中日ブルペン捕手たちが明かす「凄い球」 直球、変化球…説得力ある言葉の数々

左からブルペン捕手の三輪敬司さん、前田章宏さん、赤田龍一郎さん【画像提供:若狭敬一】

大野雄の真っすぐ、岡田のキレ、スピンの効いた柳など…

プロ野球の開幕が見えない。選手もファンも我慢の日々が続いている。そんな中、中日ドラゴンズ応援番組CBCテレビ「サンデードラゴンズ」ではいつもと違う角度から選手の魅力を伝える企画を放送している。4月5日のテーマは「ブルペン捕手に聞く! 中日投手陣の凄い球」だった。

取材に協力して頂いたのは中野栄一さん、三輪敬司さん、小川将俊さん、前田章宏さん、赤田龍一郎さん。未公開の部分も含めて、ここにその内容を紹介しよう。まずはストレートが凄い投手だ。

「(ライデル)マルティネス。とにかく速い」と中野BC。三輪BCも「マルティネスかな」と名前を挙げた。2017年に育成選手としてキューバから入団し、着実に成長を遂げている最速158キロ右腕の評価は高い。ただ、日本人も負けてはいない。

「やはり大野(雄大)はいい真っ直ぐを投げますよ」と三輪BC。小川BCは「球速もあるし、パワーもあるけど、一番は角度。左ピッチャー特有の角度で右バッターのインサイドに来る球は速く感じます。テイクバックもコンパクトなので、突然、ビュンと出て来るイメージ。クロスファイヤーのボールは中々打てないんじゃないかと思って受けています」と最優秀防御率のタイトルホルダーに票が集まった。

山本、小笠原ら若手投手にも注目「下から伸びあがる軌道が特徴」

同じ左腕でも剛速球の印象がない投手を推す声も多かった。「岡田(俊哉)です。指にかかった時の球はスピードガン以上の迫力があります。とても質がいい。僕は好きですね」と前田BC。中野BCも「調子がいい時の岡田はキレ味抜群です」と口を揃えた。

去年、チーム最多の11勝をマークした柳裕也のストレートについて小川BCは「回転数が多く、スピンが効いていて、最後にひと伸びあります。低めが一瞬ボールに見えますが、そこから伸びる。ベース上での強さを感じますね」と賛辞を贈った。

若手も注目だ。赤田BCは「山本(拓実)です。腕を思い切り振ってキャッチャーに向かって来る。下から伸び上がる軌道が特徴です。小さい体を全部活かして投げています」と指摘。前田BCが梅津晃大の直球を「指にかかった時は球威もキレもある」と絶賛すれば、三輪BCは「変化球のイメージがあるかもしれませんが、岡野(祐一郎)の真っ直ぐはいいですよ。力強くてたくましい」と強調した。

次は変化球。最多得票は小笠原慎之介のカーブだった。「回転数が多いタイプのカーブ。ブレーキが効いています。バッターはどうしても目線が上がってしまうので、捉えにくいと思います」と前田BC。小笠原は「裏方さんに認めてもらうのは嬉しいです」と笑顔。「トラックマンの数字で見ても、僕のカーブはドロップ成分が多く、3000回転以上あるので、かなり独特です。感覚としては『抜く』ではなく『握りつぶす』って感じで投げています」と説明した。

スライダーは十人十色、ルーキー橋本のボールは「最初に捕った時にびっくりしました」

ほとんどの投手が持っているスライダーという球種は十人十色だ。「凄いのは梅津。かつての岩瀬(仁紀)さんは手元でベース1個分くらい大きく曲がりましたが、それに近いです。回転数が多く、グワッと曲がる。ブーメランって感じですね」と小川BC。中野BCは「絶好調の岡田のスライダーはめちゃめちゃキレる。ほぼフォーク。急激にガクンと落ちます」と分析。キレの良さでは祖父江大輔や柳のスライダーも高評価だった。赤田BCはルーキーに衝撃を受けた。「橋本(侑樹)は最初に捕った時にびっくりしました。投げた後に一回壁にぶつかっているような、ボンボンって感じで鋭く曲がる。投げ方も変わっているし、打ちにくいと思います」と舌を巻いた。

中野BCは笠原祥太郎のチェンジアップを称賛。「普通は投げた瞬間に一旦ふわっと上に浮くんです。ただ、笠原のチェンジアップは真っ直ぐと同じ軌道で来る。そこが一番の特徴。違いが分かりにくいんです」。違いの分かりにくさで言えば、「藤嶋健人のスプリットです」と赤田BC。「軌道だけでなく、球速が真っ直ぐとほぼ同じ。そして、最後にスッと落ちる。というか、消えるという表現ですね。落ち幅は大きくないですが、空振りが取れます」と力説した。前田BCは「又吉(克樹)のカットボールも途中まではストレート。最後にクッと曲がるから、見極めにくい」と加えた。

間近で見て、受けて、感じている彼らの言葉には説得力があった。「壁」と言われるほど、ひたすら投手のボールを受け続けるブルペン捕手。膝や腰を痛め、ミットに入れる左手は右手より分厚くなっている。「冬は血行障害になりますよ。特に人差し指は」と中野BC。まさに体を張って戦っている。

喜びと苦労を聞いた。「抑えてくれたら、嬉しいし、打たれたら、悲しいです」と三輪BC。前田BCは「去年まで2軍の担当でしたから、一緒にやっていた選手が1軍で活躍することが喜びでした。送り出す時は『このまま帰って来るなよ』という気持ち」と振り返る。赤田BCは「大変なこと? 選手が一番大変なので、僕にはないです」と笑った。

みんなで笑える日、凄い球を見られる日はいつ来るのか。明けない夜はない。そう信じて、球春を待ちたい。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋
大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会
社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。
<現在の担当番組>
テレビ「サンデードラゴンズ」毎週日曜12時54分~
「High FIVE!!」毎週土曜17時~
ラジオ「若狭敬一のスポ音」毎週土曜12時20分~
「ドラ魂キング」毎週金曜16時~

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