不可解

 一昨日の記事を読み返してみた。〈…3月13日に乗組員の乗下船自粛を要請し、その後、乗下船はないという〉〈…社員は今月14日にせきや発熱の症状があり…〉-この記事、額面通りに受け取っていいのか、と感じた読者もおられたかもしれない▲記事の通りならば、3月の半ばから外部との行き来が閉じられていたはずの船内である。一方で、ウイルスの潜伏期間は「2週間程度」と理解されている。考えてみれば発症までの計算が合いにくい▲修繕などのため長崎港の造船所に停泊していたクルーズ船で、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したことが22日、明らかにされた。併せて説明が修正されたのは、当初「なかった」とされた乗組員の乗下船▲その後の聞き取りで乗組員の交代や外出が分かった、という。だが、造船所にはゲートがあり、守衛さんもいる。説明はどうにも不可解だ。記者会見に同席していた中村法道知事も不快感を隠さなかった-ように見えた▲見えない敵を地域社会の皆が正しく恐れ、正しく身構えなければならない時だ。そのためには、必要な情報が正しく、迅速に提供されなければならない。改めて言うまでもないだろう▲批判が怖くて隠したわけではあるまい…と信じつつ、昨日よりも念入りに手を洗う。(智)

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