【新型コロナ】「他に行く所が…」 大型施設休業で商店街混雑、対応に苦慮

買い物客でにぎわうモトスミ・ブレーメン通り商店街=22日午後、川崎市中原区

 新型コロナウイルスの感染防止に向け接触機会の減少が求められる中、県内の商店街が対応に苦慮している。緊急事態宣言に伴う外出自粛の要請以降、週末を中心に予想外の混雑ぶりとなっているためだ。「他に行く所がないのでしょう」と商店街関係者は困惑し、「買い物は必要最低限の人数で」と訴える。

 東急東横線元住吉駅からほど近いモトスミ・ブレーメン通り商店街(川崎市中原区)。約550メートルの目抜き通りを中心に約180店が軒を連ねる。近隣住民からは「何でもそろう」と評判で、平時でも市内屈指のにぎわいを見せる。

 同商店街振興組合によると、外出自粛が幅広く呼び掛けられて以降、週末を中心に買い物客が増加。好天に恵まれた19日も、通りが人波であふれる時間帯があった。

 緊急事態宣言を受け、隣接する武蔵小杉駅(同区)や日吉駅(横浜市港北区)の大型商業施設は休業が続いており、組合の伊藤博理事長(77)は「人が流れてきている」と分析する。家族連れの姿も目立ち、果物店の女性従業員は「ほかに行くところもなく人が集まったのでは」と推測する。

 各店舗は独自にウイルス対策を実施。この果物店も閉店を2時間前倒しした上で、営業中は必ずマスクを着用しているという。女性は「感染が不安なので、現金の受け渡し後は手洗いを徹底している」と明かす。

 いつも買い物に訪れる地元の50代の主婦も「人が密集していて心配になる」と不安視。伊藤理事長も「元住吉は繁華街ではなく、周辺の人が買い物をする生活の街」と困惑を隠せず、「(外出自粛中で)家族連れで来たいのは分かるが、買い物は必要最低限でお願いしたい」と呼び掛ける。

 青果店や鮮魚店を中心に約70店が並ぶ横浜市内の商店街でも23日昼、高齢者や主婦らを中心に買い物客が絶えず行き交っていた。

 商店街の振興組合の男性理事長(52)は密集の状態が発生している現状については「危機感がある」と表情を曇らせながらも、人出が減っていない商店街に対して世間から厳しい目が向き始めたことに首をかしげ、「生鮮食品店が多く、生活に必要不可欠な買い物で来た近所の住民が大半」と理解を求める。

 数日前からは、買い物客同士が距離を取るように促すアナウンスを放送し始めた。さらに混雑が生じた場合は、商店街に入場制限をかけることも個人的に考えたというが、「入り口付近に人があふれ、別の危険が生じる可能性がある」と実施の可能性は低いという。

 対応は店によってまちまちで、ある鮮魚店では店頭にアルコール消毒液を置き、スーパーのように客と従業員を仕切るビニールシートも設置していた。男性従業員(45)は「ゴールデンウイークは例年、非常に混雑するので」と今後に警戒する。一方で青果店の男性店主(60)は「スーパーと違って密閉空間でないし、商品も基本的に従業員しか触れない。客の滞在時間も短い」とマスク以外は特別な対策はしていないという。

 来店客からは「スーパーは、いろんな人が商品を触っていて怖いから商店街に来ている」(60代男性)「滞在時間を30分と決めている」(50代女性)「必要なものだけ買って、混んでいる店には入らない」(60代男性)などと、自衛策として商店街を選んでいる声が多く聞かれた。

© 株式会社神奈川新聞社