“血”を受け継ぐ大砲 サッカー 国見 中島大嘉 信じて前へ 高校のエースたち・10<完>

「国見を強豪に復活させたい」と目標を掲げてプレーする中島=島原市、県フットボールセンター

 「もうそこシュート打ってまえ!」
 長崎で聞き慣れない、流ちょうな関西弁がピッチに響き渡る。声の主は国見高の長身FW中島大嘉。話す言葉は違っても、実はその体内にはしっかりと“国見の血”が流れている。
 父、優さんは旧南高国見町出身で、現在母校を率いる木藤健太監督と高校時代の同級生でチームメート。同じくOBの伯父、豪さんは浦和レッズでプレーした元Jリーガーだった。
 「国見を強豪に復活させたい」。大阪生まれ、大阪育ちの少年が父たちと同じ道を選んだのは、ある意味必然だったのかもしれない。
 中学時代に25センチも伸びた身長は現在187センチに達する。加えて、50メートル走を6秒フラット(手動計測)で駆け抜ける快足。ポテンシャルの高い点取り屋に寄せられる期待はいやが応でも大きくなるが、3年目に突入した長崎での高校生活は、まだ満足のいく結果が得られていない。
 特に昨季は試練の連続だった。11月の全国高校サッカー県大会決勝は、1点ビハインドの後半開始時から投入されたが、長崎総合科学大付高の厳しいマークに遭い全く仕事をさせてもらえず。年末のプリンスリーグ九州の参入戦も、チームは昇格こそ勝ち取ったものの、自身の出場は終了間際のわずかな時間にとどまった。
 「ただがむしゃらなだけで空回りしている。体の大きさに頼らず、ボールがないときの動きとか、もっと冷静に頭を使わないと高いレベルで勝負するのは厳しい」。高校で身をもって知った課題と、今は地道に向き合う日々だ。
 木藤監督が「特長がある選手がいるだけに、一人一人がもっと目線を上げないといけない」と辛口ながらも期待する今季のチーム。自らの成長が勝敗の大きなカギを握ることは十分にわきまえている。春先にはJ1湘南に練習参加し、強くなるためのヒントも得た。
 「父を知っている町の人がたくさん応援してくれて、ここが地元だと思ってプレーできている。絶対に結果で恩返ししたい」。2010年冬の全国高校選手権以来、全国の舞台から10年間遠ざかっている国見。青と黄色の縦じまを、未完の大器が再び輝かせる。

 


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