【新型コロナ】「休学・退学者の助けに」大学生ら学費減額運動、SNSで拡散

明治学院大生が立ち上げ、活動開始4日目にして目標の2千人の署名が集まった署名サイト「Change.org」の画面

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で大学施設を使えなくなったり、アルバイト先を失ったりした大学生らによる学費減額運動が全国的に広がっている。対象の大学は26日時点で100校に到達。モデルとなったのは明治学院大の学生の取り組みで、発起人の金勇利さん(22)は「学費を支払えずに休学や退学に追い込まれている人たちの助けになれば」と話している。

 インターネット上の署名サイト「Change.org」を使った金さんたちの活動は、図書館や体育館、パソコン室などの閉鎖期間に応じて施設費や設備費を大学側から取り戻すことを目指している。自ら専用ページを立ち上げ、友人2人と共に16日から呼びかけを始めた。

 同大学国際学部の4年生で横浜キャンパス(横浜市戸塚区)に通う金さんは、テスト勉強や卒論の執筆に図書館を利用し、サークルの軽音楽バンドの練習にはスタジオを使う。しかし、政府の緊急事態宣言を受け、同大学は8日から閉鎖。自宅で過ごす中、届いていた学費の振込用紙を目にして、「自分たちの払ったお金を大学はどう使っているのか」と疑問を抱き、行動に移した。

 友人らが会員制交流サイト(SNS)で拡散し、卒業生や教員らの賛同を得て開始4日目で目標の2千人を達成。国際学部の教授からは「令和の時代に新しい学生運動の火ぶたを切った」とエールを送られ、金さんは「全然知らない学生や新入生、タレントの方からも応援された」と手応えを口にする。

 現在は署名リストをまとめ、大学に提出する要望書を友人や教員らと作成中だ。他の大学で活動する 学生の相談にも乗っており、金さんは「大学と学生がコミュニケーションを取る場をつくり、学生あっての大学という意識を根付かせたい」と語る。

 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査によると、今回のコロナ禍で大学生の約6割がアルバイト収入が減ったり、なくなったりしたと回答し、13人に1人が退学を検討していることも浮かび上がった。全国100の大学で金さんたちと同様の動きがあり、SNSで連携して政府に要望書を提出する方針という。

 明治学院大は21日、遠隔授業に使うパソコンや通信環境を整える費用として、大学院を含む全学生約1万2千人に、1人当たり5万円を支給すると発表。既に10校以上がこうした措置を講じているが、経営を圧迫する学費の減額には消極的だ。同大学も「現時点で『授業料』『施設費・設備費』の返還ならびに減額は考えておりません」とコメントしている。

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