新世代ディフェンダー、高級SUVランドローバー“伝説の人気モデル”が2020年に復活

いまではイギリスを代表する高級SUV、ランドローバーですが、そのルーツである第1号車として1948年に登場したのが「シリーズ1」というクルマでした。その伝統を受け継ぎ、道なき道を走破する高い悪路走破性と個性的でワイルドなスタイルで人気となったのが1990年に登場した「ディフェンダー」です。残念ながら2015年12月、25年の歴史に幕を引きましたが、その車名を引き継ぐ“新世代ディフェンダー”の日本発売が始まりました。


ファッションアイテムとして注目

「ディフェンダー」という車名ですが、1983年に登場したランドローバー・110というモデルが、1990年に行ったマイナーチェンジの際に与えられたものです。ここまで言っただけで少々混乱している人もいると思いますし、少しばかりマニアックになりますので、これ以上は触れないでおきます。

それでも一般の人にとって、このディフェンダーという車名は、メルセデスのGクラス(ゲレンデヴァーゲン)と同じように、ファッションなどにこだわる人たちにとって注目のブランドでもありました。「あのカクカクしたスタイルがワイルドでカッコいい」という感想をファッション誌やライフスタイル誌の取材現場などで、よく耳にしたものです。

さらにキャンパーなどアウトドア派のユーザー達にとっては、一種の憧れのように捉えられている車でもあります。本格的な悪路走破性能という魅力もあるでしょうが、やはり個性的で独特の佇まいが人気の中心にあるのは確実です。

こうして熱狂的とも言える支持を受けていたのですが、さすがにランドローバー・110から数えて30年以上、ディフェンダーとなってからも25年の月日が流れ、色々な部分が時代にそぐわなくなり、生産は中止されました。ちなみに旧型の日本正規導入は製造中止になる10年前でした。

先頭を走るのは、いまだに高い人気を誇る先代ディフェンダー

このようなモデルの整理統合が起こることは理解していながらも、これほど力のあるブランドをなくすことに対して個人的に“なぜ?”という気持ちはずっと抱いてきました。人気モデルだけに、生産終了以降も専門ショップには一定のユーザーが集まり、オーナーズクラブの活動が盛んだったり、その注目度は色褪せることがありませんでした。現在の中古車相場を見ても298万円~1,150万円あたりということで、その人気ぶりがわかります。

愛くるしい顔だが結構大きい

昨年9月10日午前9時、フランクフルト・モーターショーで新型「ディフェンダー」のワールドプレミアが行われました。その模様は全世界に向けて生中継され、新型ディフェンダーが42度の傾斜を駆け下りるというダイナミックなパフォーマンスで会場に登場するという演出でした。その後、ラグビーワールドカップ2019日本大会で優勝杯を運んだのも、新型「ディフェンダー」のコンセプトモデルでした。

ラグビーW杯優勝トロフィー「ウェブ・エリス・カップ」を運んだ新型ディフェンダー

日本での一般公開は昨年11月に「代官山T-SITE」で行われ、「ローンチエディション」の受注が始まりました。ファッションの発信地として知られる代官山で公開されるということを考えても、今回のディフェンダーがファッションアイテムとしても訴求していきたいというポジションが見えてきます。ちなみにローンチエディションはイベント開始から4日で、150台の上限台数を受注しました。さらに昨年11月18日には先行予約モデル第2弾として、「スタートアップエディション」を発表しました。

そしていよいよ今年4月9日から通常モデルと、日本限定仕様車が発表されました。新型コロナ渦がなければ、かなり華々しい日本登場となり、大きな話題となったはずです。では、その新世代モデルとはいったいどんなクルマなのでしょうか。

まずはスタイルから見てみましょう。ボディタイプには3ドアのショートホイールベースの「ディフェンダー90」と5ドアのロングホイールベース「ディフェンダー110」があります。それぞれのボディサイスですが「90」は全長4,583mm×全幅2,008mm×全高1,974mm、ホイールベース2,587mmです。「110」は全長5,018mm×全幅1,967mm×全高1,967mm、ホイールベース3,022mmとなっています。丸型LEDヘッドライトのフロントマスクにしては、かなり大型なボディだということが分かります。代官山でも実車を見たのですが、その第一印象は「デカ!」でした。

ボディには3ドアのショートホイールベース「90」(左)と5ドアのロングホイールベース「110」の2タイプ

意外とお買い得?

愛くるしい表情や伝説ともなっている旧型ディフェンダーのデザイン要素を随所に取り込んだ内外を見ていると、「カッコいいなぁ」という印象が強くなっていきます。そうしたデザイン的な処理は、単純にネオクラシカルといった言葉では片付けられない、初代モデルに対するリスペクトのようなものを感じます。

丸型ヘッドライトのデザインは現代風に解釈。愛くるしい表情になっている

同時に、いまも人気を維持しているモデルのデザイン要素を採り入れることで、旧型オーナー達からの視線に対して、「少しばかり方向性を変えたけど、どうよ?」といったデザイナーから問いかけをしているような気がします。果たして熱狂的なファン達にとって、新世代ディフェンダーのデザインはどうのように映っているでしょうか? そして、ごく普通の新規ユーザーという立場で見ても、このデザイン、悪くないと思います。無骨でワイルドな、というイメージは確かに希薄になっていますが、水平基調のボクシィなデザインは十分にカッコいいと思います。

本来のディフェンダーのファンにとって、スタイル以上に気になるのは走行性能でしょう。残念ながら、色々な状況もあり、新型ディフェンダーの試乗はできていません。悪路走破性能については、“ランドローバーの車”という絶対的な信頼度からすれば、ほぼ満足の結果になると思います。最大渡河水深900mmという点は、このクルマがランドローバーのラインナップの中でも、特段に高いオフロード性能を持っていることの証明ともなるスペックのひとつです。あとは乗り心地や燃費といった面でしょうが、試乗を行ってからまたレポートしたいと思います。

インテリアはプレミアムSUV、ランドローバーンモデルとしてスタンダードを守っています

さて価格ですが3ドアの「90」が5タイプあり499万円から739万円。5ドアの「110」も同じく5タイプで589万から820万円。一見すると想像よりリーズナブルに感じたと思います。ひょっとしたらけっこうお買い得かもしれませんが、その答えはじっくりと乗ってからということになります。それにしても旧型モデルの中古車価格の最高値相場より安いというのは少々複雑な気持ちになります。

さて、今回はまだ試乗することはできませんが、この新型ディフェンダーを自宅で体感できるARアプリの提供が4月24日から開始されています。ディフェンダーの好みの仕様を選び、サイズや走破性能を自宅で体感できるというものです。

さらに新型ディフェンダーは、新型コロナウイルスと戦う緊急対応組織の活動を支援するため、世界中に160台以上の車両が配備されたというニュースもありました。少しでも早く、収束することを祈りたいと思います。

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