緊急事態宣言に伴い、学校の休校措置が延長され、オンラインで授業するという、これまでの学校文化からは到底考えられなかったことが現実になってしまいました。

SNS上では、「学びを止めない」が合言葉的に使われ、子どもたちのために、さまざまな企業や団体が自社の教材を無償で提供しています。このムーブメントはすばらしいものだと思いますし、ドンドン活用していくべきです。しかし根本的な部分、つまり子どもたちの「学び方」をどうするか、ということへの配慮が忘れ去られているような気がしてなりません。

公開されている教材を自分で活用できる子どもや家庭は、自分たちの力だけでやっていけるでしょう。しかし公教育は、そうではない環境にいる子どもたちのことまで考える必要があります。学校はしばしば、すべての子どもたちを均一的に教育する場として批判的に語られますが、見方を変えれば、ある種のセーフティーネットとしての役割を担っていることがわかります。”学校に行きさえ”すれば、どのような環境の子どもたちであろうと学べるということです。

現在急ピッチで進んでいるオンライン授業のもつ課題は、家庭の環境によって、子どもの学びに大きな違いが生まれてしまうことです。仮に各自治体や学校が、子どもたち1人ひとりにタブレットと家庭でのインターネット環境を補助したとしても、1人で進めていける子どもたちばかりではありません。現在想定されているような動画授業やドリル学習などでは、「やらされてる感」を拭うことはできません。今必要なことは、子どもたち自身が、自ら学びたいと思えるような学習内容を提供することです。

乗り越えるためのヒントは「創造的な学び」にあり

私は、本連載で繰り返し紹介している「創造的な学び」こそが、この問題を乗り越えるためのヒントになるのではと考えています。創造的な学びとは Scratch 開発チームを率いるミッチェル・レズニック教授が提唱している、モノをつくりながらいろいろな知識を獲得していく学び方です。

レズニック教授は、創造的な学びに必要な要素を4つ挙げています。

  • Project / プロジェクト:自分が取り組むこと
  • Passion / 情熱:プロジェクトに対する情熱
  • Peers / 仲間:分かち合う仲間たち
  • Play / プレイ:遊び心

重要なことはこの Project が、子どもたちの中から出てくるか、という点です。もし仮に教師から与えられた Project に取り組むとなると、Passion が沸かない子どもたちのほうが多いのではないでしょうか。

そこで登場するのが「プログラミングを通した学び」です。一度でも子どもたちがプログラミングをしている様子を見たことがある方ならわかると思いますが、彼らは驚くほど集中し、学ぶことを楽しんでいます。

子どもたちはものをつくることによって多くのことを学びます。たとえば、Scratchを使ってマリオのような横スクロールゲームをつくりたい子は、自然に座標の概念を理解します。ボールの軌道をリアルに表現したい子どもは三角関数を使いこなしますし、自分のプロジェクトにオリジナルの音楽をつけたい子は自然に作曲の基本を学びます。

私たちは、「勉強 = 苦労すること」と捉えがちですが、本来学びとは楽しく、能動的かつ創造的な営みのはずです。そして、4つのPは、子どもたちが学びを取り戻すためのキーワードなのだと思います。

《column》

漢字の語源をひもとくと、「勉強」とは「勉めて強いる」。つまり、大変なことや気が乗らないことを無理やりすることという意味になります。勉強という言葉が日本で使われるようになったのは、明治以降になってからです。苦労することが美化されるような風潮から、勉強することは偉いことだという価値観が生まれたとする説もあります。本連載では、意識的に「勉強」と「学び」を使い分けています。「ゲーム」は勉強とは言われませんが、学びにはつながるのです。このニュアンスの違いをわかってもらえると嬉しいです。

学校がない今はチャンス

私は、このような学びが学校で達成することが難しいのは、限られた授業時数と評価の2つが原因だと考えています。

子どもたちが学校で学習する教科の時間数は基本的には決められています。また、小学校の場合は1単位時間あたり45分です。教師はこの限られた時間の中で決められたことを教えようとし、子どもは限られた時間で理解することを求められ、できるできないによって評価されます。しかし、全員が同じ時間で同じ内容を理解できるようにはなりません。子どもの特性によって得意・不得意は当然あるでしょう。また、評価の結果によっては可能性を潰しかねません。

だからこそ、学校がない今はチャンスなのです。教科の内容や時間にとらわれず、自分のペースで学びたいと思ったことをひたすら学ぶ。創造的に学ぶ姿勢を身に着けましょう。保護者をはじめとする大人の皆さんには、子どもたちにぜひプログラミングを紹介してほしいです。プログラミングは創造的な学びの第一歩になるでしょう。

私はこの休校期間中に多くの子どもたちとオンラインでプログラミングを教えています。(教えると言っても、基本的には音声をつなぎっぱなしにして、たまに質問に答える程度ですが)彼らは、平日もプログラミング(=自らのプロジェクト)に情熱的かつ遊ぶように取り組んでいます。そして1週間ぶりに会った私たちに、嬉々とした表情でつくったものを教えてくれます。

今、私たちにできることは、Peersとしての役割を果たすこと、あるいは仲間同士のコミュニケーションの場を用意してあげることだと思います。

こんなときだからこそCreative Learnerであれ

2020年4月。小学校では新しくなった学習指導要領が全面実施され、アクティブ・ラーニングや外国語、道徳やプログラミングなどが取り入れられた新しい教育がスタートするはずでした。しかし、現実はそう甘くはありませんでした。これからの教育や社会はどうなっていくのでしょう。

刻一刻と変わる状況に対応して、問題を解決していくのが創造的学習者 Creative Learner です。ひょっとしたら、今プログラミングを学んでいる子どもたちが、これからの世界を救うなにかをつくるかもしれません。まずは家で、プログラミングでもして過ごしてみてはいかがでしょう。

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