日本で成功する助っ人の共通点は意外なところにも? OP戦と年間成績を比較する【前編】

現在はロッテでプレーするブランドン・レアード(左)、西武のザック・ニール【写真:荒川祐史】

新助っ人にとって、開幕前の期間は重要なものとなるが……

NPB初挑戦の外国人選手たちにとって、シーズンが始まるまでの期間は、日本球界に慣れるという意味でも重要なものとなる。だが、オープン戦では結果を残せなかったものの、レギュラーシーズンに入ってからは大きな活躍をしてみせた助っ人たちも、過去には多くいた。もちろん、オープン戦の段階から日本球界に適応して好成績を残し、そのままシーズンにおいても活躍を見せた選手たちもまた存在した。

その一方で、オープン戦では好成績を残したが、開幕後は苦しいシーズンを送った選手や、オープン戦とシーズンの双方で日本球界に適応できないまま終わってしまった選手もいる。残念ながら本来の実力を発揮しきることなく、日本球界を1年で去ることになってしまった外国人選手たちの数も少なくはない。

以上のように、オープン戦での成績とシーズンでの成績がある程度リンクする場合とそうでない場合があるが、その内訳はどのようなものになっているのだろうか。今回は、直近5年間のパ・リーグにおける、過去にNPBへの在籍歴のない新外国人選手のオープン戦での成績と、同年のレギュラーシーズンで残した成績を比較していこう。

なお、今回の記事では「投手:防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは4本塁打以上」という条件を満たした選手をオープン戦で活躍したと定義し、同様に「投手:防御率4点台以上、野手:打率.240未満」の選手をオープン戦で活躍できなかったと定義している。

同様に、レギュラーシーズンでの活躍の基準は、「投手:シーズン9勝以上、あるいは30試合以上に登板して防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは30本塁打以上」を満たした選手を活躍できたとし、「投手:防御率4点台以上、野手:打率.230以下」の選手を活躍しなかったとして定義する。

オープン戦で苦しみながら、シーズンで巻き返した選手たちの内訳は?

まずは、オープン戦では不振に陥っていたものの、レギュラーシーズンにおいては活躍を見せてくれた助っ人たちを紹介しよう。

2015年
ブランドン・レアード内野手(日本ハム)
オープン戦:13試合 44打数8安打 2本塁打5打点 打率.182 出塁率.245
年間成績:143試合 498打数115安打 34本塁打97打点 打率.231 出塁率.301

2016年
アンソニー・バース投手(日本ハム)
オープン戦:3試合 0勝3敗 13回 5奪三振 防御率6.92
年間成績:37試合 8勝8敗6ホールド 103.2回 71奪三振 防御率3.65

2017年
フランク・ハーマン投手(楽天)
オープン戦:7試合 0勝1敗2セーブ 7回 7奪三振 防御率7.71
年間成績:56試合 3勝1敗33ホールド1セーブ 53回 58奪三振 防御率2.72

ゴンザレス・ヘルメン投手(オリックス)
オープン戦:8試合 0勝1敗1セーブ 6回 7奪三振 防御率4.50
年間成績:44試合 2勝1敗13ホールド3セーブ 47回 51奪三振 防御率2.68

2018年
ニック・マルティネス投手(日本ハム)
オープン戦:4試合 1勝1敗 18回 11奪三振 防御率5.50
年間成績:25試合 10勝11敗 161.2回 93奪三振 防御率3.51

マイク・ボルシンガー投手(ロッテ)
オープン戦:4試合 1勝1敗 14回 7奪三振 防御率8.36
年間成績:20試合 13勝2敗 117.2回 84奪三振 防御率3.06

2019年
アラン・ブセニッツ投手(楽天)
オープン戦:6試合 0勝0敗1セーブ 6回 5奪三振 防御率4.50
年間成績:54試合 4勝3敗 51回 45奪三振 防御率1.94

ザック・ニール投手(埼玉西武)
オープン戦:2試合 0勝1敗 9回 6奪三振 防御率7.00
年間成績:17試合 12勝1敗 100.1回 51奪三振 防御率2.87

レアード、バースは16年の日本ハム、ニールは19年の西武リーグ優勝に貢献

2018年シーズンに揃って2桁勝利を挙げたマルティネスとボルシンガーは、それぞれオープン戦では不振だったものの、シーズンに入ってからは安定したピッチングを続けた。防御率を見る限りではハーマン、ヘルメン、ブセニッツもオープン戦の時点では日本球界に適応しきれていなかったが、開幕後は安定感のあるリリーフとしてブルペンを支える存在となった。

一方、レアード、バース、ニールはオープン戦のみならず、レギュラーシーズンに入ってからもしばらくは本領を発揮できずに苦しんだ。しかし、徐々に日本球界に適応していくと、1軍の舞台で活躍を見せてチームに欠かせない存在となっていく。レアードとバースは2016年の日本ハムのリーグ優勝に、ニール投手は2019年の西武のリーグ優勝に、それぞれ大きく貢献を果たしている。

人数的な内訳に目を向けると、投手7名、打者1名と、2015年のレアード選手以外は全て投手という極端な構図となっていた。レアード選手の事例は5シーズン前の2015年ということを考えると、直近4年間の例はいずれも投手ということでもある。

オープン戦とレギュラーシーズンの成績がほぼ一致した選手も

続けて、残念ながらオープン戦とシーズンの双方で、期待通りの活躍を見せることはできなかった選手たちについても紹介したい。

2015年
ウェイド・ルブラン投手(西武)
オープン戦:2試合 0勝1敗 7回 4奪三振 防御率6.43
年間成績:8試合 2勝5敗 44.2回 26奪三振 防御率4.23

ミゲル・メヒア投手(西武)
オープン戦:3試合 0勝0敗 3.1回 2奪三振 防御率8.10
年間成績:4試合 0勝0敗 3.2回 4奪三振 防御率14.73

2017年
アレクシス・キャンデラリオ投手(西武)
オープン戦:2試合 0勝1敗 3.1回 3奪三振 防御率13.50
年間成績:1試合 0勝1敗 3回 6奪三振 防御率21.00

カイル・ジェンセン内野手(ソフトバンク)
オープン戦:13試合 31打数5安打 2本塁打2打点 打率.161 出塁率.188
年間成績:6試合 12打数1安打 1本塁打1打点 打率.083 出塁率.214

2018年
オズワルド・アルシア外野手(日本ハム)
オープン戦:9試合 26打数6安打 1本塁打3打点 打率.231 出塁率.310
年間成績:89試合 284打数63安打 14本塁打43打点 打率.222 出塁率.315

ニール・ワグナー投手(西武)
オープン戦:7試合 1勝1敗 7回 5奪三振 防御率5.14
年間成績:36試合 2勝1敗9ホールド1セーブ 32回 24奪三振 防御率4.22

エドガー・オルモス投手(ロッテ)
オープン戦:2試合 0勝1敗 7回 5奪三振 防御率7.71
年間成績:2試合 0勝2敗 7回 5奪三振 防御率7.71

マット・ドミンゲス内野手(ロッテ)
オープン戦:8試合 19打数3安打 0本塁打0打点 打率.158 出塁率.158
年間成績:37試合 84打数16安打 7本塁打16打点 打率.190 出塁率.269

2019年
ケニス・バルガス内野手(ロッテ)
オープン戦:14試合 42打数4安打 3本塁打5打点 打率.095 出塁率.174
年間成績:35試合 84打数15安打 1本塁打6打点 打率.179 出塁率.324

こちらは全部で9名と、オープン戦の不振からレギュラーシーズンで巻き返しを見せた選手(8名)とほぼ同じ数字となった。アルシアやドミンゲスのように、好調時には本来の実力の片鱗を垣間見せた選手は存在したが、残念ながらオープン戦の段階から日本球界に適応できずに終わってしまった選手も少なくはなかった。

また、アルシア、ドミンゲス、バルガスはMLBの舞台でも一定の活躍を見せた実績の持ち主だったが、残念ながら日本球界では期待通りの活躍は見せられず。一方、様々な国のリーグを渡り歩いてきたキャンデラリオや、台湾球界でクローザーとして活躍したメヒアのような興味深い経歴を持つ投手たちも存在したが、それぞれNPBには適応しきれなかった。

現在のパ・リーグはオープン戦でつまづいた助っ人野手に厳しい環境だが……

先に述べたように、現在のパ・リーグはオープン戦で結果を残せなかった外国人バッターにとっては厳しい環境であると考察できる。直近5年間でもMLBでキャリアを積んだ強打者たちがオープン戦から苦しんでおり、オープン戦の活躍が明暗を分ける要素となっている印象は否めない。

とはいえ、レアードはオープン戦で苦しんだものの、シーズンが深まるにつれて日本の投手に対応していき結果を出した。また、セ・リーグではドゥエイン・ホージー氏(元ヤクルト)やマウロ・ゴメス氏(元阪神)のように、オープン戦では不振だったものの、レギュラーシーズンでは来日1年目にいきなり打撃タイトルを獲得した助っ人も過去には存在した。

2020年のオープン戦でも、MLB通算282本塁打の実績を持つアダム・ジョーンズ外野手(オリックス)が10試合で打率.100に終わった。新たに日本球界に挑む助っ人たちが、レアードのようにシーズンに入ってから本来の実力を発揮し、パ・リーグの投手を攻略する姿に期待したいところだ。

記事の後編では、オープン戦で活躍した外国人選手たちの中から、レギュラーシーズンで活躍できた選手と、残念ながらオープン戦同様の活躍を見せられなかった選手たち。そして、来日初年度のオープン戦に出場しなかった選手たちについて紹介し、総合的な傾向についても考察していきたい。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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