古舘伊知郎と周防正行監督“個性”に言及…周防「自分が好きなことをやっていれば、自ずと人の個性は出る」

©ジグノシステムジャパン株式会社

禁酒法の時代に、こっそり営業していたBAR「SPEAKEASY」。2020年の東京の街にも、そんなひそかなBARがありました。月曜から木曜の深夜1時にオープンする“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。

4月9日(木)のお客様は、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さん、映画監督の周防正行さんです。今回はリモートでの対談となりました。

(左から)古舘伊知郎さん、周防正行さん

◆言葉は人柄であり、その人が生きてきた歴史(周防)
周防:自分でシナリオを書いているときに、セリフを書くわけじゃないですか。で、オーディションとかでいろんな人に読んでもらいますよね。「なんでこんなにつまんないセリフを書いちゃったんだろう」って思いながら聞いていて、違う役者が読んだ瞬間に「へー、すっげーいいセリフ書いた」とか思うんですよ。

古舘:やっぱり周防さんの方がオーディションを受けている感じもある?

周防:ありますよ。さっきね、古舘さんが自分の声を客観的に聞かないとダメだって言ってたけど、自分でシナリオを書いて読んでるんですよ。ちゃんと自分の頭のなかで。だからそれを第三者の人が言った瞬間に「えっ違う」っていう、そういう感覚はあるし、まったく自分で自信のなかったセリフが、ある人が読むことによって「おっ、いける」って思ったりもする。自分1人が自分の心のなかで聞いてるものと、まったく違う人間が喋ったときと、やっぱり違うセリフになるんだなっていうのはいつも思いますね。

古舘:でも、言葉を発するっていうことの表現っていうのは、どんな表現手段もそうだろうけど、奥行きがありますね、やっぱりね。

周防:ええ。喋っている言葉って、テクニックじゃなくてやっぱり人柄というか、その人の生きてきた歴史も絶対に重なっちゃうじゃないですか。どう考えて、どんな風に生きてきたのかっていうことが、その人の喋り方に全部出ちゃう。

だからよくね、その人の積み重ねた歴史ってやっぱり顔に出るように、それは言葉にも出るんだろうし。その人がどう生きてきたのかっていうのは絶対に全部出ちゃうんですよね。

古舘:言葉って基本的にありもんの組み合わせじゃない。

周防:ええ。

古舘:メロディーラインを紡ぐのと似ているように、もともと音があってそれをどう紡ぐかっていうことで。言葉は全部ありものだから、不思議な気持ちになることがあるのは、「これは俺が喋っているんじゃないな」っていうか、「言葉に喋らされてる」って言ったらキザになるかもしれないけど。

全部ありものの言葉を喋ってるってことは、俺の後ろに見えないご先祖様が連なっていて、その人達が作り上げてきた言葉を組み合わせて、変えて喋っているだけなので、基本的には後ろにものすごく長い人生を繋げながら喋っているんだと。そう思うと、自分が喋ってるんじゃないような気になるんですよね。何ですかね、やっぱりそれは自分のオリジナルなんてないんですかね? 何だろう。

周防:オリジナルというものを、どう解釈するかっていう。映画を勉強し始めた頃に、自分が映像の表現で何か出来ることなんてほとんどないだろうなっていうのはすぐに分かりました。もうやり尽くされていて。でも、そのやり尽くされているもののなかから、自分の好みであったり、それぞれ表現したいものに合わせてセレクトしているって感じは今でもずっとあるし。

古舘:あ、今でもある?

周防:ありますよ。「オリジナルなんてないよな」っていうのはありますよ。

古舘:いやーいいな、何か気が合うな。いや俺、周防さんが異性だったら良かったのに。何かやっぱりオリジナルなんかないっていうところで、模倣から始まる的じゃないと、何かいい物って出来ないっすよね。

周防:うん。だから最近の若い人は、もう生まれたときから映像に囲まれてるから、やっぱりすごく面白いセンスある子たちがたくさんいるんだけど、昔の映画は観てないって言うんですよね。

古舘:はー、そうか。

周防:昔の映画は観た方がいいよって思っていて。

古舘:そうだよね。そうするとね、奥行きね。ずっと過去、現在、未来が繋がってくるからね。

◆自然に出ちゃうのが個性だから(周防)
古舘:周防さんの映画作りって「俺のやれることなんか何もねー」から始まるっつーのがかっこいいなと思ったんだけど、相撲をやったりダンスをやったりね、痴漢冤罪をやったり、終末医療をやったり、弁士やったり、もう舞妓さんやったり、むちゃむちゃだと思うんです、ジャンルが。

周防:ええ、そうですね。

古舘:もう支離滅裂ですよ。

周防:はいはい(笑)。

古舘:それが全部周防作品って、星座のように点灯していくっていうのは、1つひとつ面白いと思ったことに対して(周防さんが)正直にあるだけなの。

周防:そうですよ。本当に全部興味を持ってやっているだけで。よく昔、個性を大事にしろとか、個性を出せみたいなことを言わて、無理して人と違うことをやろうとしたんですね。でもね、個性って出そうと思って出るものじゃないんだって気がついた。「自然に出ちゃうのが個性だから、個性的であろうなんて思う必要はないんだ」っていうのに気づいた瞬間に、すごく楽になったんですよね。

古舘:はー。

周防:だって何をやったって、結局俺の作ったものになっちゃうんだっていう。それって何かを出そうと思ってやってるんじゃないんですよ。

古舘:個性なんか意識しても自然と出てくるものじゃなくて、しゃっくりみたいなもんだよ。なんか図らずも、ふわっと出ちゃって結果としてそれが個性かな? ぐらい。

周防:もっと個性的な生き方をしろとか、何か言うような人がいるけど、そんなもん分からないよ。だって自分が好きなことをやっていれば、そこに自ずとその人の個性は出るに決まっているので、そんな個性を出そうなんて思わなくていいんだ。

古舘:そう。じゃあ「それでもボクはやってない」って映画で、個性を出そうと思い過ぎたら誰も理解してくれないですよね。ある程度一般に分かるって共通言語があるってことは、そういうことなのかもしれないね。

あともう1分もないですよ、これ。私の体内時計が叫んでます。やりづらい生放送でしたね、これ。

周防:いや、もっと楽しい話をいっぱいしたかったです。

古舘:ね、もっと本当に。でも「楽しかったです」って、最後に本音を漏らして締めに入ろうとしてる自分が客観的に嫌いなんですよ。もう本当に。

▶▶この日の放送内容を「JFN PARK」でチェック!

4月23日(木)のお客様は、古市憲寿さん、小倉智昭さんがご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!


スマホアプリ「JFN PARK」では、スペシャル音声も配信中!
★ダウンロードはこちら→/http://www.jfn.co.jp/park

また、無料スマホアプリ「WIZ RADIO」では、OA局をチョイスすることで、全国のFM局の番組が聴取可能です。
★ダウンロードはこちら→https://www.wizradio.jp/


<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/speakeasy/