新型コロナに海外の小学校はどう対応しているのか 瑞米芬比4カ国の教育事情

日本でも緊急事態宣言が出される中、海外は新型コロナウイルス感染の影響で、どのような事態になっているのでしょうか。小学校の教育現場に焦点を合わせて、実際に筆者の周りにいる知り合いに聞いたものをレポートします。

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海外の小学校教育事情はどうなっているのか

新型コロナウイルス感染の影響を受けて、ついに日本でも全都道府県に緊急事態宣言が出されました。小学校の休校も続々と決まってきております。休校の時期には賛否両論がありました。そして休校中の授業の実施方法は今も議論が進められています。世界各国の小学校ではどのような対応がとられているのでしょうか。

少しでも参考になればと思い、筆者が過去に訪れた小学校の先生や、現地に住む知人など、さまざまな人から集めた情報をもとに最新の世界の情報をまとめました。

<注意>少しでも正しい情報を得るために現地の人にヒアリングをしましたが、新型コロナウイルス感染をめぐる対応は、同じ国の中でも地域や自治体によって大きく異なります。また一週単位で対応が変わることもあります。あくまでも「4月中旬時点での、その国のある地域に住む、ある人の情報」に基づいた情報をまとめています。「その国ではすべてこのように行われている」というわけではありませんので、その点はご了承ください。また、この記事は4月18日に執筆しています。

スイスの新型コロナウイルス感染と学校の状況

スイス連邦公衆衛生局による情報サイン「コロナウイルスから身を守る方法」
  • 人口,約860万人
  • 新型コロナウイルス感染者数,26,996人(4/18現在)
  • 1万人あたりの感染者数,31.6人(世界 4位)
  • ヒアリングした人,スイスの小学校で働く日本人
  • ヒアリングした人の住む地域,バーゼル

学校の運営とその間の授業

3月17日から小学校の登校は停止に。当初は4月19日までの予定でしたが、感染拡大の影響を受けて5月11日まで延長が決まりました。

4月4日からの2週間はイースター休暇でした。休暇前に課題をメールで出して、児童も課題をメールで送り返します。まさに、来週(4月20日の週)からオンラインでの授業をはじめたいという方針はあるそうですが、障壁も多く確定ではないようです。先生によってはメールやオンライン電話、ときに郵送も使いつつ、できることから随時授業を行っているそうです。

現在の課題

スイスでは、とくに田舎の地域において、パソコンは一家に一台というところが多いとのこと。両親が在宅勤務でパソコンを使っている場合は、子どもがオンラインで授業を受けるのが難しいという課題があるようです。

アメリカ合衆国の新型コロナウイルス感染と学校の状況

  • 人口,約3億2820万人
  • 新型コロナウイルス感染者数,694,255人(4/18現在)
  • 1万人あたりの感染者数,21.1人(世界 8位)
  • ヒアリングした人,教育事業を営んでいるアメリカ人
  • ヒアリングした人の住む地域,ロサンゼルス(カリフォルニア州)

学校の運営とその間の授業

アメリカでは、公立と私立で対応が大きく異なるとのこと。

公立

夏休みが明ける8月末までは、登校停止の予定。4月13日よりオンラインでの授業は実施されていますが、授業らしい授業はされていないことも。授業の最初に課題が出されて、質問があればそれに先生が答えるというスタイル。通信機器がない場合は、学校から貸し出されるケースもあります。

(子どもが通っている)私立

外出禁止令が出ている5/15までは、登校停止。体育の授業以外はすべてzoomでオンライン授業が行われ、Google classroomで宿題を提出しています。

現在の課題

総じて言えることは、環境の整っている私立学校は上手に適応していますが、公立学校は親まかせになっていることが多いようです。またセキュリティの問題から、NY州では学校教育でのzoomの使用が規制されました。アメリカは州ごとに法律も異なるので、ロサンゼルスでは規制はされていないようですが、今後どのように遠隔での授業が行われていくかは注目です。

フィンランドの新型コロナウイルス感染と学校の状況

このオンライン授業は、小学校ではなく高校での授業の様子
  • 人口,約550万人
  • 新型コロナウイルス感染者数,3,681人(4/18現在)
  • 1万人あたりの感染者数,6.7人
  • ヒアリングした人,2月までフィンランドで高校教師をしていた日本人
  • ヒアリングした人の住む地域,ビエルマ(フィンランド中部の田舎街)

学校の運営とその間の授業

学校は登校停止ですが、「What's up」「zoom」「Google classroom」などを活用して、オンラインで授業しています。

基本的には、全科目授業をしています。延々と先生が話し続けるわけではなく、はじめにレクチャーをしてその後は各自が課題に取り組む形式がメインです。実技科目であっても、美術であれば「家にあるもので、なにかをつくる」体育であれば、「スキーやハイキングをする」などなど、工夫を凝らしています。家に保護者がいることが多いので、保護者のサポートも借りているようです。

フィンランドでは、もともとiPadのようなデジタルデバイス環境が充実しており、こちらの小学校では全生徒が1人1台の端末をもっていたため、その端末を使用して授業を受けています。

現在の課題

もともとフィンランドでは、ICTデバイスの活用に力を入れていたため、世界最高水準のオンライン教育の環境が整っています。しかしそれでも、今までオフラインでやってきた授業をオンラインに移行することは並大抵のことではなく、先生方はこの期間とても忙しいそうです。zoomをめぐるセキュリティ問題にしても「zoom使用時に個人情報は書かないようにする」といったようなルールをつくりながら、うまくテクノロジーも活用しているようです。

フィリピンの新型コロナウイルス感染と学校の状況

店の外で距離を空けて並ぶ国民
  • 人口,約1億670万人
  • 新型コロナウイルス感染者数,6,087人(4/18現在)
  • 1万人あたりの感染者数,0.57人
  • ヒアリングした人,公立小学校教員の弟をもつフィリピン人
  • ヒアリングした人の住む地域,セブ島

学校の運営とその間の授業

フィリピンでは、3月中旬から小学校の休校が現在も続いています。インターネット環境や通信デバイスが整っていないため、オンラインでの授業は行われておりません。学校の再開の時期については、教育省が計画を考えています。6月下旬あたりからできるか、はたまた7、8月ぐらいになるのか。コロナウイルスの拡大次第で左右されるので今のところは確定していません。

現在の課題

オンライン環境が整っていないという教育面の課題以外にも、フィリピンにはさまざまな課題があります。失業者の補償も、他の先進国ほど充実していないそうです。また、一部の都会では医療設備は整っていますが、田舎や離島となると、医療設備がまだ整っていない地域もあります。

一人一人ができることを考えよう

いかがでしたか。日本の政策は、後手後手に回っていると批判されているニュースをよく見かけます。たしかに改善の余地はあるかもしれません。しかし世界を見渡しても、このような非常事態に非の打ちどころのない、完全無欠な政策をとっている国はほとんどないでしょう。

批判的思考も大切ですが、まずはいろいろな情報を知り、一人一人ができることを考えて、協力しながら行動に移していく。今こそそのような心構えが必要になると、私は考えています。日本だけでなく、世界中の人が知恵を絞って、この状況をどうサバイブするのか、今日も考えて動き続けています。

【参考文献】外務省海外安全ホームページ

各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況

外務省 海外安全ホームページ

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